Mission to Mars

ミッション・トゥ・マーズ  (2000年3月)

最近ブライアン・デ・パルマ作品から遠ざかっている。20年前に「キャリー」、「殺しのドレス」と続いた時はえらく興奮して見た記憶があるのだが、「カジュアリティーズ」、「虚栄のかがり火」と何となくデ・パルマも普通になってきたような気がして興奮も冷めた。「ミッション・インポッシブル」だって面白く見たが、ジョン・ウーが監督するパート2の方が絶対もっと面白くなるに決まっているという気がする。「スネーク・アイズ」に至っては「デ・パルマに影響を受けた新人がデ・パルマの真似をして撮った作品のよう」なんて評されているのを読んで見る気が失せてしまった。


で、「ミッション・トゥ・マーズ」は久し振りのデ・パルマ作品であったわけだが、いや、久し振りに見ると面白い。うん、確かにデ・パルマってこんな感じだったって思いながら楽しんだ。クレーンやステディ・カムを多用するこの人の移動撮影は面白い。それに金をかけたセット撮影を併せると、確かにこの分野では第一人者という感じがする。冒頭の、ロケット打ち上げが実は花火だったって仕掛けも、久し振りにデ・パルマ作品に触れると微笑ましい演出という感じがし、そのままパーティ・シーンに続く1シーン1ショットも結構好もしい。でも、毎回こんな感じで演出されたら飽きるかもな。やはりたまに見たというのがいいのかも。


「ミッション・トゥ・マーズ」は「未知との遭遇」、「コンタクト」に連なる異種生命体接近遭遇の話である。時は2020年、一生を火星探査という目的のために捧げてきたジム・マッコネル(ゲイリー・シニース)はしかし、愛する連れ合いのマギー(キム・デラニー)に先立たれ、望みだった有人火星地上探査という実務からも外され、宇宙船基地からルーク・グレアム(ドン・チードル)らの火星探査を見守ることになる。しかしルークからの連絡が途切れ、ジムはウッディ・ブレイク(ティム・ロビンス)、ウッディの妻テリ(コニー・ニールセン)、フィル(ジェリー・オコーネル)らと共に救援に向かう。そこで彼らが見たものは‥‥


ゲイリー・シニースはとてもいい役者なのだが、今回気づいたのが彼の首から肩にかけてがギプスにでもはめて固まったように動かないということ。いや、何か見てて肩凝っちゃったよ。あれって重い宇宙服を始終着てたせいなんだろうか。そういうふうに動くよう演出されたとか?まさかね。いずれにしてもほとんど身体の動かない状態でのクライマックスの眼だけの演技というのはさすが。シニースの思い出としてヴィデオの中にしか登場しない妻マギー役のキム・デラニーは、ビリングが高い位置にクレジットされているわりには出番が少なく、こんなもんかという感じ。クライマックスで絶対もっと出番があると思ったんだが。私は「NYPDブルー」出身の俳優はずっと応援しているので、彼女にも頑張って貰いたい。


ドン・チードルもHBOの「ラット・パック」を見た時にふうん悪くないじゃんと思っていたのだが、メイジャーなハリウッド作品で主演級に抜擢されるようになったか。髪に白いものが増えたティム・ロビンスもヒロイックなキャラクターに扮し、結構おいしい儲け役。ジェリー・オコネルは本人はまじめな役者を目指しているようだが、どうしてもどこか三枚目的な雰囲気を買われて起用されるようだ。


そうか、デ・パルマってどう見ても機械好きだし、SFって向いてるんだな。どうしてこれまでこのジャンルに手を出さなかったんだろう。宇宙船内部の映像も見事なもんだが、しつこくこれでもかとばかりに登場する宇宙船内外部での無重力状態での空中遊泳なんて、「2001年宇宙の旅」や「エイリアン」の世界からまた一段進化したという感じがする。でもわかるなあ。どんなに焦っても思うように身体が動かない宇宙服に身を包んでのアクションって、だからこそえらく緊張する。この辺の演出は非常に巧い。何よりも好感を持ったのは、膨らまそうと思えばいくらでも膨らませることが可能な作品の内容にもかかわらず、1時間50分できっちり終えているということ。このくらいですぱっと終える潔さが好きです。


ところで、ちょっとネタバレで大きな疑問というか懸念点を挙げるので、下はこの作品を見る気がない人か既に見た人、あるいは見る前にストーリーがわかっても気にしないという人だけ読んで下さい。


しかしいくらなんでもあの火星人はないんじゃないだろうか。あの造型だけは数十年前から全然進歩していない。私はあの火星人がそれまでのリアルな展開をぶち壊してしまったというような気がしてしょうがない。「未知との遭遇」のスピルバーグの宇宙人の方がまだ説得力あったし、宇宙人を見せずに終わった「コンタクト」の方が巧かった。それに大仏だかウルトラマンだかの顔を模したような地面から浮き出たあのドームは何だ?もしかしたらアジア人や日本人以外には別にそれほど不思議には見えないのかも知れないが、日本人の眼から見ると「奈良の大仏火星に現る!」なんてコピーを頭に描いてしまう。ルーカスのインダストリアル・ライト&マジックがCGを担当していてこれなの?あのあたり、もうちょっとなんとかしようがなかったのかという感じがしてしょうがない。


しかし、誰が撮っても火星ってやっぱり赤いね。空まで赤茶けた色で撮っているが、本当にあんな感じなんだろうか。いや、ちょっと気になっただけです。本当にああだったら別に言うことはありません。ところで私はこの映画を見る前に、ちょっと小腹がすいてたので滅多に食べないチョコレート、それも数年ぶりに食べるM&Mを買ってそれをぽりぽりと食いながら見ていた。そしたら映画の中でM&Mが重要なプロットとして使われているんでびっくりした。この間も、なにげに普段は聴かないボブ・ディランを延々と聴いた後に「ワンダー・ボーイズ」を見に行ったら、ディランが重要なモチーフとして使われていたのでびっくりしたばかりである。ふうん、こんなのってあるんだなあと思った。これってマーフィの法則かなんかでうまく説明されてないのかな。






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