Masters of Sex   マスター・オブ・セックス

放送局: ショウタイム

プレミア放送日: 9/29/2013 (Sun) 22:00-23:00

製作: ラウンド・トゥ・プロダクションズ、ティンバーマン/ビヴァリー・プロダクションズ

製作総指揮: ミシェル・アシュフォード、カール・ビヴァリー、ジョン・マッデン、サラ・ティンバーマン

原作: トマス・マイヤー

出演:マイケル・シーン (ウィリアム・マスターズ)、リジー・キャプラン (ヴァージニア・ジョンソン)、ケイトリン・フィッツジェラルド (リビー・マスターズ)、ニコラス・ダゴスト (イーサン・ハーズ)、テディ・シアーズ (オースティン・ランガム)、ヘレン・ヨーク (ジェイン・マーティン)、ボー・ブリッジス (バートン・スカリー)、ローズ・マキヴァー (ヴィヴィアン・スカリー)、ケイラ・マディソン (テッサ・ジョンソン)、アリソン・ジェニー (マーガレット・スカリー)、マーゴ・マーティンデイル (ミス・ホイチョウ)、ジュリアン・ニコルソン (リリアン・デポール)


物語: 1957年、セント・ルイスのワシントン・ユニヴァーシティ。ウィリアム・マスターズは非常に優れた産婦人科医であったが、同時に野心も大きく、後世に名を残したいと思っていた。彼が目をつけたのはセックスで、性科学という分野の第一人者になることを考えていた。ウィリアムは大学病院で働いていたヴァージニア・ジョンソンを助手に抜擢する。ヴァージニアはナイト・クラブで働いていたという経歴の持ち主で、学歴こそなかったが、人間性の観察というウィリアムが不得意な分野でこそ有能だった。しかし病院長のバートン・スカリーは、そういう恥知らずな研究を認めるわけにはいかないと、認可を拒否する‥‥


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Masters of Sex


マスターズ・オブ・セックス  ★★1/2

セックスを科学研究の対象にするのは、「愛についてのキンゼイ・レポート (Kinsey)」で描かれたアルフレッド・キンゼイことキンゼイ博士だけではなかったというのは、今回初めて知った。キンゼイは1948年と1953年のキンゼイ・レポートでこの分野に先鞭をつけたわけだが、男女間の性差、セックスのあり方に注目したとはいえ、実際のセックスそのものにはあまり踏み込んではいない。その分野にもっと突っ込んで研究したのが、ウィリアム・マスターズ、および彼の助手のヴァージニア・キャプランだ。二人はマスターズ&ジョンソンとして、ほとんど常に二人一組となって言及される。


日本ではこの分野では第一人者のキンゼイの名はわりとよく知られているが、マスターズ&ジョンソンはそれほど知られていない。しかしアメリカではキンゼイ並みかそれ以上によく知られている存在で、ジョニー・カーソンがホストを担当していた時代のNBCの「トゥナイト (Tonight)」に何度もゲストとして招かれ、ほとんどポップ・カルチャーのアイコン的存在だったそうだ。


セックスが科学的研究の対象になりにくいというのは、プライヴェイトで人があまり公にはしたくない事柄であり、協力が求めにくいこと、科学的に数値化することが難しいこと、等が挙げられる。先週何回セックスしましたか、勃起はどれだけ持続しましたか、オーガズムはどれだけ持続しましたかなんて訊かれても、返答に困る。時間を図りながらセックスする者なんてほとんどいないだろうし、それを気にし出したら、それこそ勃つものも勃たなくなる。


「愛についてのキンゼイ・レポート」でキンゼイ自身が、セックスは回数や時間や性器の大きさ等、数量化できる、だからセックスは科学の対象となりうるが、数量化できない愛は調査の対象とはなり得ない、と述べる節がある。それが的を得ていないことは、考えるとすぐわかる。なんとなれば、そのセックスをしたいという気分になる要因は、数量化できないからだ。その部分を切り離してセックスを考えてもそれに意味はないことは一般人には常識でわかっても、科学者にはわからない。


そしてセックスが科学になりにくいもう一つの理由として、そこに事実ではない部分が入り込む余地が大き過ぎるから、というのが挙げられると思う。実験の検証者が被験者のすぐそばにいて計測しているのでもない限り、実態はつかめないだろうが、そうすると被験者のセックスに大きく影響を与えることは明らかだ。そのためウィリアムはフッカーを雇い、自分は壁裏に隠れてストップ・ウォッチ片手に観察する。それでオーガズムに達するまでの時間は、なんて計測するのだが、その後フッカーに今回は早くイったね、と言うと、バカね、あれは演技よ、と言い返される。驚いたウィリアムがなんでそんなことをするんだと訊くと、そうすると客が早くイってくれるからだと答える。


要するにプロにとってはセックスは技術であり、駆け引きするものだ。被験者が常に正直に質問に答えてくれるとは限らないし、相手によっては観察者がそれを見抜くことは難しい。ウィリアムは腕のいい医者かもしれないが、実はそういう人間にあり勝ちだが、人情の機微には通じていない。ウィリアムの妻リビーは、二人が子供を欲しているのにもかかわらず妊娠しないが、それに対してウィリアムは、これが一番妊娠の確率が高い体位だと、横向きになった状態で後ろからほとんどなんの前戯もなく挿入してそれで終わりだ。そりゃ統計ではそれが最も妊娠しやすい体位かもしれないが、しかし、そりゃないだろうと思わざるを得ない。キンゼイといいマスターズといい、なぜこういう最もセックスの極意からかけ離れた人間がセックスを研究しようと考えるのか。あるいは、だからこそセックスを研究するのに適していたのか、それは天職だったのか。よくわからない。確かに、そういう人間だったからこそセックスという行為に振り回されることなしに研究できたということはあるかもしれない。


主人公ウィリアム・マスターズに扮するのがマイケル・シーンで、一時のトニー・ブレアに何度も扮していた時の印象がまだ残っているため、なんとなくブレアがセックスを研究しているような気分になる。一方のヴァージニア・ジョンソンに扮するのはリジー・キャプラン。最近ではFOXの「ニュー・ガール (New Girl)」に準レギュラーとして出ていた。


ボー・ブリッジスが病院長のスカリーを演じているのだが、番組第1回には、病院をクビになる女性事務員としてマーゴ・マーティンデイルが出ている。実はこの二人、今シーズンのCBSの新シットコム「ザ・ミラーズ (The Millers)」に夫婦役で出演している。ブリッジスなんて放送時期の重なる両番組でほとんど主演級のレギュラー出演だ。さらにスカリーの妻マーガレットを演じているのはアリソン・ジェニーで、ジェニーもまた今季CBSのシットコム「マム (Mom)」で、アル中の母として主演中だ。どいつもこいつもCBSのコメディに出てないといけないらしい。因みにショウタイムはCBS傘下のペイTVチャンネルだ。


先頃地域紙のメトロを読んでたらセックス調査関連記事があって、それによると現在80歳以上の4分の1が、昨年セックスをしたことがあると答えたそうだ。たとえ現在では少なくとも男性にはバイアグラという強い味方があったとしても、本当かと思わざるを得ない。うちの両親は今年80でまだ健在だが、既にもう何十年も前から寝室のドアが閉まっているのを見たことがない。科学としてのセックスの分析は、やはりまだまだ発展途上という気がする。










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