Men of a Certain Age  メン・オブ・ア・サーテン・エイジ

放送局:  TNT

プレミア放送日: 12/7/2009 (Mon) 22:00-23:00

製作: TNT

製作総指揮: レイ・ロマノ、マイク・ロイス、ロリ・ローゼンガーテン、ケアリ・ホフマン

製作: ヴィクター・シュー

監督: スコット・ウィナント

脚本: レイ・ロマノ、マイク・ロイス

撮影: シャロン・メア

美術: ジョゼフ・ラッキー

編集: ケヴィン・ロス

音楽: W. G. スナッフィ・ウォーデン

出演: レイ・ロマノ (ジョー)、スコット・バクラ (テリー)、アンドレ・ブラウアー (オーウェン)、リサ・ゲイ・ハミルトン (メリッサ)、リチャード・ガント (オーウェンSr.)


物語: ジョーはパーティ用品専門店を経営する40代で、ギャンブル好きが祟って妻と別居中、ティーンエイジャーの娘と息子がいる。同年代の友人テリーはシングルの俳優崩れで、いまだに女性にはもてるがどんな仕事も長続きしない。オーウェンは妻と子供3人がいる働き盛りだが、父の経営するカー・ディーラーでは見込みがないと思われている。3人とも以前のように身体に無理の利く年代ではなくなってきているが、身体のことを考えてハイキングすれば心臓に負担がかかって倒れてしまう等、それぞれ悩みの種は尽きないのだった‥‥


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近年、USAとベイシック・ケーブル界での人気トップの座を争っていたTNT、それが現在ではUSAに大きく差を開けられ2番手の位置に収まっている。「ザ・クローザー (The Closer)」を別格として、それに続く番組が現れない。「セイヴィング・グレイス (Saving Grace)」は次シーズン限りで終わりが発表になっているし、「レヴァレッジ (Leverage)」、「ホウソーン (HawthoRNe)」、「ダーク・ブルー (Dark Blue)」の成績も今一つ。


昨シーズンNBCで放送され話題を提供したが成績をとれなかった群像刑事系ドラマの「サウスランド (Southland)」を新シーズンから放送するが、それが視聴者獲得に貢献するかというと、はなはだ心もとない。そのTNTの最新ドラマ「メン・オブ・ア・サーテン・エイジ」も、その内容はというと、中年の危機を迎える3人の男の友情日常ドラマというなんとも派手さを欠くもので、実は特にヒットしそうにも見えない。


とはいえ、その3人に扮する俳優はというと、レイ・ロマノ、スコット・バクラ、アンドレ・ブラウアーという、一見しただけでなかなかそそる人選なのだ。特に主人公兼番組クリエイター/製作総指揮を務めるロマノは、数年前までシットコムの「ヘイ! レイモンド (Everybody Loves Raymond)」で長らく人気を博した。


アメリカではドラマでもコメディでも人気がある限り番組は永遠に続いていく。結果として、人気が落ちて番組が最終回を迎える頃には誰も見なくなっていたということが起こりがちだ。NBCの「ER」の最終シーズンがいい例だ。できれば余力を残したまま、番組がまだ人気を保っているのに惜しまれつつ最終回を迎えるというのが最も理想的な形だが、もちろん言うは易く行うは難しで、番組に人気があればあるほどその見極めは難しい。


しかしそこをきちんと抑えれば、先ほど最終回を迎えたUSAの「モンク (Monk)」のように、最終回で視聴率記録を作って大きな花火を打ち上げて番組を終えることができる。その方が視聴者の記憶にも残るし、番組自体の質も落とさないでいられる。ペイTVのHBOの「ザ・ソプラノズ (The Sopranos)」と「セックス・アンド・ザ・シティ (Sex and the City)」を別にすると、ここ何年かでは「モンク」同様、高い人気を誇ったまま惜しまれつつ終わった番組というと、即座に思い出す2本の番組がある。NBCの「サインフェルド (Seinfeld)」と、CBSが放送していた「ヘイ! レイモンド」だ。


「サインフェルド」の方は、TVガイドが選出したTV史上ベストの栄えあるナンバー・ワンに選ばれていることからも、その人気の高さと評価が知れるが、「ヘイ! レイモンド」の場合、特に批評家評がよかったとか、質が高かったとか斬新な番組作りをしていたとかいうわけではない。主人公とその弟家族を中心に、崩壊はしてないが崩壊しかけた家族の日常を、軽いセックス・ジョークを絡ませながら描いたシットコムだ。確かに特に誉める点も斬新な点があったとも言い難いが、しかしめっぽう面白かった。その番組クリエイターかつ主人公レイモンドを演じたのが、誰あろう「メン・オブ・ア・サーテン・エイジ」の主人公ジョーを演じるレイ・ロマノだ。


ロマノは、一見してどこにでもいる本当にごく普通のアメリカ人で、まったく浮いたところがない。逆に言えばセレブリティっぽいオーラをまったくと言っていいほど発しない。彼が道を歩いていても、ほとんどの者は気づかないと思う。そういう派手さとは無縁な点を逆手にとり、ごく一般的な普通人、日常生活から笑いを掬いとって提出してみせたのが、「ヘイ! レイモンド」だった。そして「メン・オブ・ア・サーテン・エイジ」は、かなりその延長線上にあると言って差し支えないかと思う。


ここでロマノ演じる主人公ジョーは、パーティ用品専門店を経営する40代の男だ。妻はいる、というかいたが、今では別居しており、感じとしては現在離婚手続きの真っ最中だ。ティーンエイジャーの娘と息子を妻にとられているため一人暮らしで、どうも自宅というよりはホテルかモーテルのようなところで寝起きしている。ネット・ギャンブル中毒であるところを咎められて、家を叩き出されたのかもしれない。ゴルフ好きでもあり、なんとかシニア・デビューはできないものかと半分本気で考えている。


ジョーにはいつもつるんでいる同年代の友人が二人いる。そのうちの一人がテリーで、やさ男でいつも女性受けはよい。俳優を第一職業としているがさりとて名が売れているわけでもなく、ほとんどテンプの仕事で食い繋いでいる。それでも特に生活が貧窮しているようなわけでもなさそうなところを見ると、かなりの部分、女性から貢がれているものと思われる。


もう一人の友人オーウェンは妻と子供が3人いる。子供たちは今が金のかかり時の私立学校に通っているか通わせようとしている。自宅も改装中だ。父親が経営するカー・ディーラーで働いているが、時間にルーズなところやよくサボったりすることから、父親からはできの悪い息子と思われている。朝、呼吸困難になって目覚めたりすることもある。


3人とも歳が歳だから健康に留意している、というか、健康に留意しないといけないことはわかっているので、健康にいいというゴジ・ベリーを買って食ってたりする。いきなりジョギングするほど体力があるわけでもないので、せめて歩こうと坂道をハイクすると、オーウェンが心臓発作を起こして倒れる。慌ててオーウェンを車に運んで病院に連れて行こうとすると、前を綺麗なねーちゃんが横切るので、思わず見とれて他の車への注意がおろそかになって事故りそうになり、急ブレーキをかけたせいでオーウェンは鼻をダッシュボードにぶつけて骨折してしまう。結果としてその被害の方が大きかった。


テリーを演じるのがスコット・バクラ、オーウェンを演じるのがアンドレ・ブラウアーだ。渋い人選だ。バクラは、たぶん人が最も覚えているのは「タイム・マシーンにお願い (Quantum Leap)」か、「スター・トレック エンタープライズ (Star Trek Enterprise)」のどちらかだろう。今年は「インフォーマント! (The Informant!)」で冴えないFBI調査官を演じて印象を残した。なかなか侮れない仕事をする。


ブラウアーはいまだにNBCの「ホミサイド (Homicide)」の栄光を引きずっているという感じがするが、それでもこの年代の黒人俳優でシリアス演技をさせたら1、2を争う演技派だ。いずれにしてもこの3人、この人選、これだけでも大いに食指をそそられる。


むろん私がこの番組に大いに興味を惹かれたのは、この人選ばかりではない。彼等の年代、置かれている境遇が、ずばり私と重なるからという個人的理由もある。境遇といっても、実地に似たような体験をしているとかいうことではなく、人生のある一定の時期に達した時点における焦燥や諦観、ものの考え方や受け止め方といったものが、いちいち思い当たるのだ。番組の中で、病院に入院したオーウェンが、オレももう48だと言う。私もだ。なんてこった、私とブラウアーは同い歳だったのか。道理で番組内のキャラクターの言動のいちいちに共感できたりするわけだ。


48というと、一般的に言って人生の半分は既に終わっている。もう、今さら転職したり新天地で新しい人生を踏み出すというわけにも行かないだろう。しかし、これでいいのか、自分は満足か、やるべきことはやったか、し残したことはないか、それとも、まだチャンスはあるのか、そもそも、そのチャンスっていうのはいったい何を指している? みたいな気持ちになることがままある。もう若くはないという気持ちとまだまだやれるという気持ちが交錯する。まったく番組の登場人物と同じだ。


冷静に考えてみると、自分で自分のやりたいことをやってきた人生だ、特に不満があるわけではない。少なくともしたいことをやって生活しているということだけでも、恵まれている方ではないかと思う。とはいえ、自分の今の気持ちの50%を達成感、充足感が占めるとしたら、もう25%を焦燥感や諦観、そしてもう25%を感傷が占めるのも否定できない。気持ちはその間を揺れ動く。もう後戻りはできないのだ。番組は、3人の中年男のそういう寄る辺ない心情を描く。あー、身につまされる。



追記: 2010年1月


私はミステリ好きなのだが、「凶笑面」で知られる北森鴻が亡くなったことを知った。心不全だったそうだが、それよりもなによりも、彼も48歳だったことを知った。なんてこった。彼もだったか。おとつい、短編集でたまたま「バッド テイスト トレイン」を読んだばかりで、食を絡めるトリッキーな作品を書かせるとひと味違うなと感心していた矢先だった。彼が亡くなったのか。もう蓮丈那智の活躍や香菜里屋シリーズは読めないのか。


などと愕然としたり感傷に浸る暇もなく、うちの女房の元同僚の女性の訃報まで入ってきた。正確な歳はわからないが、彼女もだいたい同い歳だ。元々骨髄腫のようなものを患っていたらしいが、その彼女も他界した。なんなんだいきなり。なんとなく48ってまだまだ平気のような気がしていたが、この世を去る人も出始める。 不惑を過ぎてだいぶ経つのに、惑わないどころかいまだに煩悩ばかりだが、それでも今、大病もなく元気でいられることをありがたいと思わないといけないようだ。








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メン・オブ・ア・サーテン・エイジ   ★★★

 
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