Mega Python vs Gatoroid   メガ・パイソン vs ゲイタロイド

放送局: SyFy

プレミア放送日: 1/29/2011 (Sat) 21:00-23:00

製作: アサイラム

製作総指揮: デイヴィッド・リマウィ

製作: デイヴィッド・マイケル・ラット、ティファニー

監督: メアリ・ランバート

脚本: ナオミ・セルフマン

撮影: トロイ・スミス

編集: ショーン・デイヴィッド・トンプソン

音楽: クリス・ライデンアワー

美術: ニコ・ヴィライヴォングス

出演: デボラ・ギブソン (ニッキ・ライリー)、ティファニー (テリー・オヘア)


物語: パイソンの保護運動を強力に推し進めるニッキーは、違法に所有している持ち主からパイソンを盗み出しては生息地に放していた。一方、町ではワニ猟の代わりに増えすぎたパイソンを捕獲することになる。シェリフのテリーがその先頭で指揮をとり、当然ニッキーと犬猿の間柄になる。しかし二人の知らないことには、パイソンは単なるパイソンではなく、これまでの何倍も大きいメガ・パイソンが異常繁殖しており、さらには通常のワニの何倍もあるゲイタロイドまで人知れず繁殖していた‥‥


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Mega Python vs Gatoroid


メガ・パイソン vs ゲイタロイド   ★★1/2

SF番組専門のSyFyには、知る人ぞ知る土曜夜9時のTV映画専門枠がある。感動的なくらいB級のトラッシュ番組が飽きもせず編成される。感じとしては少なくとも隔週程度には新作が放送される。TV映画だってまともに作れば数百万ドルかかる。中小程度のケーブル・チャンネルが隔週1本ずつ作っていたら母屋が傾きかねないくらいだ。それでも途切れることなく製作放送を続けられるのは、ひとえにそれらが安上がりのチープな作品であるからだ。


一昨年、「ウェアハウス13 (Warehouse 13)」を書いた時にもこれらのTV映画枠について言及しているが、その状態は今でもまったく変わっていない。この進歩のなさこそが癖になるとも言える。因みにその時放送していたTV映画として、私は次のようなことを言っている。


“最近放送されていたTV映画には、夏の風物詩、巨大サメと巨大タコの沿岸部をパニックに陥れる「メガ・シャークvsジャイアント・オクトパス (Mega Shark versus Giant Octopus)」とか、同じ顔したシュワルツネッガーもどきのサイボーグが地上と宇宙空間で人間と争う「ザ・ターミネイターズ (The Terminators)」とか、西海岸を巨大サメが襲う「マリブ・シャーク・アタック (Malibu Shark Attack)」なんてのがある。タイトルを聞いただけで、なにやらギルティ・プレジャーの気配がふつふつとたぎってくる。「マリブ・シャーク・アタック」なんて、主演はTV版「ニキータ (Nikita)」に主演していたペータ・ウィルソンだ。そのウィルソンができの悪いCGや模型のサメに襲われるのだ。TVファンならかなりそそられるだろう。”


そして最近放送されたTV映画というと、アイルランド伝説を基にした「スクリーム・オブ・ザ・バンシー (Scream of the Banshee)」、「世界侵略:ロサンゼルス決戦 (Battle LA)」の完全なパクリである「バトル・オブ・ロサンジェルス (Battle of LA)」、鉄に生命が宿る「アイアン・インヴェイダー (Iron Invader)」、軍の秘密基地でのエイリアンとの対決を描く「エリア51 (Area 51)」、火山活動から生まれた怪獣「ビーイマス (Behemoth)」、怖い町に紛れ込んだ若者たちを描くホラー「ハスク (Husk)」等で、相も変わらずのB級C級の珍作が並ぶ。


「スクリーム・オブ・ザ・バンシー」にランス・ヘンリクセンが出ていると知ると、かなり食指が動く者も多いと思うし、「バトル・オブ・LA」のチープさも期待を裏切らない。「ハスク」は実は期待を裏切ってかなりまともなホラーで、結構よくできており、がっかりすべきか感心すべきか迷ったりする。演出のブレット・シモンズの名は覚えておいてもいいかもしれない。


そしてそんなこんなの珍品の中で、一際輝きを放っていたタイトルが、「メガ・パイソン vs ゲイタロイド」に他ならない。SyFy得意の珍獣怪獣もので、サメやパイソン、トラ、ワニ等の肉食系動物魚類爬虫類両生類を巨大化させたり突然変異させたりするという必殺パターン、しかも今回は察するにヘビとワニの両巨頭の揃い踏みだ。思わず口元に笑みが浮かんだりする。


とはいっても、やはりそれだけではだからといって録画してまで見ようという気には到底ならない。なのに今回そこまでして番組を見たのは、そこに主演の二人、ティファニーとデボラ・ギブソンという名前を発見したからに他ならない。あまりにも意外で、一瞬、二人の名前を理解できなかった。最近では、フィギュア・スケーターのブライアン・ボイタノがクッキング・ショウのホストとして挙げられているのを見た時くらい、一瞬、何も考えられなくなった。


ティファニー、あの、私が若い時に今のブリトニー・スピアーズと同じくらいは人気のあった、あのティファニーか。そしてデボラ・ギブソンというのは、やはりほとんど同じ頃に同様に人気のあったあのデボラ・(デビー)・ギブソンのことか。一世を風靡したかつての二人のアイドルのことか。この二人がよりにもよってチープなことでは右に出るもののないSyFyのTV映画に主演するってか。


だいたい、この二人、今までいったい何をしていたからいきなりこんな番組で共演なんてするんだ。本当にあのティファニーとギブソンか。いきなり記憶がフラッシュ・バックして可愛かった当時のティファニーとギブソンの顔を思い出す。当然のように二人のアルバムも持っていた。頭の中でティファニーの「アイ・シンク・ウィアー・アローン・ナウ」とギブソンの「エレクトリック・ユース」のメロディが交互に明滅する。


実はティファニーもギブソンも、近年まったく目にする機会がなかったわけではない。ギブソンはFOXの「スケーティング・ウィズ・セレブリティーズ (Skating with Celebrities)」と、ABCの「ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ (Dancing with the Stars)」という勝ち抜きリアリティに出ているのを見たことがある。むろん落ち目になった元スターもどきが出ることで知られている「ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ」なんかに出ると、それだけで自分が売れてないことを自分自身で証明することにしかならない。それ以前にはFOXの「アメリカン・アイドル (American Idol)」の成功しなかったスピンオフ、「アメリカン・ジュニアス (American Juniors)」でジャッジをしていた。


ティファニーに至っては体重が増えすぎてしまったようで、VH1の減量リアリティ「セレブリティ・フィット・クラブ (Celebrity Fit Club)」に出ただけでなく、現在の体格と昔の知名度を買われて、勝ち抜きでプロレスラー入門を果たす、カントリー・ミュージックTVチャンネルの「ハルク・ホーガンズ・セレブリティ・チャンピオンシップ・レスリング (Hulk Hogan's Celebrity Championship Wrestling)」に誘われて出ているのを見た時には、さすがに唖然とした。とはいっても、アメリカでもプロレスは人気があるし、先頃、現在人気のMTVのリアリティ・ショウ「ジャージー・ショア (Jersey Shore)」に出ている女の子スヌーキーがプロレスに特別出演していて、連続バック転なんか披露して話題になっており、もし運動神経がいいなら、案外プロレスはキャリアの復活に向いているかもと思ったりもする。


いずれにしても、ギブソンもティファニーもTVの勝ち抜きリアリティにかつてのセレブリティという役どころで出て、また名前を売ってともすれば一線復帰を画策しているようだ。しかもこの二人、つい最近、ギブソンが「メガ・シャーク vs ジャイアント・オクトパス (Mega Shark vs Giant Octopus)」、ティファニーが「メガ・ピラニア (Mega Piranha)」なんて、両方とも巨大化したサメやピラニアに襲われるというB級パニックSFに、期せずして二人とも出ている。これでは二人の共演も時間の問題だったと思える。そして今、「メガ・パイソン vs ゲイタロイド」だ。


そのプレミア放送は、直前の番組が「メガ・ピラニア」で、その前が「メガ・シャーク vs ジャイアント・オクトパス」と、当然彼女らの代表作? を並べる。二人は番組放送時のコマーシャル毎にも出てきてちょっとしたおしゃべりでお茶を濁す。彼女らの役どころはというと、パイソンの保護を訴える教授ニッキーにギブソン、町のシェリフのテリーにティファニーで、当然二人は対立する。


なんというか、期待通り全編チープチープチープの、小学生に特撮撮らせたんですかというくらいチープなCG、チープな演出チープな演技で、もちろんこれは意図的だろう。今時、わざと下手に作ろうという意志がない限り、ここまでチープな絵は撮れないと思う。もちろん、当然ティファニーもギブソンもオーヴァー・リアクションのべた演技で視聴者を笑いに誘う。さらに二人がパーティの席で取っ組み合いで喧嘩するというファン・サーヴィスもついている。ギブソンがティファニーのドレスの胸の谷間にケーキを突っ込むのだ。ファンの心情を慮ったなかなかいい心がけだ。


クライマックスはどうするのかと思っていたら、まあこういう作品だからラストをばらしてもかまわないと思うから言ってしまうが、ヘリコプターで逃げようとするティファニーは、縄梯子にぶら下がったままゲイタロイドに一と口で呑み込まれて一巻の終わり。一と足先にヘリに乗り込んで助かったかに見えたギブソンも、爆発のショックでヘリから沼地に転落、メガ・パイソンに胴体を真っ二つに食いちぎられてしまう。しかし二人の尽力によって平和を取り戻した町には、二人の貢献を称える銅像と公園が建てられましたとさ、めでたしめでたしで終わるのだった。


惜しむらくは作品中に二人がデュエットするというシーンがなかったことだ。実はエンディングではティファニーの歌が被さるのだが、二人のデュエットさえあれば完璧だったのに。パーティ・シーンでは、二人の取っ組み合いよりもデュエットを期待したファンの方が多かったはず。それが二人の往年の持ち歌だったりしたら拍手喝采だ。実はその点をコマーシャル中に出てきた二人も指摘しており、もし二人が歌うとなると、二人にたぶん多大なギャラを払わなければならなかったから? なんてことを言っていた。もしかしたらその通りだったからかもしれない。








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