MADtv マッドtv
放送局: FOX
プレミア放送日: 10/14/1995 (Sat)
最終回放送日: 5/16/2009 (Sat) 23:00-0:00
製作: バー/スモール・プロダクションズ、クインシー・ジョーンズ/デイヴィッド・サルツマン・エンタテインメント、20世紀FOX TV
クリエイター: ジョー・シュニア、ファックス・バー、アダム・スモール
出演: ボビー・リー、ニコール・パーカー、キーガン-マイケル・ケイ、アーデン・マイリン、クリスタ・フラナガン、ジョニー・サンチェス、エリカ・アッシュ、マット・ブラウンガー、エリック・プライス、ローレン・プリチャード
内容: 14シーズン続いた深夜スケッチ・コメディ・ショウの最終回。
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「マッドtv」は、「マッド (MAD)」というアメリカの風刺コミック雑誌から派生したTVの深夜スケッチ・コメディ・シリーズだ。今シーズンが第14シーズンを迎えるから、アメリカの速いTVサイクルを考えるとかなりのヴェテランと言える。
とはいえ、オリジナルの雑誌名や番組タイトルくらいは誰でも知っていると思うが、実際に番組を見ている視聴者がどれだけいるかというと、はなはだ心もとないと言うしかない。もちろん14シーズンも続いているくらいだからそれなりに見ている視聴者もいるわけだが、コアのファンを除くと、かなりその知名度は限られるだろう。
「マッドtv」が始まった当時、土曜夜のネットワーク番組といえば、ほとんどNBCが誇る人気スケッチ・コメディ、「サタデイ・ナイト・ライヴ (Saturday Night Life (SNL))」がその時間帯を牛耳っていたといっても過言ではない。というかほとんどの部分今でもそうだ。なんてったってABCやCBSはその時間帯にはオリジナル番組を編成していない。
一方「SNL」は、夜11時のニューズが終わった後、11時半から始まる。これに対して、まだ若輩のFOXは放送番組が少なく (まあ今でもそうだが)、毎夜のニューズは10時から1時間枠で放送しており、その後の編成は系列局に任されていた。そこに目をつけたFOXは、「SNL」と同系統の番組を、「SNL」より30分早く、11時から放送することができたらかなり有利なのではないかと考えた。その結果誕生したのが、「マッドtv」だ。
しかしこれは、考えるに易く達成するには難い皮算用に過ぎなかったようで、番組は一部の若いファンを取り込むことには成功したけれども、それ以上の視聴者をも巻き込む人気番組にはなり得なかった。結局、そういう位置づけのまま14年経ってしまったと言える。
実際、「SNL」を裏番組に回して、では「マッドtv」のどこが面白いかというと、別に特に、と言うしかない。番組が始まった当初は私も何度か見ていたが、いつの間にか気がつくと、結局11時からはニューズを見て、11時半から「SNL」というパターンに逆戻りしていた。「SNL」だってつまらない回やスランプと言われたシーズンはあり、「マッドtv」の方が笑える回もあったりするのだが、それでも均すとやはり「SNL」の方が面白いと思えたり、自然にチャンネルを合わしてしまうところが伝統の力という気がする。それを覆すほどの力は「マッドtv」にはなかった。
また、「マッドtv」からは、番組の枠を超えて人気を獲得するパーソナリティが現れなかったことも痛かった。むろん「SNL」の場合、世界的に著名なスター/コメディアンを輩出できたのは、元々番組の知名度があったからということもあるが、しかし、それとて大元の一番最初はまったくゼロからの出発だった。そこからジョン・ベルーシ、ギルダ・ラドナー、エディ・マーフィ、ダン・エイクロイド、チェヴィ・チェイスなどというビッグ・ネイムが生まれてきたのだ。昨年、その「SNL」のそもそもの番組第1回の再放送を見た時大いに唸らされたのだが、30年以上も前の毒は今もまだ強烈で色褪せない。
現在でも「SNL」は、「30ロック (30 Rock)」での活躍等、一時期は名前を聞かない日はなかったほどの売れっ子になったティナ・フェイを筆頭に、「レイト・ナイト (Late Night)」の新ホストに就任したジミー・ファロン、コメディ「パークス・アンド・レクリエーション (Parks and Recreation)」主演のエイミー・ポーラー等の人気者を次々と輩出している。それと比較すると、出演者のリストを見て顔が思い浮かばない「マッドtv」の出演者陣は、やはり弱い。
ゲスト出演者も同様で、今シーズンはこれまでにジェリー・オコネルやセリーナ・ウィリアムス、ニーヨなんてそれなりのスターも出てはいるが、一方で「SNL」のジャスティン・ティンバーレイク、ビヨンセ、セス・ローゲン、ベン・アフレックといったアメリカ芸能界を代表する面々、サラ・ペイリン、マイケル・フェルプスといった時の人、さらに音楽ゲストの豪華さと比較すると、まったく霞む (1時間番組の「マッドtv」には音楽ゲストのコーナーはない。)
また、ライヴ放送の「SNL」と異なり、「マッドtv」は録画だ。これは当初は、放送禁止用語が連発するためという過激さをアピールする目的もあったろうが、いたずらにビープ音が頻出するからといって、それが続けば視聴者も慣れて、だから何としか思わなくなる。それよりも、いつぞやの「SNL」で、口パクで歌っているのがばれてスキャンダルになったアシュリー・シンプソンの時のように、ライヴだからこその臨場感や失敗談の方がよほど強烈で印象に残る。要するに、ここでも「マッドtv」は今一つ「SNL」に及ばない。
その「マッドtv」の最終回は、フレッド・ウィラードをゲストに迎えて、番組が恵まれない人々のためのチャリティ・テレソンを行っているという体裁で放送された。ここでもやはり、各々のスキットやギャグが特に面白いとはあまり思わなかったが、それでも最終回ということで、全部が新しいスキットではなく、後半は過去のベスト・スキットを集めて構成されていて、それが結構面白かった。さすがに14シーズンもあると、なかなか鋭いのもあるなという感じだ。
あまりにも放送禁止用語とセックス、ヴァイオレンス描写が多いために、それらのシーンをカットしたという体裁の「ザ・ソプラノズ (The Sopranos)」のパロディ、オバマとヒラリーの絡みミュージカル、ビールのクアーズの味の秘密等々も面白かったが、なかでも私が最も受けたのは、「オズの魔法使い」のパロディだ。
ドロシー、かかし、ブリキ男、ライオンが揃って歩いていくと、片足を失って有刺鉄線に絡まった黒人に遭遇する。それぞれが男が片足を失った理由を推測するのだが、ドロシー「酔って小屋の屋根から落ちたの?」、ブリキ男「鳥小屋に泥棒に入って犬に食いちぎられた?」、かかし「スキーして折った?」、ライオン「ニグロはスキーなんかしないよ」、となかなか強烈。
実は男は奴隷で、逃げようとして散弾銃で撃たれて片足を吹っ飛ばされ、そのためぴょんぴょん片足で跳びながら逃げてここまで来たことが判明する。それから片足でのミュージカル・ナンバーとなり、残念だけどあなたを助けることはできないわと黒人のほっぺにキスしたドロシーが男を欲情させ、そのまま二人は草むらになだれ込んで青カンという、なんともポリティカリー・インコレクトなスキットだ。
実は今シーズンの「SNL」でも、現ニューヨーク州知事で黒人のデイヴィッド・パターソンの真似をするギャグがある。パターソンは弱視であまり視界が利かず、厳密に区分すれば障害者とも言える。つまり黒人の障害者という二重の重荷を背負っているわけだが、それをパロディの対象にするのだ。目がよく見えないために、スキットの途中でいきなりパターソンがカメラのフレームの中にゆらゆらと入ってくるというギャグは、それを真似るフレッド・アーミセンが本当によくパターソンの特徴をつかんでいるためにそっくりで、最初見た時は、笑うというよりもぎょっとして思わず隣りの女房と顔を見合わせて、これ許されるのかと二人で唖然とした。
しかし、よく考えたらタブーを笑い飛ばすとか、やっちゃいけないと言われたことをやってみせるのは、それこそパロディの本質だったりする。それをしたらダメと言われたら、まずやってみるのが正しいコメディアンやホラー作家の資質なのだ。反骨のないところに本当のパロディはない。それを考えると、堂々と差別ギャグをかますこれらの姿勢は、非常に健全とすら言える。以前、英国の「モンティ・パイソン」で、白人が黒人の間に割って入り、大声で「ニガー」と叫んで逃げるという、当時 (1970年代) はこれまた言語道断のギャグを見たことがあるが、その姿勢と一緒だ。そういうことができる社会というのは、まだ大丈夫という気がする。
しかしいずれにしても「マッドtv」は、結局「SNL」との差を埋めることができないまま14シーズンが経ってしまったと言える。FOXは2006年には、「マッドtv」の後、零時からさらに深夜トークの「トーク・ショウ・ウィズ・スパイク・フェアステン (Talk Show With Spike Feresten)」を編成し、土曜夜のそれまではNBCが一人占めしていた時間帯に食い込む算段を立てたが、このほど「マッドtv」だけでなく、その「トーク・ショウ」もキャンセルが発表された。「SNL」の牙城は、簡単なことでは揺るがなかったようだ。
