マーフィー・ブラウン (Murphy Brown) 

放送局: CBS 

プレミア放送日: 11/14/1988  

第11シーズン放送日: 9/27/2018 (Thu) 21:00-21:30 

製作総指揮: ダイアン・イングリッシュ、ジョエル・シュコフスキー 

出演: キャンディス・バーゲン (マーフィ・ブラウン)、チャールズ・キンブロー (ジム・ダイアル)、ジョー・レガルブート (フランク・フォンタナ)、フェイス・フォード (コーキー・シャーウッド)、グラント・シャウド (マイルズ・シルヴァーバーグ)、ロバート・パストレッリ (エルディン・バーネキー)、パット・コーリイ (フィル)、ジェイク・マクドーマン (エイヴリー・ブラウン)、ニック・ドダニ (パット・パテル)、タイン・デイリー (フィリス) 

 

物語: 女性の視点を代弁して人気のあったマーフィがTV界から引退して20年の月日が経っていたが、いまだに彼女の復活を願う声は強かった。ドナルド・トランプがアメリカ大統領に選ばれたのを見たマーフィは、このままじゃいけないと、業界に戻ることを決意する。かつての仲間たちを再び集め、再始動するマーフィだったが‥‥


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Murphy Brown


マーフィ・ブラウン  ★★1/2

今春、ABCが「ロザンヌ (Roseanne)」を復活させた時も思ったが、これは果たしてリメイクというのかそれとも新シーズンというのか、判断に迷う。いったんは最終回を迎えた番組が、何年、何十年のブランクの後、同じ俳優、同じキャラクターで再度番組を製作するのだ。因みにウィキペディアをチェックしてみると、新シーズン=リヴァイヴァルとしていた。リブート (reboot) と呼ぶ媒体もある。個人的にはリブートというのが最もしっくり来るかなと思う。   

 

面白いことに「ロザンヌ」が始まったのが1988年、その後9シーズン続き、1997年に最終回を迎えた後、今春復活した。「マーフィ・ブラウン」の場合、やはり始まったのは1988年、その後10シーズン続き、1998年に最終回を迎え、今年復活と、両番組はほとんど似たような経緯をたどっている。「マーフィ・ブラウン」主演のキャンディス・バーゲンが、「ロザンヌ」主演のロザンヌ・バーの失言によってキャンセルされたことまで同じ轍を踏まないことを祈る。 

 

「ロザンヌ」と「マーフィ・ブラウン」が今復活してきたのは、実は考えると腑に落ちる。両番組共、アメリカのものの考え方を強く代弁、代表しているからだ。すなわち、「ロザンヌ」はアメリカの保守層の意見を代弁し、「マーフィ・ブラウン」はリベラル層のものの考え方を代弁している。 

 

ドナルド・トランプが大統領になってアメリカが二分された現在、保守もリベラルも同様に危機感を持って意見を述べるようになっている。これらの番組が復活し、相応に保守層リベラル層の後押しを得てそこそこの成績を獲得しているのも納得できるのだ。「ロザンヌ」なんかは、バー本人の舌禍事件さえなければ、今年最大のヒット番組になり得た。 

 

ロザンヌは中西部のブルー・カラーの家庭の肥満の主婦という設定だが、マーフィは都会のTV局でキャスターを務めるキャリアのシングル・マザーだ。設定および見かけは天と地ほども違う。共通点があるとしたら、両者共歯に衣着せない毒舌であること、およびマーフィは元アル中で、ロザンヌもドラッグに手を出しているという辺りか。いずれにしても共に悩みは持っているようなのが、いかにも今のアメリカだ。 

 

とよく考えてみると、確かに見かけ上はマーフィとロザンヌに類似点はほとんどないが、実は性格はそんなに違わないような気がする。マーフィはシングル・マザーだが、結局ロザンヌの子どもたちもシングル・マザーになったりトランスの子ができたりしている。一方、マーフィの息子は今では保守系放送局の筆頭FOXのニューズキャスターだ。実は二人共根っこのところではそんなに違わない。生まれた場所と時代と外見のせいで今のキャラクターができ上がったという感じだ。 

 

一方、外見というと、実はマーフィは昔と今とでは外見がかなり変わっている。今春、CBSが「マーフィ・ブラウン」リブートを発表して宣伝に現れた主演のキャンディス・バーゲンを見た時、最初私はバーゲンに気づかなかった。で、どこにマーフィがいるのと思ったくらいだ。20年だから変わって当然ではあるが、しかしそれでもロザンヌは今でもロザンヌにしか見えないことを思うと、バーゲンは特に脂肪がつき、いかにも歳をとった感じがして、印象が昔と今ではかなり異なる。 

 

また、昔と今で大きく異なることというと、マーフィの息子エイヴリーが、今では成長して一人前の大人の男性になっていることが挙げられる。かつてマーフィが番組の中でシングル・マザーになった時、時の副大統領ダン・クエイルが、片親はよろしくないと時代遅れもはなはだしい意見を述べて世のシングル・マザーの嘲笑を浴びたが、その子も大きくなった。因みに幼い頃のエイヴリーを演じた子役の中には、ハーリー・ジョエル・オスメントもいる。 

 

エイヴリーはマーフィの轍を踏んでこちらもTVキャスターになったが、一つ違うのが彼は保守派で、勤務しているのは保守派の放送局であることだ。因みにその放送局名はウルフ・ネットワークで、現実の保守の牙城FOXを暗におちゃらかしている。そのエイヴリーがキャスターを務める番組が、なんとマーフィの番組「マーフィ・イン・ザ・モーニング (Murphy in the Morning)」の裏番組に編成されてしまう。 

 

一方時代は進み、実は旧世代のマーフィはスマートフォンを使いこなせず、いまだに旧型の携帯、要するにガラケーを利用してたりする。若いメディア・マネージャーは生まれて初めて折り畳み型携帯を目にして、ハロー、シリと呼びかけてみたりするが当然何の反応もない。マーフィが、これは電話をかけるためにあるものとくさすのがなんともおかしい。そういえばこないだ、ミレニアル世代は公衆電話の使い方を知らない者が多いという話題があった。時代は変わる。 

 

番組第1回では、特別ゲストとして、マーフィの秘書候補として面接にヒラリー・クリントンが現れる。マーフィは、で、あんたは秘書 (secretary) の経験があるかとか、e-メイルは使えるかとクリントンに質問する。もちろんクリントンは国務長官 (Secretary of State) 経験があるし、その時、私用e-メイルのアカウントを国務に使った認識の甘さが問題になったことを下敷きにしたギャグだ。ちょっと笑ってしまう。 

 

さらにSNSを使いこなせるようにとツイッターのアカウントを獲得したマーフィは、かつてドナルド・トランプとデートした時、ワリカンだったとツイートする。なんとなく本当にあり得そうだ。というか、あったに違いないという気がする。それにトランプが番組生放送中にツイートを返し (これはさすがにギャグだよな?)、毒舌戦に発展するという展開。今後もこの調子でやってもらいたい。 











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