放送局: FOX
プレミア放送日: 7/24/2001 (Tue) 21:00-22:00 (1 hr x 8)
製作: フーシック・フォールズ・プロダクションズ、ファイナル・ストレッチ・プロダクション、FOXテレヴィジョン・ステュディオス
クリエイター/製作総指揮: ジョージ・ヴァースクーアー、ロバート・フィッシャーJr.、ゴードン・キャシディ
監督: ゲイリー・オーバック、マーク・マイクス、デイヴィッド・パークス
音楽: デイヴィッド・シュワーツ
美術: オースティン・ゴーグ
ホスト: ゲイリー・フレド
参加者:
アラン (30歳。男。マーケット経営)
アンドリュー (23歳。男。メディア・プランナー)
エンジェル (35歳。男。消防士)
ブライアン (23歳。男。医学生)
ジェフ (28歳。男。モデル)
ケイティ (23歳。女。元アイス・スケーター)
クリスティン (28歳。女。モーゲージ・バンカー)
リンジー (21歳。女。モデル)
シャーリー (45歳。女。ヘルス・ケア・エージェンシー経営)
ステイシー (?歳。女。シンガー)
被害者:
ネイト・フリント (男。缶詰工場経営)
カーメン・フリント (女。ネイトの妻)
アビゲイル (アビー)・フリント (女。ネイトの娘)
容疑者:
ディアナ・ハリス (女。弁護士)
ドリュー・チャンバース (男。クラブ経営)
ダドリー・ダンカン (男。警官)
エマーソン・ボーデン (男。市長)
フランク・コヴィック (男。新聞記者)
G. D. ティボドー (男。フェリーボート経営)
ハイデン・デベック (男。缶詰工場の元共同経営者)
ジミー・ティンカー (男。アビーのボーイ・フレンド)
レイタ・ローズ-ブロジット (女。メイル・センター経営)
メアリ・エリザベス・マーチャント (女。ディアナの助手)
プルーデンス・コナー (女。オート・ショップ経営。ネイトの浮気相手)
ラスティ・クランドール (男。牧師)
サマンサ・ララビー (女。ダイナー経営)
ウィリアム・ランバート (男。ビジネスマン)
X-レイ (男。タクシー運転手)
内容: メイン州の海沿いの小さな町サンライズで起こった架空の連続殺人事件を解決するために、10人の参加者を派遣する。参加者は現場に残された証拠物件や町の者へのインタヴュウを通して、15人の容疑者の中から真犯人を見つけ出さなければならない。参加者は3日毎に「ライフガード」と称したリーダー役を持ち回りで兼任する。ライフガードは元LAPDのホストのアドヴァイスを受けながら、参加者の誰それに調査の指示を出したり誰と誰を組ますなどの権限を持つ他、ライフガードでいられる間は犯人からつけ狙われることはないという特権を持つ。
3日毎に犯人から質問状が送りつけられ、それに正答できれば容疑者を一人少なくするという報酬が与えられる。その後で参加者の中から一人投票で選ばれた者と、ライフガードが選んだ者一人が、夜中にたった一人でそれぞれ犯人から指示された場所に出向かなければならない。一方には事件解決のための鍵となる物件が残されているが、もう一方では犯人が待ち伏せていて、次の犯人の犠牲者となる。最後まで残って無事真犯人を指名できた者が、賞金25万ドルを獲得する。
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「フー・ウォンツ・トゥ・メアリ・ア・マルチミリオネア」や「誘惑の島」等、下世話なリアリティ・ショウで知られるFOXが編成する新種のリアリティ・ショウ。FOXは今秋も「誘惑の島2」を編成する他、同様の番組「ラヴ・クルーズ (Love Cruise)」が控えているなど、この路線は健在だ。
しかし、「マーダー・イン・スモール・タウンX」は、それらの扇情的リアリティ・ショウの中にあって、一種異彩を放っていた。ただの覗き見趣味的番組というのではなく、ミステリ仕立ての構成をとり、8週間をかけて一つの事件を追うという、FOXにしては珍しく、どちらかと言えば頭を使う要素の多い番組を編成してきたのだ。
メイン州サンライズと名付けられた小さな海沿いのコミュニティで、土地の実力者で缶詰工場を経営するフリント一家が何者かに惨殺される。犯人はその一部始終をヴィデオに収め、当局に送りつけてくる。10人の参加者はそのヴィデオを基に、関係者にインタヴュウしたり、証拠物件を探したりしながら、容疑者として挙げられた15人の中から真犯人を見つけ出さなければならない。
容疑者はすべて台本にそって俳優が演じているわけだが、本番の時は参加者が何を言ってくるかわからないため、基本的な性格付けに合わせてほとんど即興で演じている。しかし結構役になり切っているので、最初面白半分で現地入りした参加者も、釣られて段々本気になって事件を解決しようと身が入ってくるのが見ててよくわかるのが面白い。プレミアの後半では、参加者はほとんどマジで誰が犯人かを見つけようと議論を戦わせていた。
もちろん番組はそれだけでなく、「サバイバー」の轍を踏んで、ちゃんと参加者が一人ずつ番組の最後に毎回投票で飛ばされるという流行りの構成を取り入れている。それも単純に投票で追放するのではなく、まず、参加者全員の投票で一人が選ばれた後、3日毎に交替する「ライフガード」がもう一人を選ぶ。その二人がそれぞれ殺人犯から指定された別々の場所に夜中に一人で赴かなければならない。しかし、一方には犯人推理に役立つ大きな鍵が残されているが、一方では犯人が次の犠牲者を手ぐすね引いて待ち構えているのだ。
ここが結構面白いのだが、指定された場所というのが人っ子一人いない空き家や工場跡という場所になっており、参加者は夜中にそこへ一人で乗り込んでいかなければならない。カメラマンも同伴せず、参加者は腰から突き出す形のパイプに小型カメラを据え付け、それで自分の顔だけは撮りながら事件の手がかりを探す。流石に夜中、人気のない場所に行くのは誰でも結構びびるもので、しかも運が悪ければ自分が次の犠牲者になるかも知れないのだ。しかもどういうふうに殺されるかわからない。たとえ本当に殺されるわけではないとはいえ、これに選ばれたものはびびりまくりで、皆腰が引けている。
実は参加者を怖がらせるというこのシチュエイションは、MTVの「フィアー (Fear)」というリアリティ・ショウで一度見たことがある。びびった模様をとらえる腰に付ける特殊カメラもまったく同じだった。それもそのはずで、同じプロデューサーが「マーダー...」も製作しているのだ。そのプロデューサー、ジョージ・ヴァースクーアー、ロバート・フィッシャーJr.、ゴードン・キャシディの3人は、MTVで「ザ・リアル・ワールド」というMTVの看板番組もプロデュースしている。
「マーダー...」では最後に選ばれた二人のうちの一人になっても、そこで追放される可能性はまだ2分の1で、運よく生きて帰れる可能性もまだ残されている。しかし番組のプレミアの回で最初に皆から投票で選ばれたシャーリーは、皆から邪魔者扱いされたショックと、怖いところへ一人で行かなければならないという恐怖のために、タクシーの中で既に恐慌をきたして泣き始める。本当に生きて帰れるかどうかわからない気持ちにとらえられてしまい、家で待っているはずの子供たちに、「もし帰れなくても、お母さんはあなたたちのことを愛してますからね」と、ほとんど遺書まがいの発言をして深夜の養鶏場に乗り込んでいく。
もう一方の、プレミアでライフガードとなったアンドリューに選ばれたクリスティンは、こちらは怒りを爆発させる。まだ生きて帰れる可能性も残っているので、アンドリューに、もし帰ってきたら覚えていろよ、的な発言をして出ていく。結局プレミアではシャーリーが犯人の毒牙にかかって参加者の中からでは初めての犠牲者となり、クリスティンは無事戻ってくる。指名された参加者は出かける前に「遺言」をヴィデオテープに残しており、次のライフガードは帰らなかった者の遺言によって決められる。シャーリーの遺言で次回のライフガードに選ばれたのはクリスティンだった。
クリスティンは当然2回目の放送の最後で意趣返しにアンドリューを選ぶと思われたが、そこで他の参加者が先にアンドリューを選んでしまう。そのためクリスティンはブライアンを選び、この二人が最後に怖い思いをすることになる。結局ここで抹殺されたのはアンドリューで、クリスティンは自分の指名でこそないが復讐を果たしたことになった。この辺はまさにパワー・ゲームで、ほっといてもクリスティンがアンドリューを選ぶのはわかりきっているだろうに、他の参加者がそれでもわざわざアンドリューに投票したのは、多分その時点で最も皆から嫌われていた者に投票することで、自分がよけいなとこらから憎まれないようにとの配慮からだろう。そのため、クリスティンは逆に誰か他の人間を指名せざるを得なくなってしまい、結局ブライアンを指名する。つまり、他の者は自分は安全な場所にいながら、ブライアンにクリスティンを恨ませることに成功したわけで、クリスティンはアンドリュー更迭には成功しても、少なくとも敵を一人作ったことになる。
しかし可哀想なのはプレミアで追放されたシャーリーである。彼女は10人の参加者の中で唯一の黒人であるということだけではなく、年齢もただ一人40代と、他の参加者とは一回りも二回りも違う。最初から浮いているのがありありで、なんというか、捨て駒として組み入れられてその通りに追放されたという感じで、この人選は解せん。「サバイバー」ではこれまでの2回とも、16人の中に黒人は二人いた。8人に一人の割合で、それを考えるなら「マーダー...」とそれほど違いはないように見える。しかし少なくとも同年代で、白人の中には年寄りもいるなど、バランスはとれていた。それが「マーダー...」のようにたった一人年代の違う異人種がいたら、これは最初から追われるのが目に見えているではないか。
まだ白人が圧倒的に多い内陸部はともかく、ニューヨークやL.A.等の都会では、黒人やラテン、アジア系等のマイノリティの比率は高い。ニューヨークで暮らしている感じから言うと、白人/黒人/ラテン/アジアの割合は、6/2/1/1か、4/3/2/1といった比率に近いだろう。ラテン、アジア系の割合はもっと高いかも知れない。それがこの種の勝ち抜きリアリティ・ショウになると、ラテン系やアジア系はほぼ姿を消し、黒人が一人か二人含まれるだけになる。しかも「マーダー...」でのシャーリーはどう見ても捨て駒で、これじゃ結構巷で言われているように、番組が人種差別だと非難されてもしょうがない。本当になんでこんな人選にしちゃったんだろう。その唯一のあからさまな欠点を除けば、結構面白いのだ。こういう頭を使わせられる番組がFOXから出てきたというのは、本当に意外だ。
特に感心するのは細部へのこだわりで、ここまで美術担当が活躍するTV番組は、多分この番組をおいて他にないだろう。この番組でプロップ担当になった者は、仕事は無茶苦茶大変だろうが、やり甲斐もあるだろうとも思う。ただし、どんなに苦労して作成した証拠物件も、探偵役の参加者が見つけてくれなければ話にならない。そのため参加者は、元LAPD警官のホストのゲイリー・フレドのアドヴァイスを受けながら、誰それにインタヴュウしに行ったり、人がいないのを見計らって容疑者の家に忍び込んだり、事件現場の再調査を行ったりして証拠を集めて推理するわけだが、細かい証拠物件が多過ぎて、いちいち覚えていられない。プレミアの回だけですらこうなのに、1週間後には既に前週のことなんか忘れている。回が進むに連れて、私は犯人の目星がつくというより、よけい何が何だかこんぐらがってきてしまった。
一つの架空の事件を構築し、何週間にもわたって町全体がその事件に関係するというアイディアは、TVとしてはほとんど空前絶後の撮影規模のように思われる。元々リアリティ・ショウは、ABCの「フー・ウォンツ・トゥ・ビー・ア・ミリオネア」とCBSの「サバイバー」が真夏に編成されて始まったように、ほとんど再放送ばかりになって視聴者が激減する真夏の埋め合わせ番組としての色彩が強い。そのため、リアリティ・ショウの本分の第一は製作費がかからないことにある。通常のリアリティ・ショウの製作費はドラマやシットコムにかかる費用の約半分程度で、特に「ミリオネア」のようなクイズ番組だと、セットは永遠に変わらない持ち回りの利くものだから、ほとんど製作費はホストへのギャラくらいのもんである。「ミリオネア」で100万ドルを獲得した参加者が何人も出ても番組としては痛くも痒くもないのは、他のところでちゃんと帳尻を合わせているからだ。
しかし「マーダー...」ではドラマ製作並みの下準備や製作費がかかっていることは間違いない。これではよほどヒットしない限り第2弾製作は難しいだろう。いや、どんなにヒットしても、こんなに入り組んだストーリー・ラインを考え出して、万全の準備をして、しかも製作者の思うように参加者が行動するとは限らないというのでは、第2弾製作の可能性はまずないように思える。製作の苦労のわりには実入りが少な過ぎるような気がするんだが。「マーダー...」は、リアリティ・ショウ全盛の現代に咲いたあだ花というのが、私が番組に抱いた印象だ。しかし結構面白いので、ついでにこの番組が実際に撮影された、メイン州のイーストポートという場所を地図で調べてみた。川向こうはカナダというアメリカ最東端に近い小さな町で、もしかしたら今後隠れた観光名所になるかも知れない。
最後に毎度のことながら、私の考える犯人の予想を一つ。はっきり言って、今回はほとんど見当もつかないというのが正直なところだが、少なくとも犯人がとったヴィデオに収められていたフリント家の驚愕の仕方から判断するに、意外、かつ図体のでかい人物、つまり男だという気がする。さもなければ、少なくとも当主のネイトは、最初は驚いても逃げまくるのではなく、相手に飛びかかるくらいの反応を示すのではないか。また、これまでに示された証拠物件からするに、ネイトの経営する缶詰工場に関係する人物であるというのは間違いない。しかし、そこで最も怪しく見えるティボドーや、元共同経営者のデベックが犯人というのではあまりにも当たり前すぎるので、それはないだろう。そこで一つひねって、市長のボーデンというのはどうだ。自分で言っててまったく説得力ないけど。
追記 (2001年9月):
番組が進むに従って、捜査の進展と共に、参加者内でのパワー・ゲームも二転三転する。クリスティンは無事アンドリューを更迭したまではよかったが、アグレッシヴなその態度が皆の反感を呼び、第3回、第4回、第5回と、最後の投票で毎回選ばれ、その度に無事生還するという驚異的な悪運を見せる。そしてそのクリスティンと、ジェフの間で関係が悪化、二人が対立する。第6回では、ライフガードに選ばれたケイティが、この二人のいがみ合いをなくすためには、どちらか一方が消えるしかないと、またまた選ばれたクリスティンに対して、もう一人にジェフを指名する。
そしてついにクリスティンが犯人の毒牙にかかって倒れる。しかし、今度はクリスティンがあまりに可哀想と同情していたエンジェルとジェフが対立するようになる。最終回にはそのエンジェルとジェフ、それにアランの3人が残る。思うに、この残り方はまるで「サバイバー」そっくり。残ったのは3人とも男だけになってしまったが、その点を別にすれば、最後まで残ったエンジェルとジェフの性格は「サバイバー」のケリーとリチャードを思い起こさせるし、目立たないようにしながら最後まで来たアランは、何にもできないのに愛嬌だけで最後の方まで残っていたコリーンを想起させる。こういうのって、やっぱり似てしまうんだなあ。
最終回は、この3人のうち、まず途中でアランとジェフが夜中に犯人指定の場所に派遣され、そこでついにジェフも犯人の手にかかる。ついに残るはアランとエンジェルの二人のみ。しかし犯人特定の方も大詰めを迎えており、この時点で容疑者も二人を残すのみとなる。私が予想したボーデンはもちろんはずれで、犯人は新聞記者のコヴィックか、ビジネスマンのランバートのどちらかまで狭まった。そしてエンジェルとアランの二人は事件の大団円を迎えるべく、一人ずつ容疑者のもとに派遣される。二人とも真犯人はコヴィックだと推理したため、ジェフの遺言? により選ばれたアランが優先されてコヴィックのボート・ハウスへ、エンジェルはランバートの家に派遣される。
犯人はサマンサを人質に立てこもっているという情報があるため、急がなければならない。しかしエンジェルとアランの二人共が真犯人だと思っていたコヴィックは、実はシロであり、本当の犯人はランバートだった! エンジェルは無事サマンサを救出し、ランバートは駆けつけた警官により射殺される。エンジェルは市長から事件解決に尽力したかどで表彰され、賞金を獲得、そして町は再び静けさを取り戻したのであった。めでたし、めでたし。
追記2 (2001年9月):
まったく何と言えばいいのか。この番組で優勝したエンジェルは、ニューヨークの現役消防士。そう言えば察しのいい者はすぐぴんと来たかも知れないが、そう、エンジェルは、この度のテロリストによるワールド・トレード・センター・ビル航空機激突に際し、真っ先に駆けつけ、そして崩れ落ちたビルの下敷きとなって絶命した、200余名の警官/消防士の中の一人になってしまったのである。番組の撮影のあった今春には、優勝して賞金も獲得し、今年は生涯最高の年だと思えただろうに、まさか半年後に人生を終えることになろうとは、夢にも思っていなかったに違いない。彼とは面識こそないが (当然だ)、私が顔を知っている唯一の被害者になってしまった。冥福を祈る。
