Midnight Special


ミッドナイト・スペシャル  (2016年4月)

「テイク・シェルター (Take Shelter)」で印象を残したジェフ・ニコルズが、再度マイケル・シャノンと組んで撮ったのが、「ミッドナイト・スペシャル」だ。「テイク・シェルター」では、シャノンは、地上が破滅する予感に突き動かされて、単独でシェルターを建設するという男を演じていた。「ミッドナイト・スペシャル」は、今度は尋常じゃない力を持つ息子を連れて、FBIや警察、カルトから逃げ回る父親を演じる。


いずれにしても自分でもよくわからない何かに突き動かされて、狂信的行動をとる男という本質的な部分は一緒だ。しかしシャノンって、こういう危ない役がよく似合う。単に危ない男というと、「ボーダーライン (Sicario)」のベニシオ・デル・トロもそういう雰囲気を持っているが、本当にこの人、向こうの世界に行っちまってるんじゃないかという狂気を感じさせるという点では、ほとんどシャノンの独壇場という気がする。


ニコルズ作品はさらにSF的設定が特色で、「テイク・シェルター」でもハルマゲドンが襲ってくる世界を描いていた。それがあるので今回も、カルト教団から息子を奪い返した男の逃避行を描いていると思わせておきながら、実は裏があるかもと勘繰らせる。


その懸念というか予想は的中し、予知能力があることになっている息子のオルトンが、予知だけでなく、もっと壊滅的な力を持っていることが明らかになってくる。やっぱり一筋縄では行かなかったか。少年は光に敏感で、少しでも日に当たると力が暴走し始めてしまうため、行動はできる限り日が落ちてからになる。いったん解放された力は外部に壊滅的な影響を与える。


それにしてもまた目から光線だ。「エンブレイス・オブ・ザ・サーペント (Embrace of the Serpent)」でも主人公が目から光線出して度肝を抜かしてくれたと思ったら、「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生 (Batman v Superman: Dawn of Justice)」でもスーパーマンが目から光線発射する。ま、こちらは元々宇宙人だからと思っていたら、「ミッドナイト・スペシャル」でもまさかの目から光線だ。みんな目から光線出してるぞ、いったい何がどうしたってんだ。しかもオルトンは「スーパーマン」のコミックスなんか読んでるし。


さらに周りを囲んでいる者は、それこそ元スパイダーマンの彼女を演じたカースティン・ダンストがカルト教団の信徒でオルトンの母であり、ダース・ベイダーの後継者カイロ・レン役のアダム・ドライヴァーがFBIエージェントで、オルトンを追っている。他にも半ば疑心暗鬼ながらもロイを助けるルーカスにジョエル・エドガートン、教団の主宰者に扮するのはサム・シェパードなど、曲者揃いだ。こんな奴らに囲まれて、果たしてロイに、オルトンに逃げ道はあるのか。


一方オルトンを演じるジェイデン・リーベラーは、まだ幼く、クレジットはあまりない。唯一知られているのは「ヴィンセントが教えてくれたこと (St. Vincent)」の少年役くらいだが、唯一の味方がビル・マーレイだったというのは、多少心もとない気もする。とはいえマーレイだって「ゴーストバスターズ (Ghostbusters)」の一員だからな。舐めてかかると痛いしっぺ返し食らいそうだし、なんといってもオルトン少年の力はまだ未知数だ。などなど、意外な展開でこちらの口を開けたままにするニコルズ作品についていくには、こちらも想像力を全開にしないと対応できないのだった。









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あるカルト教団からオルトン (ジェイデン・リーベラー) という男の子が誘拐される。誘拐したのは少年の実の父ロイ (マイケル・シャノン) と、友人のルーカス (ジョエル・エドガートン) だった。さらにその少年をFBIのセヴィア (アダム・ドライヴァー) も追っていた。実は少年は教団内で予言をすることで知られており、その中には部外秘の国家機密も含まれていた。オルトンは極端に日の光に敏感で、常に厚いサングラスをかけ、泊まっているモーテルでは段ボールで窓を覆って常に光をシャットアウトしていた。もし日の光に当たった場合、オルトンの持つ力が外に解放され、大きな被害をもたらす恐れがあった。FBI、警察、教団らが血眼になって追跡する中、オルトンたちはある地点に向かって足を進めていた‥‥


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