ある時忽然と消えた者たちが、何年か後に再び姿を現す。しかも彼らは何年も前に姿を消した時と同じ姿形のままだった。という物語の設定で思い出すのは、4年前のABCの「レザレクション (Resurrection)」だ。他にも仏製映画・ドラマをリメイクしたA&Eの「ザ・リターンド (The Returned)」や、ちょっと前ではUSAの「4400 (The 4400）」なんてのもあった。「マニフェスト」は、設定としては既に手垢がついたという感じのこのジャンルに、また新たな趣向を持ち込んで製作された番組だ。
この設定が特に際立つのは、登場人物が幼い場合であるのは、論を俟たない。「マニフェスト」では、それが幼い双子の男女になっていて、10歳前後の姉弟の弟がある時姿を消し、次に姿を現した時、姉のオリーヴは15歳だが弟のキャルは10歳のままだったというのは、当事者にとって到底受け入れ難い出来事だろう。オリーヴから見た場合、キャルは死んだものとしてこの5年間過ごしてきたのに、次にキャルの姿を見た時、10歳の少年のままだった。
一方、キャルの立場から見た場合、ちょっと乗っていた飛行機の到着が遅れただけなのに、一夜明けて対面したオリーヴは5つも年上になって近寄り難いお姉さんになっていたというのは、これまた受け入れ難いに違いない。ただしここでの捻ったプロットは、キャルはほぼ治療不可能な病に冒されていて、余命半年と言われていたものが、5年後の世界では新しい治療法が開発されていて、新たな希望がもたらされる。親にとっては一見願ったり叶ったりに見える展開だが、そこは人間の感情が絡むと一筋縄では行かない。失った時間はあまりにも大きく、それを埋めることは容易ではない。
刑事として働いていたミケーラは同僚でボーイフレンドのジャレッドと喧嘩している最中の旅行で、帰ってきた時、ジャレッドはミケーラのベストフレンドと婚約していた。ベンとグレイスの夫婦は再び会えて喜んだのも束の間、グレイスにも新しい恋人ができていた。ベンとミケーラの母は亡くなっていた、等々、死んだものと思われていた者が生きて帰ってきても、それは必ずしもいい知らせであるとは限らない。
そしてさらに、旅客機に乗っていた者たちは、全員ある種の予兆や幻聴のようなものに悩まされていることが判明する。その声に従って行動すると、事故や危険、犯罪を回避できるのだ。なぜそれができるのか、もちろん誰もわからない。果たしてこれは誰かの、何らかの意志が働いているのか‥‥
と、謎が謎を呼ぶ展開を見せる。番組タイトルが「マニフェスト」となっている以上、ある時消えてまた姿を現した旅客機には、誰かの意図が働いていると考えるのが自然だと思うが、それがある誰かなのか、それとも人知を超えた存在なのかで、番組の手触りが大きく変わってきそうだ。私としては、頼むからあまり風呂敷を広げ過ぎないでくれと思う。
このくらいの謎できっちりと結末をつけてくれるのが好みだが、アメリカのこの手のミステリ・ドラマは人気が出るとどんどん謎が謎を呼ぶみたいな展開になって、収拾がつかなくなってくるという弊害がある。かつて人気となったABCのミステリ・ドラマ「ロスト (Lost)」が、こんな感じで途中ダレたのを思い出す。この手の番組は、正直言うと人気になっても1シーズン、できれば2シーズンで起承転結きっちりつけて終わったもらいたいと思うのだが、さてどうなるか。
