第74回マスターズ   ★★★1/2

2010年4月8日-4月11日、 ジョージア州オーガスタ
オーガスタ・ナショナル・ゴルフ・クラブ

5か月の沈黙を破ってタイガー・ウッズがコンペティティヴ・ゴルフに復帰する第1戦、並みのゴルファーだと出場すらできないトーナメントが復帰戦というのもいかにもウッズらしい。この復帰を早過ぎると見るか、ゴルファーなんだからゴルフやってればいいんだ、私生活なんか関係ないとするか、意見は分かれる。私としては、謹慎するくらいなら1年くらい本当にじっとしてから出てくれば世論も味方するんじゃないかという気がするが、しかし、本人が出るというなら、またこれまでのように、いや、これまで以上にエキサイティングなゴルフを期待する。


その注目が集まる初日、ウッズの8番パー5での第2打は右に逸れる明らかなミス・ショットだったが、こぶに当たって跳ね返ってグリーンに乗ってきてイーグル。続く9番パー4ではフェアウェイ左のほとんど林の中から30ヤードはフックさせてグリーンに乗せ、バーディ。11番パー4では右林に打ち込むが跳ね返って出てきてパー、15番パー5でもイーグルと、ツキもあれば実力のスーパーショットもあるなど、5か月のブランクをまったく感じさせない。CBS実況のジム・ナンツは、始まるまではウッズの活躍を見たいのは山々だが、週末まで駒を進めることはできても優勝に絡むのは、5か月もゴルフから遠ざかっていて勝負カンなしではいくらなんでも無理だろうと言っていたが、どうしてどうして、さすがウッズと言わざるを得ない。


結局ウッズは初日4アンダー68と、むしろ例年よりよいスコアで初日を終える。首位は6アンダー66のフレッド・カップルスだ。ウッズは2日目も辛抱、2アンダー70で通算6アンダー、フィル・ミッケルソン、アンソニー・キム、K, J. チョイ、リッキー・バーンズら4人と共に3位タイ。ちゃんと優勝に絡んでいるじゃないか。首位は8アンダーのリー・ウエストウッドとイアン・ポールターで、石川遼は18番パー4で、このパー・パットを沈めれば予選通過という20フィートのパットをすれすれで左に外した。入ったと思ったんだが。


3日目のクライマックスは、ミッケルソンのあわや3連続イーグルと思われた13番パー5から15番パー5までの3ホールに尽きる。13番イーグルは、まあわりとあるが、14番パー4も第2打を直接カップ・イン、15番もクリーク手前からのバック・スピンのかかった第3打があわやこれも入るかというところで止まった。3連続イーグルなんて、マスターズどころか、これまでのゴルフの全歴史で記録があるのか。


ミッケルソンはこの3ホールで5アンダーの荒稼ぎ、いきなり首位タイに躍り出る。17番パー4をボギーで一つスコアを落としたものの、この日5アンダー67、通算11アンダーで、12アンダーで首位のウエストウッドに1打差の2位、3位が8アンダーのチョイとウッズ。ウッズはパットが決まらず、ボギーをいくつも叩きながらのスコア。7アンダー5位にはカップルスが残る。優勝を狙えるのはここまでか。


最終日はウッズはいきなり1番パー4でティ・ショットを左に曲げ、ボギー。ウッズは5番パー4までに3ボギーの3オーヴァーで、早くもチャンスをなくす。ウッズは特に3日目、ミス・ショットをした時に悪態をついて汚い言葉を発していたのがよくカメラとマイクにとらえられており、これじゃ今イチファンのサポートを買えないと危惧していたのだが、実際にウッズがバーディをとったりしてもギャラリーの3分の1から4分の1は無関心という感じだった。むろん 依然声援を送っている者もいるが、ウッズに勝ってもらいたくないと思っていた者も多かったに違いなく、そのマイナスのパワーが影響したという感じがした。


それでも7番パー4の第2打を直接入れたイーグルから3ホールで4つスコアを縮めたり、15番のイーグルなどそれなりに見せ場もあったのだが、14番で8フィートからの3パットなんか、勝負を投げたという感じだった。それにしてもパットが決まらなかった。後半は完全に勝負を捨てたという感じがしたのに、それでも最終日3アンダーで回っているのがすごいとも言える。


一方カップルスは前半調子よく、これは来るかと思わせといて、12番でティ・ショットをクリークに落としてダブル・ボギーで万事休す。かつてマスターズを制した時は、あれがクリークに落ちずにぎりぎりで止まったのだが、今回はツキも今一つだった。代わって後半伸びたのがキムで、13番から16番までで5アンダーで首位に絡む。この日7アンダー65のベスト・スコアを叩き出した。チョイもしぶとく粘って一次は首位タイになるし、ウエストウッドも本調子に見えないながらも粘る。


しかし勝ったのは、この日5アンダー、ノー・ボギー、特にバック・ナインを4アンダーと最終的に16アンダーまでスコアを伸ばしたミッケルソン。ミッケルソンは12番でバーディを奪って単独首位になった後、13番では林の中からの第2打をピンそば5フィートにつけるスーパーショット、バーディは確実でイーグルも当然射程距離につけて後続に2打以上差をつけた時点で、9割がた勝負を決めた。ミッケルソンだって絶好調という風には見えなかったが、グリーン周りのショットのうまさと、クラッチ・パットをはずさなかったのが大きかった。これでミッケルソンもマスターズ3勝目。13アンダー2位がウエストウッド、12アンダー3位にキム、11アンダー4位にチョイとウッズ、9アンダー5位がカップルズだった。









 
 
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