放送局: HBO
プレミア放送日: 7/28/2000 (Fri) 21:00-22:30
製作: クリーム・チーズ・フィルムス・プロダクション
製作/監督: マーティ・コールナー
製作: ランドール・グラドスタイン
出演: イン・シンク
内容: 2000年7月28日、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行なわれたイン・シンクのライヴ中継。
曲目:
Tearin' Up My Heart
It's Gonna Be Me
I Want You Back
Bye Bye Bye
他
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ペイTV(有料放送)ではアメリカ最大手のHBOは、よく特番としてコンサート中継を行う。人選はその時によって異なるが、その時最も人気のある大スターであるのが普通。過去、マイケル・ジャクソンやマドンナなど、ビッグ・ネームがHBOの特番としてコンサート中継をオン・エアしている。もっともポップ/ロック界の有名スターに限らず、カントリー・スターや懐メロスターのコンサート中継も行うから、すべてがすべて若い視聴者を対象とした特番ではない。
カントリー・スターのガース・ブルックスなんて、セントラル・パークに70万人という聴衆を集めて無料コンサートを開き、HBOがそれを中継したのだが、いまだにあのテンガロン・ハットにカウボーイ・ブーツ姿に馴染めない私は、いくら無料でもなぜあの手の音楽を聴こうと思うのか、全然わけがわからなかった。要するに、カントリーはアメリカの演歌であるのだろう。実際、ニューヨークではこういうイヴェントでもない限り、表立って私はカントリーのファンだと吹聴する人間に出会ったことはない。しかしこういう大きなイヴェントがあると、数で圧倒できるからか、隠れカントリー・ファンが突然どこからともなく大挙して現れるのだ。バーブラ・ストライサンドも、色んなところで揶揄される記事を見るもんだから、私は結構彼女は馬鹿にされているもんだと思っていたら、実はHBOがこれまでに放送した番組の視聴率記録は、そのストライサンドのコンサート中継が持っているのである。まったく意外や意外。
脱線したが、とにかくHBOはこれまで話題となるコンサートを中継してきたことに関しては実績があるということを言いたいのであった。そしてこのイン・シンクである。彼らが今人気絶頂であることは否定のしようがない。これが昨年の今頃ならHBOが中継したのはバックストリート・ボーイズであったと思うのだが、彼らは今いったいどこへ行ってしまったのだろう。代わって登場したイン・シンクは、瞬く間に人気者となり、彼らの新アルバム「ノー・ストリングス・アタッチト (No Strings Attached)」はビルボードでいったい何週連続で1位をキープしたかもう忘れてしまったが、確か新記録を作ったんじゃなかったっけ? 今、若者に人気のアーティストは、このイン・シンクとブリットニー・スピアーズ、それにクリスティーナ・アギレラの御三家にとどめを刺す。
さて、このイン・シンク、コンサート当日はチケット完売で会場に入れないファンがマディソン・スクエア・ガーデンの周りを十重二十重に取り囲んだため、近くの交通を麻痺させてしまったほどだという。うちの女房はバスも止まったんだってよ、バスも、と興奮していたが、いったいなぜそんなに興奮する。その理由がわかったのは、このコンサートの録画テープを女房と一緒に見た時である。我々夫婦は映画はよく一緒に見に行くが、TVを一緒に見るということは滅多にない。彼女はTVはそれほど面白くないと思っているし (まあそういうのも多いけど)、私自身が、ヴィデオを見る時は女房が寝静まってから深夜一人で見る時が多いから、あまり一緒に見る機会がないのだ。週末とかは私がゴルフ中継を見るためにTVを占領しているし。
それで彼女の方からこのテープを一緒に見ようと言ってきたのでそうしたのだが、いやあ、びっくりした。食い入るように見ているのである。あんた、私と同じ歳でしょ。実は彼女がイン・シンクのファンだということは、今年のグラミーでやはりイン・シンクが操り人形仕立ての「Bye Bye Bye」を歌うのを面白い面白いと言いながら見ていたのを見て知っていたのだが、まさかこれほどだとは思わなかった。実は今現在、そのテープを見てから既に1週間以上過ぎているのだが、彼女はほとんど毎晩なんやかや理屈をつけてこのテープを見ている。
さすがに何日も連続して同じテープを見ていると、私があきれているのが気になるようで見なくなったが、今日仕事から帰ってきてみると、昨晩私が見ていたテープがVCRのそばに出ている。あれと思ってVCRの中を見てみると、またもやイン・シンクのテープが入っている。どうやら私が帰ってくるまでまた見てたらしい。そうこうしているうちに、ついにイン・シンクのファン向けのヴィデオまで買ってきた。病膏肓に入ったか。このように、イン・シンクは年齢を問わず熱狂的ファンをアメリカのあちこちに作りだしている。××歳になる私の女房でさえそうなのだ。いわんやティーンエイジャーにおいてをやである。
実際、彼らのダンスは非常にうまい。特にリード・ヴォーカルの彼は、顔も可愛い上に歌って踊れて言うことなし (残念ながら私は彼ら一人一人の名前まではわからない)。これで5人が完全にシンクロすれば言うことないのだが。しかしそこまで言うのは無理というものだろう。あれだけ激しいダンスをしながら、歌も歌い、しかもハモるのなんて大したものである。こういうのを見ると、ユニゾンすら取れないくせにCDを出すどこかの国のアイドル・グループに爪の垢を煎じて飲ませたくなる。しかし彼らのダンスって、時々吹き出したくなるような変な振りがついてくるが、ありゃなんだろう。頭を思い切り振り回す振りもよくある。見ているだけで脳震盪を起こしそうだ。
私としては、こういううまいダンスを見る時はやたらとカメラを動かしたり切り返したりしないで、真正面からフィックスでとらえたカメラで全員を映して欲しいと思うのだが、さすがにそれだと芸がないと思われるし臨場感も乏しくなってしまうから、頭上からのカメラを使ったり観客席を映したりと色々やっているのだが、どうもタイミングが合わない。なんでそこでカメラ切り替えちゃうわけ? 今いいとこだったんだよ、ほらほら観客を映す時はMCの時とか、ヴォーカルが観客に呼びかける時とか曲の合間にしてくれない?と、結構フラストレーションを起こすカメラ・ワークだった。監督がライヴ中継に慣れてないのがありあり。
それに、踊り通しだとさすがに持たないので、途中で変な寸劇みたいのを入れて実は休んでいるのだが、あれは何とかしてもらえないものかね。医者のふりして心臓ショックみたいなものを手にして、「クリア」とか何とか言っちゃって、いったいそれが何なんだ。コンサートを通してのコンセプトにもまったくあってないし、その上、変な手術用のビニール・キャップを被ったまま歌ったり踊ったりするなよ。それにイン・シンクの面々がコンサートの間中「サンキューHBO」を連発するのも興醒めだった。ワールド・ツアーの一環だったらしいが、このコンサートに限って言えば、HBOが場所代を出すなり何なり援助しているんだろう。私は熱中する女房を横目に、そういうことをつらつら考えていたのであった。
