Missing   ミッシング

放送局: ABC

プレミア放送日: 3/15/2012 (Thu) 20:00-21:00

製作: リトル・エンジン・プロダクションズ、スティルキング・フィルムズ、ABCステュディオス

製作総指揮: グレゴリー・ポイリアー、ジーナ・マシューズ、グラント・シャーボ

監督: スティーヴ・シル

出演: アシュリー・ジャッド (ベッカ・ウィンストン)、ショーン・ビーン (ポール・ウィンストン)、ニック・エヴァースマン (マイケル・ウィンストン)、クリフ・カーティス (ダックス・ミラー)、アドリアノ・ジャンニーニ (ジャンカーロ・ロッシ)


物語: ベッカは夫のポールと共にCIAエージェントだったが、過去、まだ幼かった息子のマイケルの目の前でポールが暗殺されたことからCIAを辞め、首都の一角でひっそりと花屋を経営して、マイケルの教育に専念していた。成長したマイケルはヨーロッパに留学を希望、一抹の寂しさを覚えながらもベッカはそれを了承する。ある時、それまで頻繁に届いていたマイケルからの連絡が途絶える。若い男性からの連絡が数日途絶えたくらいで行政機関は動いてはくれず、胸騒ぎの収まらないベッカは単身イタリアに飛ぶ。調査を進めるベッカは、マイケルが何者かに拉致された物証をつかむ。いったい、なぜ、何の目的でマイケルは拉致されたのか。ベッカは腰の重いCIAに頼らず、単独で危険な調査に乗り出す‥‥


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Missing


ミッシング   ★★1/2

40代くらいの女性が主人公の作品というのは、映画にせよTVにせよ小説にせよ、特に数は多くはない。ちゃんと数えてみたわけではないが、主人公として設定されるのが最も多いのは20代、次に10代、そして30代、40代と続くという印象が強い。


20代が最もアクティヴィティがあって描きやすいのはわかるが、私個人としては、女性が最も成熟して色気があるのは40代だと思っている。最近のアラサーとかアラフォーの女性がなにかと話題になるのを見ても、世の中にそう考えている者は多いと思う。単純にこれまではこの年代の女性が子育てやらなんやらで忙しく、あまり外に出ていないから、注目される機会がそれほどなかっただけということだろう。


現在このくらいの世代の女優が主演している番組だと、USAの「ザ・プロテクター (In Plain Sight)」のメアリ・マコーマック、NBCの「ロウ&オーダー: スペシャル・ヴィクティムズ・ユニット (Law & Order: SVU)」のマリスカ・ハーギテイ、CBSの「ザ・グッド・ワイフ (The Good Wife)」のジュリアナ・マーギュリス、ABCの「ボディ・オブ・プルーフ (Body of Proof)」のデイナ・ディレイニー、TNTの「ザ・クローザー (The Closer)」のキラ・セジウィック、「リゾーリ&アイルズ (Rizzoli & Isles)」のアンジー・ハーモン辺りが即座に思い浮かぶ (実際に年齢を調べてみたわけではないので、実際にはもっと若かったりしたら失礼。)


その中でも今回「ミッシング」に主演するアシュリー・ジャッドは、この世代の成熟した色気を振りまくことのできる女性というと、映画界TV界を問わず真っ先に思い出す女優の一人だ。最近名前を見かけないなと思ったら、TVに出張ってきていたか。


このページでもこれまでに何度か書いているが、私はジャッドとシャーリーズ・セロン、ケイト・ブランシェットの3人を、殴られる演技が様になる殴られ系女優三羽烏と呼んで、日頃から贔屓にしている。皆美人なのに、顔に青タン作ったり鼻血出したりするとむしろ色気が際立つという、得難い女優たちなのだ。最近になって知ったのだが、セロンは幼い時に実際に父親から暴力を受けていて、ある時母親が父を射殺したそうだ。


ジャッドもなかなか微妙な家族姉妹関係だったことは、カントリー・シンガーのナオミやウィノナが出演しているリアリティ・ショウにアシュリーだけがいないという事実や、その他にたまさか聞こえてくる芸能ニューズからも窺える。この分だとたぶんブランシェットもそういうものを引きずっているかという気になってくる。いずれにしても、そのジャッドが主演する番組というと、これは見てみないとという気になるのだった。


今回ジャッドが扮するのは元CIAエージェントのベッカで、かつて同僚で夫のエージェントのポールが、彼女と、当時まだ幼かった息子のマイケルの目の前でテロによって爆死されたことからCIAを辞め、子育てに専念する。時が経ち、成長したマイケルのたっての願いでイタリアに留学させるが、毎日あったその息子からの連絡が途絶える。数日連絡のとれない十代の若者の捜索に警察やCIAが本腰を入れるわけもなく、しかしいても立ってもいられないベッカは、とるものもとりあえずイタリアに飛ぶ。そこでかつてとった杵柄で単身調査を開始するベッカは、マイケルが何者かに拉致された現場をとらえたセキュリティ・カメラの映像に到達する。何者が、いったい、なぜ、マイケルを拉致したのか。


昨年、イタリアに留学してルームメイトの女性を殺害したとされるアメリカ人女性の公判がイタリアであった。この事件はアメリカでは大きく報道されており、被告となったアマンダ・ノックスを題材にライフタイムがTV映画を放送したくらいだ (因みに彼女を演じたのはNBCの「ヒーローズ (Heroes)」のヘイデン・パネッティーア。) 「ミッシング」でマイケルが留学し、拉致された場所がイタリアというのは、この事件とは無関係ではないだろう。この事件のアメリカでの注目度は、私の眼から見ると異様に思えるくらい高かった。


その後話は、ヨーロッパ中を息子の行方を追いかけるベッカ、つかず離れずで彼女の行動を監視・協力するCIAを中心に展開する。驚いたことにこの番組、実際にヨーロッパ・ロケを行っている。セットではなく、現地で撮影しているのだ。TVだというのに、かなり金がかかっている。いずれにしてもそのため、現地の町のオーセンティックな雰囲気はよく出ている。イーサン・ハントや007でも見ているみたいだ。


現在、「ミッシング」のように世界が舞台の番組に、ほぼ同時期にFOXで始まったキーファー・サザーランドが主演のミステリ・ドラマ「タッチ (Touch)」がある。これは、主人公の自閉の息子が、世界の変事を予兆する稀な能力を持っているというもので、そのため、舞台が世界中に飛ぶ。しかし「タッチ」の場合は明らかに外国という設定でも、撮影はその土地を模したアメリカで行っている。


「タッチ」だけだと特に気にはならなかったと思うが、同時期に放送されている「ミッシング」の海外撮影を見た後だと、「タッチ」は嘘くさく見えてしょうがない。ただし「タッチ」の場合、主人公のサザーランドが海外に行くというわけではなく、海外でのまったく関係のない話が後で主人公に絡んで来るという設定なので、こういう撮影の方が理に適っているというのはわかる。


話は変わるが、番組タイトルの「ミッシング」で思い出すのは、コスタ・ガブラスの1982年の同名ポリティカル・スリラーだ。この時、失踪した男性の妻を演じていたのは、これまた私の贔屓女優の一人であるシシー・スペイセクで、「キャリー (Carrie)」を例にとるまでもなく、彼女もまた嗜虐される時に最も魅力を発揮する女優の一人。


そしてさらに、2003年のロン・ハワードの「ミッシング (The Missing)」がある。なんと、この主人公は前掲のケイト・ブランシェットなのだ。つまりジャッドにせよブランシェットにせよ、愛する者が何者かによって拉致誘拐され、それを追って旅に出るという、場所と時代こそ違えまったく同じ設定、同じタイトルの作品に主演している。やはりこれによって彼女らの被虐的な表情を見せようとする魂胆だろうと納得するのだった。


実はTVの「ミッシング」は、ヨーロッパ中を身体を張って飛び回るジャッドの八面六臂の活躍にもかかわらず、特に視聴率がいいわけではなく、既に1シーズン限りでキャンセルが決定している。正直言うと、面白い設定ではあるが、ずっと息子を追ってヨーロッパ中旅して、どうやってシーズンを終えるんだろうと思っていた。シーズンの最後には息子を取り戻すにせよ失敗するにせよ一通り区切りがつくはずで、その後話を再度展開するのは難しそうだと思っていた。


ジャッドの夫役として出てきて、プレミア・エピソードで爆死するショーン・ビーンは、昨年、HBOの大河叙事詩「ゲーム・オブ・スローンズ (Game of Thrones)」でも首を切り落とされたと思ったら、こちらではクルマごと爆死だ。さらに先頃見た「白雪姫と鏡の女王 (Mirror Mirror)」では、ジュリア・ロバーツ演じる悪い妃の魔法によって災難を受けるという役どころだった。ジャッドが表の被虐女優としたら、影で災難を一手に引き受けているのがビーンか。



追記: 2012年5月


さて、いかにして第1シーズンを終えるつもりなのかと興味津々のシーズン (シリーズ?) フィナーレ、実はそれまでで最も大きなプロットのひねりは、実は死んだと思われていたポールが、実は生きていたということ。そうか、ビーンは今回は死なずに死んだのか。


そしてマイケルはどうなるのかと思われた最終回、ついにベッカはマイケルを見つけ出し、窮地から救う。ふーん、そうだったのか、では第2シーズンができたらどうなるのか、またマイケルは誘拐されるのか、それとも親子揃っての新しい活躍が始まるのかと思われた矢先、クルマを取りに行ったベッカがそのまま失踪してしまう。なんと、次に誘拐されるのはベッカの番だった。主人公が誘拐されるのか、さすがにそこまでは考えいていなかった。


ではあるが、この番組、実は第1シーズン限りでキャンセルされてしまった。つまり、行方不明になったベッカの行方は、永久にわからないままで終わってしまった。誘拐されたベッカが拷問を受けるのは間違いなく、そこでこそジャッド18番の青タン演技が見れるはずだったのに。強い母を演じるジャッドも悪くないが、それでも第1シーズンより第2シーズンの方が見たかった。









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