シーズン最初のトーナメント、メルセデス・チャンピオンシップは前年のツアー優勝者から構成される、今年のシーズンを占う上で重要なトーナメントである。過去見応えのある試合を何度も演出してきており、まだ西海岸で開催されていた97年には、雨で3日間に短縮された結果、その時点で並んでいたトム・レーマンとタイガー・ウッズのプレイ・オフになり、雨の中パー3でのティ・ショットで最初に打ったレーマンが池に落とし、ウッズがピンそば1フィートにぴたりと寄せて勝ちをもぎ取った。


翌年は最終日、逃げるミッケルソンをマーク・オメアラと組んだウッズが二人で猛チャージ、大いに沸かせた。バック・スイングに入ったミッケルソンが、隣りのホールのウッズ/オメアラのプレイの大歓声のためにスイングを中断せざるを得なくなるなど、大いに盛り上がった。そして舞台がハワイに移った昨年は、デイヴィッド・デュヴォールが最初から最後まで敵なしの圧倒的な強さで完勝した。確かに昨年前半のデュヴォールは、59を出したボブ・ホープ・クラシックといい、向かうところ敵なしだったよなあ。


しかし今回の焦点は、何といっても現在ツアー4連勝中のウッズが、その記録を伸ばせるかどうかにかかっていた。もしツアー5連勝すれば、53年のベン・ホーガン以来47年ぶりの記録。ツアー・レコードは、45年のバイロン・ネルソンの11連勝という多分もう破れることはないだろうという記録があるが、それでも、どこまでそれに肉薄することができるのか興味は尽きない。


トーナメントの方は、風の吹きまくる中、2日目を終わった時点で2位に4打差をつけてトップに立ったウッズがそのままぶっちぎりで逃げ切るかと思われた。しかし3日目、スコアメイクに苦しむウッズをアーニー・エルスが猛追、一時はエルスがトップに立つなど、3日目終了時点でウッズとエルスが11アンダーで首位に並ぶという願ってもないエキサイティングな展開となった。しかもその3打後ろには昨年の覇者デュヴォールが虎視眈々と隙を窺っており、あわよくばと狙っている。ウッズ・ファンを自認する私であるが、やはり勝負はこうでなくっちゃ。


しかしデュヴォールは最終日の15番、パー5の第2打をフェアウェイ左の薮の中に入れ、ドロップしてチャンスは潰えた。最終日のスコアはウッズとエルスよりもよかっただけに、あれはもったいなかった。一方、ウッズとエルスは古典的な我慢比べを展開、共にクラッチ・パットを決めたり、ショート・パットを外したりしながらじりじりとスコアを伸ばし、18番ティに立った段階で共に14アンダー。下りホールとはいえ630ヤード、パー5というマンモス・ホールで、第2打、先に打ったウッズは280ヤードを3ウッドでグリーン上に落とし、ころころと転がったボールはピン・ハイ、20フィート右に止まった。


ウッズは前日もこのホール、イーグルをとっている。2日連続イーグルなるか、いやが上にも期待は高まる。しかもエルスもこれに答える。ドライヴァーがウッズより飛んだエルスは、第2打の2アイアン、グリーン手前に落とし駆け上がらせる全英オープンのようなランニング・ショット。延々と転がったボールは、なんとピン左横15フィートと、ウッズの内側につけた。流石世界の1位と5位、見せてくれます。ウッズは20フィートを沈め、得意のガッツ・ポーズ。しかしエルスはこれにも応え、ついに勝負はプレイ・オフへ。


同じ18番でのプレイ・オフは、またもや綺麗にグリーンに2オンしたエルスが、第2打がグリーン横で止まってしまったウッズより大きく有利に。ウッズのパットは6フィートオーヴァーし、バーディも危ない。イーグル・パットを沈めて勝負を決めたいエルスのパットは、本当に最後の瞬間にカップ右に逸れる。安堵と残念のため息が会場から洩れる。エルスはこれをタップ・インしてバーディ。しかしウッズはテイスティな6フィートが待っている。しかし今度はウッズがこれに応え、勝負はプレイ・オフの第2ホール‥‥第1番パー4へ。


共にピン奥40フィートと35フィートに乗せ、遠い方のウッズが先にバーディ・パット。これは二人ともパーで勝負はまだ続くな、と思っていた矢先、そのウッズのボールがカップの中に沈んだ。ウッズ得意の足引き摺りガッツ・ポーズ。流石にいくらエルスでも続けて35フィート下り左曲がりのパットを沈めるのは至難の業だ。勝負はついたか。案の定、エルスのパットは1フィートショートし、ついに決着はついた。


いやあ、しかし、面白かったぞ。毎ツアーこれくらいだとPGAのTV追っかけをする意味が充分あるぞ、うん。しかしこの後ウッズは多分来月のペブル・ビーチまでは休むだろうし、デュヴォールも然り。来週もハワイでソニー・オープンだが、やはりメンツが寂しいよなあ。しかもハワイとニューヨークでは時差が6時間もあって、TV中継が始まるのが午後8時で、終わったのが11時前だった。ソニー・オープン、昨年のディフェンディング・チャンプはジェフ・スルマンか‥‥予選終わった時点で面白そうだったら見ることにしよう。







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メルセデス・チャンピオンシップ

2000年1月   ★★★1/2

ハワイ州カパルア、プランテーション・コース

 
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