放送局: FOX

プレミア放送日: 4/21/2003 (Mon) 21:00-22:00

製作: ナッシュ・エンタテインメント、ザ・Gグループ

製作総指揮: ブルース・ナッシュ、ブライアン・ガディンスキ

共同製作総指揮: ロバート・コスバーグ

ホスト: モニカ・レウィンスキ


内容: 仮面を被った20人の男性求婚者の中から一人を選びだす、勝ち抜き恋愛リアリティ・ショウ。


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今年、「ジョー・ミリオネア」、「アメリカン・アイドル」とリアリティ・ショウで立て続けにヒットを飛ばし、波に乗るFOXであるが、しかしはっきり言って、その2番組以外のリアリティ・ショウの視聴率は大したことない。「メアリード・バイ・アメリカ」もちょっとばかし期待外れで終わってしまったし、ここらでもう一本、何か別の番組で当たりをとりたいと思っていたのは明らかだった。


「ミスター・パーソナリティ」は、その「メアリード・バイ・アメリカ」の後釜として編成されたリアリティ・ショウである。やはり「ジョー・ミリオネア」、「メアリード・バイ・アメリカ」と同種の、勝ち抜き系恋人獲得番組だ。これらの番組は毎回何か必ずひねりが加えられており、「ジョー・ミリオネア」の場合、それは主人公が本当は貧乏人であるのに身分を偽ってフランスの古城の主の如く振る舞い、それに釣られた女性を騙し、後で本当のことを告白して女性の反応を窺うというもので、「メアリード・バイ・アメリカ」の場合、結婚させるカップルを視聴者の投票で決めるという、なんらかの新しいギミックを採用することで、視聴者の興味を維持することに努めていた。


そして今回の「ミスター・パーソナリティ」では、一人の女性に求婚する20人の男性がすべて仮面を被っており、主人公の女性は相手の顔を知らないまま、毎週何人かを落として候補者を絞り込んでいかなければならない。そして番組の最終回で彼女が最後の一人を選んだ時、果たしてそこで鬼が出るか蛇が出るか、というのが番組のクライマックスとなる。


選ぶ側が女性という今回の設定は、相手の素顔が見えないといういかにもFOXらしいひねりを加えているとはいえ、どちらかというと、「ジョー・ミリオネア」というよりも、ABCの「ザ・バチェロレッテ」である。その、主人公とも言える位置に収まるのが、テキサス出身のヘイリー・アープ嬢。美人と言えなくもないが、しかし、私は彼女を見て、「サインフェルド」のジュリア・ルイス-ドレイファスを思い出した。


そのプレミアの回では、いきなり20人の男性を10人に絞り込む。顔の見えない相手を、ほんの僅かの会話と印象だけで選り分けていかなければならない。しかも印象を顔に結びつけて覚えるわけにもいかないので、ヘイリーはメモをとりながら順繰りに男性陣とお喋りするわけだが、こんぐらがらないだろうか。目と鼻、および口もとが開いている銀色の仮面には番号が振られており、画面に映る時は視聴者は一応その男性の素性を教えられるのだが、顔が見えないと、やはり印象がぼやけてしまい、20人もいると、誰だ誰だったかすぐにわからなくなる。


プレミアの最後では、脱落の決まった10人が呼ばれ、ヘイリーの目の前で仮面を脱ぎ、去っていくわけだが、落ちて当然のヘンな奴もいれば、あ、こいつはわりといい顔している、ちょっともったいなかったかな、というのもいる。しかし、それよりも何よりも、番組として最大の失敗は、残った10人の候補者の顔も、その時点で視聴者に見せてしまったことにある。製作サイドとしては、10人の顔を視聴者に見せることで、親近感をわかせ、肩入れする候補者を選び出す一助とするという目算だったと思うが、しかし、いったい仮面を脱ぐとどんな奇抜が顔が出るかもわからないという意外性を、そこで萎ませる結果にしかならなかった。


結局、めちゃハンサムがいるわけでもなければ、二た目と見られない醜男がいるわけでもなく、それぞれがほどほどの顔立ちで、だったら仮面など被っている必要はさらさらないのだ。もしプレミアの最後で男たちの顔をさらけ出すのだったら、その中に、少なくとも何人かの、性格はいいかもしれないが、顔を出したら誰もこんな男は選ばない、といった類いのブ男やはげを何人か滑り込ませるべきだった。そうすることで視聴者も、もしかしてヘイリーが彼を選んでしまったらどうなるんだろうという想像力を刺激され、番組に興味が湧いてきただろう。


さもなければ、視聴者にも候補者の男の素顔を見せるべきではなかった。視聴者もヘイリーと同じ立場に立たせ、私だったらこの人を選ぶと思わせといて、最後に仮面をとった素顔を見せるべきであった。いずれにしても、プレミアの回で残った候補者の素顔を視聴者に見せてしまったことは、視聴者を番組に対して早々と飽きさせることにしかならなかった。プレミアの回の視聴率がなかなかの数字だったのに、2回目から視聴率が激減していったのは、既に視聴者が飽きてしまったことを如実に物語っている。


結局、私は見るともなしに最終回まで見たのだが、実際、番組としてはどんどんつまらなくなっていった。結局「バチェロレッテ」と同じだもんな。あの仮面に意味などほとんどなくなってしまったし。ヘイリーの立場から言えば、やはりそれなりに相手の顔が見えないというのは重大な問題だろうが、彼女だって、暗闇のデートの時は相手に仮面を脱いでもらい、手探りで顔の様子を探っていたわけだし、ある程度の予想はついただろう。この場面では、目が見えない主人公が、顔に当たる雨しぶきの音で相手の顔を思い描くという「デアデビル」を思い出した。


いずれにしても、最後まで本当にはらはらどきどきしたのがヘイリーただ一人だけだったというのは間違いないところで、視聴者の楽しみとしては、ヘイリーが最後に誰を選ぶかということよりも、最後に彼女が選んだ相手が仮面を脱いだ時の、ヘイリーの反応を窺うというのが興味の焦点となった。その最終回、最後まで残った二人の候補者がヘイリーに婚約指輪を見せてプロポーズした時、ヘイリーはどちらとも決めかねる。そりゃあ当然だろう。一度も陽の下で顔を見たことがない相手から二人同時にプロポーズされても、どっちにするか迷うのは当然だ。


結局ヘイリーが最終的に下した決断の根拠となったものは、二人の男性の性格や態度よりも経済状況だったようで、モティヴェイション・スピーカー (企業や学生相手の講師のようなもので、いかにもアメリカ的な職業だ) のクリスよりも、企業家/億万長者のウィルになびいたのは、しょうがないというか当然というか。しかしヘイリーが決断する寸前までは、確かに口は立つクリスの方に分があるように見え、ウィルは明らかに彼を妬んでいたんだが。結局できレースを見せられたようなもんだな。


最後にウィルが仮面を脱いでごたいめーんという時も、ここで金持ちだが超不細工な顔が出てきて、ヘイリーがショックを受けたともなればとても面白かったんだが、前述したように、誰もがハンサムとは言えないまでも一応平均並みの顔で、その顔の後ろに巨万の富が控えているとでもなれば、別にそれくらいは誰も気にしないだろう。最後はヘイリーとウィルが二人でなにやらオリンピックの競技場にあるような階段を二人で手に手に繋いで上っていくという、実に作為的なエンディングで幕を閉じたのでありました。ま、どうせ二人共適当につき合って、頃合いを見て別れるんでしょう。あるいは番組収録が終わった途端、それでおさらばとか。


一応番組ホストと銘打たれていたのは、クリントン・スキャンダルで名を売ったモニカ・レウィンスキ。とはいえ、彼女がやることといえば、勢揃いした仮面の男たちの番号を読み上げることくらいで、はっきり言って、その役が彼女でなければならない理由なぞどこにもない。あれだけ派手にスキャンダルを起こした人間だからな、彼女がしかできない何かをやってくれるのかと少しは期待したんだが、しかし、彼女が主人公というわけでもないのだから、あんなもんか。どうせなら主人公を彼女にし、モニカの選ぶミスター・パーソナリティとすれば、話題性抜群だったのに。当然仮面を被った男たちの中の一人に、ミスター・クリントンも交ぜておくとかさ。







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Mr. Personality

ミスター・パーソナリティ   ★★

 
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