放送局: ディスカバリー

プレミア放送日: 6/23/2002 (Sun) 21:00-23:00

製作: ディスカバリー

出演: ジェシ・ジェイムズ


内容: カスタム・カー・デザイナーのジェシ・ジェイムズを筆頭とする数人の改造チームに材料費3,000ドルを渡し、1週間以内に市販の車をまったく別の車に改造させ、その模様をとらえるリアリティ・ショウ。


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「モンスター・ガレージ」を放送しているディスカバリー・チャンネルは、ドキュメンタリー専門のチャンネルである。ドキュメンタリー専門チャンネルというと、なんか、お堅い印象を受けるが、もちろんそういう番組もあるが、結構エンタテイニングな、柔らかめの番組も多い。このチャンネルが放送した恐竜を題材とする各種のドキュメンタリーは、ドキュメンタリーとしては例外的に非常に話題にもなった。また、毎年夏にサメに関する番組を特集する「シャーク・ウィーク」は、ディスカバリーの看板シリーズである。スカパーでも見られるので、日本でも馴染みが出てきたチャンネルではないか。


「モンスター・ガレージ」は、そのディスカバリーが放送する最新シリーズだ。数人のチームにいくらかのお金を渡し、その金で決められた時間内に車を改造させ (今のところ、材料費3,000ドル、制限時間は1週間と決められているようである)、その模様をとらえるという番組である。様々な機材を使用し、用途や使用法を教える、ドゥ・イット・マイセルフ的なハウ・トゥもの番組という見方もできないことはないが、やはり柔らかめの、はっきり言ってドキュメンタリーというよりは、娯楽性を追及するリアリティ・ショウだ。


私は別に自分で車を改造しようとか、チューン・アップしようとかこれまでまったく考えたことはなく、どっちかというとその方面ではほとんど素人である。それなのにこの番組に興味を持ったのは、車の改造の仕方そのものよりも、その改造の目的そのものがまったく言語道断なほど理不尽で、ほとんど意味がなく、遊びに徹しているという、その無目的性のためである。たとえば、ある回の「モンスター・ガレージ」のテーマは、VW (フォルクス・ワーゲン) の新型ビートルを水の上に浮かべて水陸両用車にしてしまうという、とんでもない改造に挑戦するのだ。


ルイジアナ州の湿原地帯には、直系2mくらいのプロペラを取りつけ、水陸両用にした、一人かせいぜい二人乗りの、エア・ボートと呼ばれるものが走っている。湿地帯であるため、陸地といっても泥質で草が生えており、硬い地表ではないため、プロペラの推進力で、タイヤがなくても陸地も結構水の上と同じようにびゅんびゅん飛ぶように走る。要するに今回の改造も、イメージとしてはあれだ。しかし今回はタイヤつきのビートルに改造を施し、正真正銘、公道も走れば水の上も走れる水陸両用車にしてしまおうというのだ。ううん、水の上を走るビートル、イメージとしては惹かれるけれども、本当にそんなことできるんかいな。


しかし、やる方は大マジでこれに挑戦するのだ。今回の改造のポイントは、まず、第一に、バック・ドアを開けた場所にプロペラを取りつけること、および、これが最大の難関なのだが、ビートルを水の上に浮くようにすることである。3,000ドルという材料費のほとんどはプロペラ代と、水の浸入をシャットアウトし、浮力を得るための簡易発泡スチロールを噴射する缶の購入費に当てられた。私は初めて知ったのだが、ノズルから噴射した途端、発泡して膨れ上がる特殊なそういう製品というのが市販されているのだ。


何人もの人間が大真面目に取り組み、やっと注文したプロペラも届き、取りつけも終わり、陸の上の実験ではプロペラの方向転換実験の首尾も上々で、いよいよ、最後の仕上げ、実際にビートルを水の上に浮かべてみるという最終確認に入る。しかし、すると、やはり付け焼き刃的な工作が災いして、いざ水の中に入ろうとすると、一瞬浮かんだはいいものの、すぐに車内に水が浸入してくるではないか。慌ててさらに発泡スチロールの缶をそこかしこに吹きつけまくり、今度こそ完成、制限時間にぎりぎりで間に合った、ということになるが、さて、問題はそこからである。


ただ改造して作ってみました、だけではもちろんダメで、それが実際に実用に耐えるかどうかを確認しなければならない。しかもそれだけでは芸がないので、話を面白くするため、なんとビートルは上記のエア・ボートと競争させられるのだ。ただし、いかに水の上に浮かんで進むことができるようにしたとはいえ、重い車体に小型のプロペラでは、いくらなんでもビートルに勝ち目はない。それでハンデ戦ということで、エア・ボートは最初トラックの上に積まれたままの状態で、そこから用意、スタート、ということになった。ビートルはそのまま水の中に突っ込んでいけばいいが、エア・ボートはいったんはしっかりとロープで結わえつけられたトラックの荷台から梱包を解くところからのスタートである。


スタートの号令が鳴って、いきなり水上に飛び込むビートル。そして、なんと‥‥、進んでいる、ちゃんと水上に浮いたまま進んでいるではないか。車重に対するプロペラの力が弱いため、スピード自体は微々たるものでしかないが、しかし、本当に浮いて進んでいる。思わず感動の一瞬である。製作チームも万歳をして喜んでいる。一方、エア・ボートはまだトラックから下に降りてすらいない。スピードはなくても、これなら勝てるかもしれない。


しかし、そうは簡単に問屋は卸すはずもなく、気のせいか、だんだんビートルが沈んでいっているような‥‥それは気のせいではなく、やはり気密性が完全ではないビートルの内部に、徐々に水が浸入してきているのであった。やばい。このままでは沈没してしまう。もう既に折り返し地点を過ぎ、もうちょっとでゴールだというのに、さっきまでは水上に見えていた部分の3分の1くらいが、既に水面下に沈んでいる。これはやばいと思ったか、ドライヴァーも窓から半分身を乗り出して、いざとなったらいつでも脱出できるような体勢をとりながら運転している。ううーっ、あともうちょっとなのにーっ。


しかもここにきて、やっと地上に降ろされて始動し始めたエア・ボートが、遅れた分を挽回せんと、猛スピードで差をつめてきている。やばい。これはもしかしたら逆転されるかもしれない。頑張れビートル!! ビートルはほとんど息も絶え絶えで、やっとのことでなんとか無事陸地にたどり着く。地上に着きさえすれば、そこは何といっても元々地上車の強み、一気に加速だ。しかし、だが、既にその真後ろにはエア・ボートの姿が。ダメだ、これは、いけない、逆転されるーっ、という状態のまま、2台はほとんど同時にゴール・イン、史上初のエア・ボート対水陸両用車ビートルの対決は、これまた最初にして最後の写真判定へともつれ込み、その結果、鼻差でビートルに軍配が上がり、無事、栄冠 (何の?) を手にしたのであった。天晴れ天晴れ。いや、だが、もう、しかし、こんなほとんど意味のない改造、やる方もやる方だが、思わず熱中して見る方も見る方である。でも、なんだか彼らが羨ましい。


番組のその他の回では、フォード・ムスタング・コンバーティブルを時速60kmの猛スピードで芝を刈る芝刈り機にしてしまうとか、SUVのフォード・エクスプローラーに油圧アームを取りつけてゴミ収集車にしてしまうとか、リンカーンのストレッチ・リムジンにホースを積み込んで消防車にしてしまうなんてのがあった。これらの車もビートル同様、ただそういう改造を行うだけではなく、当初の目的通りの機能を発揮することが要求される。つまり、ムスタングには実際に芝を刈らせてみるし、エクスプローラーの中にはゴミを突っ込んでみるし、リンカーンは放水できなければダメである。


そしてこれらの改造車も、やっぱりビートル同様、テスト競争がある。エクスプローラーは本物のゴミ収集車と共にゴミの回収にかかる時間を競い、リンカーンの消防車および本物の消防車は、消防署に待機している状態で、非常ベルが鳴ってから火事の現場にたどり着き、消火するまでの時間を競うのだ。もちろんこれらの改造車は、専用の本物のゴミ回収車や消防車に較べ、性能の上ではどうしても見劣りがするので、ビートル対エア・ボートの対決同様、ハンデ戦となる。


ゴミ回収車競争だと、わざと行き止まりの細い道路がその競争の場として選ばれる。道路の両側に出されたゴミを回収しないといけないのだが、大型のゴミ回収車だと、行き止まりのロータリーで何度も切り返さないと方向転換ができない。ところが、元々普通自動車と同じ大きさのエクスプローラーなら、お茶の子さいさいで切り返しの必要なく、どんどん進んでいける。結局、実際に歩道に出されたゴミ用のポリ・バケツを荷台に放り込むという作業自体では、圧倒的に本物の収集車の方が安定して、かつ迅速に作業を行えるのだが、切り返しに時間がかかりすぎたため、エクスプローラーの方が短い時間でゴミ回収を終えた。


リンカーン対消防車対決では、これは別にリンカーンでもそれほどハンデがあるわけではないため、火事を知らせるベルの合図と共に同時に出発、しかし、途中の道にはわざと大型トラックが止められ、交通の邪魔をしている。消防車はにっちもさっちも行かないが、それに較べれば小型のリンカーンは歩道に乗り上げ、消防車に先んじて現場に向かう。完全に先行したリンカーンが現場に着くと、車内から降りてきた消防隊員 (?) は、なんと、皆、タキシード姿。まあ、見かけはまったくストレッチ・リムジンのままだし、乗員がタキシード姿なのは、当然といえば当然か。そのタキシード軍団は、蝶ネクタイ姿のままホースを消火栓に繋ぎ、車の屋根を開けて消火作業を開始、遅れて消防車が現場に到着した時には、既に消火作業を終えており、これに限っては完全に改造リンカーンの勝ちとなった。


しかし、それにしても、これらの改造は、すべてほぼ実用に耐えることが証明されたとはいえ、それが本当に利用する価値があるかというと、これはまず、ほとんどない。時速60kmの芝刈り機なんて、いったい誰が使うんだ、そんなの (一応競馬場や野球場の芝刈りくらいになら使えるかもしれないが)。SUVのゴミ収集車もリンカーンの消防車も、わざわざ既存の車を改造してまで製作する意味はまったくあるまい。リンカーンの消防車なんてのが本当に火事現場にやってきたら、野次馬の度肝は抜くだろうが、燃えている家の住人は消防隊員に向かって、おまえら真面目に仕事をしているのかと怒鳴り散らすのがオチだろう。つまり、こんな改造、やる方にとっては、こんなことをしたからって、得るものは自己満足以外何もない。それでも、改造に取り組む者は本気も本気、超マジである。アメリカ人って、よくこんな無駄なことに本気で取り組むよなあ。もちろん、だからこそ面白いのであるが。わざわざ手間暇金をかけてまでやってしまうこの壮大な無理、無駄、ムラ。うーん、やはりこの手のやつをやらせたら、アメリカ人にかなうものはない。


MTVの「ジャックアス」があれほど人気が出たのも、いたずらをしかけて相手の反応を見て楽しもうとかいうよりも、やってるいたずらがただただ意味がなく、無目的なために、逆にその壮大なエネルギーの無駄使いに圧倒されるという面が大いにあった。「モンスター・ガレージ」も、その例に連なる番組である。問題は、多分この番組、10回くらい放送したらネタが尽きるんじゃないだろうか、という点にある。時速60kmの芝刈り機、みたいな、聞いただけで思わず笑ってしまうような、思わず見たくなるようなアイディアが、そうそういっぱいあるとも思えない。今後、どのようなアイディアが出てくるのかはわからないが、是非とも奇抜なアイディアでもって、第2、第3シーズンと続いてもらいたい。







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Monster Garage

モンスター・ガレージ   ★★★

 
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