昨年からワールド・ゴルフ・チャンピオンシップス・シリーズの一環となり、世界最高峰、ライダー・カップとプレジデンツ・カップのメンバーおよびヨーロッパのオーダー・オブ・メリットのトップ20人から成る招待試合。今年は39人で争われる。先週、歴史に残る名勝負を演じてメイジャーを勝ったタイガー・ウッズが、実はこのNEC招待のディフェンディング・チャンピオンでもある。果たしてウッズはまた勝つのか。


今回のトーナメントの白眉は、金曜日のウッズの出来に尽きる。昨年もウッズはまったく隙のない絶好調の日があったが、今回の出来はさらにそれを上回った。パー70のコースを9アンダー61で回り、一時はPGAレコードの59に届くかと思われ、その上、そういったベストのゴルフを4時間弱で達成してしまうところというおまけまでついていた。先週の全米プロで1ラウンド5時間以上もかかったのを見ているだけに、こういうきびきびしたゴルフは見ていて気持ちがいい。初日から足切りなしの二人でラウンドしているということもあるだろうが、4時間弱のラウンドで61のスコアなんて出されると、時間をかけてラインを読んだ挙げ句、3パットして6時間のラウンドをする素人ゴルファーに爪の垢を煎じてのませたくなる。私だってざらに3パットするが、少なくとも時間はかけんぞ。


最終日は雨で数時間中断され、既にその時点でウッズ18アンダーと2位のハル・サットンやフィル・ミッケルソンに9打差をつけてほとんど勝負の行方はついていたために、興味は果たして今日中にトーナメントが終わるのかという点に絞られた。陽も沈み、つるべ落としで暗くなっていく空を背景に、なんとしてでも今日中に終わって明日の朝早くから残りの数ホールだけプレイするということだけは御免被りたいゴルファーのバック9のプレイは、いいスコアを出すというよりも、とにかく早く終わろうという姿勢が丸見えだった。まあしょうがないけどね。残り9ホールで9打差ついてるウッズを逆転するなんて、陽が西から上っても無理だし。最後の方なんて、早く終わろう、終わろうとするゴルファーの焦りがこちらにも伝わってきて、勝負なんかよりもそれではらはらした。


実際どんどんどんどん暗くなるコースは、自動で露出が調節されるはずのTVカメラでも限界に達してほとんど見えない。18番のティに立つウッズの姿なんて、完全にシルエットになってしまっている。それなのに既に18番のグリーン脇のバンカーで、フィリップ・プライスが終われるのを確信して時間をかけてバンカー・ショットを打とうとするので、早く打てよほら、どうせおまえはもう勝てないんだからさ、ととにかくいらいらしてしまう。


しかしその18番のウッズの第2打、ほとんど何も見えない中を打ったショットは、なんとピンそば2フィートにぴたりと落ちる。なんでこんなことができるわけー?何にも見えないのに。グリーンに向かって歩いていくウッズをとらえるカメラに映っているのは、キャップとウェアの白いナイキのマークと、ウッズの白い歯だけ。グリーン回りではそれでもゲームの行方を見届けようとするギャラリーが、手に手にライターを点火してウッズと、一緒にラウンドしたサットンを迎える。報道陣が焚くカメラのフラッシュと共に明滅するウッズの姿。無茶苦茶シュールである。私は本当にゴルフ・トーナメントを見ているのか。


その後のトロフィ授与は、完全な真暗闇の中行われた。結局ウッズは21アンダーで上がり、トーナメント・レコード。2位のプライスとジャスティン・レナードが共に10アンダーだから11打差と、ウッズの圧勝に終わった。それにしてもウッズって、とにかくこういう、これまで見たこともなければ想像すらしたことのないシーンを巧まずして演出してしまう。本当にすごい男だ。







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NEC招待

2000年8月24-27日   ★★★1/2

オハイオ州アクロン、ファイアストーン・カントリー・クラブ

 
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