MJ: The Musical

MJ: ザ・ミュージカル

2022年8月24日  ニューヨーク、ニール・サイモン・シアター 

早いものでパンデミックになってからもう2年半以上が経つ。この間、映画館通いや観劇、コンサート等はすべてパスだ。かれこれ40年前、大学入学のために田舎から東京に出て以来、こんなに長い間映画館に行かなかったのは初めてだ。 

 

とはいえ、これはむろん、まだVCR (ヴィデオ・カセット・レコーダー) すら登場する前の昔の話だからだったからということもある。DVDですらない。その前の、ベータとVHSが争うヴィデオテープ競争の時代がやっと本格的に始まろうとする時代の話だ。 

 

家に高価なVCRを持っている者はまだ少なかったが、それよりもまだ未熟なメディアという印象のあった、それほど魅力的でないヴィデオ画像、およびめったに20インチ以上のTVを持っている者のいなかったブラウン管使用のTVの時代、正直言ってVCRにはそれほど惹かれなかった。元々見たい映画は映画館で見ていたし、TVは基本的にニューズとスポーツしか見なかったので、学生時代は持っていなかった。 

 

マイケル・ジャクソンのミュージック・ヴィデオ「スリラー (Thriller)」は、そういう私にVCR買おうかなと思わせた理由の一つだ。やはりMTVとマイケルは、映像メディアの概念を一変させた。私が秋葉原でTVを買い、近くの家電のノジマ (まだあるか?) に歩いて行ってVCRを買ったのは、それからしばらくのことだ。因みに私は当時、日本に来たマイケルのコンサートも見ている。ドームになる前の、屋外の後楽園球場だ。確かチケットは6千円だったと記憶している。 

 

いずれにしてもそんなわけで、長い間映画館にもシアターにもご無沙汰している状況に、先に女房の方が音を上げた。私の場合は、実は家見も悪くないと生来の不精、怠け癖が顔を出し、ストリーミングでほぼ劇場公開と時差なしで見れる作品が増えたこともあって、パンデミックが完全に収束するまでは我慢できると思っていたのだが、女房が、映画館もいいけどそろそろブロードウェイに行きたいと言い出し、私が、今だったら見たいのは「MJ」くらいしかないと言うと、とっととチケットを手に入れてきた。いつもは私と同じくらいは怠け者のくせに、好きなことになると行動が早い。私や女房に限らず誰でもこんなもんか。 

 

「MJ」は、そういう、私の若い頃を思い出させるミュージカルだ。1992年、アーティストとしての個人的な悩みや経済的な危機に直面するマイケルが、インタヴューを受けて過去を回想しながら「デンジャラス・ワールド・ツアー」を準備する様を描く。 

 

もう、幕が上がると昔よく聴いた懐かしのヒット・メロディが後から後から流れてきて、気分は一気に80年代だ。主演の彼もよくマイケルの特徴を捉えていて、しゃべり方や声までそっくり。もちろんダンスも。1幕目で「スリラー」がさわりだけしか使われなかったのだけは、まさかそれはないだろと思ったのだが、ちゃんと2幕目で盛大に聴かせてくれる。クライマックス近くのこの頃になると場内も乗り乗りで、全員拍手喝采スタンディング・オヴェイションだ。奈落からマイケルが飛び上がって登場すると、ついつい私も叫んでしまった。ティーンエイジャーに戻ったような気分だった。因みにマスクはしてたけど。客の半分くらいはマスクしてた。 






 

 

 





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