放送局: ABC

プレミア放送日: 2/25 (Sun), 2/26/2001 (Mon) 21:00-23:00

製作: アライアンス・アトランティス、イン-モーションAG、ストーリーライン・エンタテインメント

製作総指揮: クレイグ・ゼイダン、ニール・メロン、エド・ガーノン

共同製作総指揮: ロバート・アッカーマン、ローナ・ラフト、カーク・エリス

監督: ロバート・アッカーマン

脚本: ロバート・フリードマン

撮影: ジェームズ・クレッサンティス

音楽: ウィリアム・ロス

編集: ドディ・ドーン

美術: ダン・デイヴィス

出演: タミー・ブランチャード (ジュディ・ガーランド(13-18歳))、ジュディ・デイヴィス (ジュディ・ガーランド)、ヒュー・ローリー (ヴィンセント・ミネリ)、ヴィクター・ガーバー (シドニー・ラフト)、マーシャ・メイソン (エセル・ガム)、ドワイン・アダムス(ミッキー・ルーニー)、スチュアート・ビック (アーティ・ショウ)、ジョン・ベンジャミン・ヒッキー (ロジャー・エデンス)、ソーニャ・スミッツ (ケイ・トンプソン)、アル・ワックスマン (ルイス・B・メイヤー)、シンシア・ギブ (ローナ・ラフトの声)


物語: フランシス・ガムは、2歳の頃からステージ・ママのエセルに連れられて姉妹と一緒にステージに立っていた。父はそんなに舞台にばかり出なくてもと思っていたが、実はエセルが子供たちを連れ回すのは、本当はゲイの気がある父に対する失望という理由もあった。フランシスは12歳になり、無事MGMのオーディションに合格、専属契約にサインして、名前もジュディ・ガーランドと改名する。ジュディは同期のミッキー・ルーニーと仲よくなり、持ち前の声で段々と人気を得ていく。


そして16歳になったジュディに、スタジオのボス、ルイス・B・メイヤーは「オズの魔法使い」の映画化権を獲得し、主人公のドロシーをジュディにやらせることを約束する。有頂天になるジュディだったが、しかし、当時ジュディなぞ足元にも及ばなかった人気絶頂のシャーリー・テンプルがドロシー役を欲しがったため、メイヤーは約束を破って映画化権を売ってしまう。


落胆するジュディだったが、仲間はジュディの味方をし、結局、最終的にドロシー役はまたジュディに帰ってくる。「オズの魔法使い」は大ヒットし、ジュディは押しも押されぬ大スターとなる。何の不満もないように見えたジュディだったが、しかし彼女はその時既に死去していた父のような、すべてを包み込んでくれる男性を求めていた。ジュディはプライヴェートではその後何人もの男性と結婚離婚を繰り返し、また、仕事では積み重なるプレッシャーに耐えるために、薬に頼るようになる‥‥


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つい先日、全米芸術基金 (National Endowment for the Arts) と全米レコード協会 (Recording Industry Association of America) が主催して、20世紀のアメリカを代表する曲を選出するというアンケートの結果発表があった。そのベスト・スリーは、3位がウディ・ガスリーの「我が祖国 (This Land Is Your land)」、2位がビング・クロスビーの「ホワイト・クリスマス」で、そしてその他の名だたるクラシックを抑えて見事1位に輝いたのが、「オズの魔法使い」でジュディ・ガーランドが歌うクラシック中のクラシック、「虹の彼方に (Over the Rainbow)」だった。確かにこの曲を聴いたことのない人間というのは、アメリカ人ではまず一人もいないだろう。世界を見渡しても、よほど文化鎖国をしている国でもなければ、この曲を知らないものはまずいないと思われる。


「ジュディ・ガーランド物語」は、そのジュディ・ガーランドの生涯を描く4時間のミニシリーズ・ドキュドラマである。ステージ・ママの指導を受け、2歳から舞台に立ち、1969年に47歳の若さで睡眠薬の取り過ぎによる急性中毒で死去するまでのガーランドの一生を描く。10代のガーランドを演じるのは、ソープ「ガイディング・ライト (Guiding Light)」出身のタミー・ブランチャード。成人してからのガーランドをジュディ・デイヴィスが演じる。


ガーランドは死ぬまでに5人の男性と結婚した。その中でも、同じMGMの秘蔵っ子監督、ヴィンセント・ミネリとの結婚、およびプロデューサーのシドニー・ラフトとの結婚とその破綻は、よく知られている。ミネリとの結婚では娘ライザ・ミネリを設け、ラフトとの結婚では、娘ローナと息子ジョーイを設けた。この番組はローナ・ラフトが98年に上梓した同名の本を映像化したものである。製作総指揮は、ABCで「シンデレラ」「アニー」等のミュージカルTV映画を製作して成功させたクレイグ・ゼイダンとニール・メロン。原作のラフトも共同製作総指揮として参加している。


ガーランドも他の多くのハリウッド・スターと同じように、薬漬けの一生を送った。他のスターと違うのは、それがコカインやヘロインとかのドラッグではなく、ほっておくとすぐに太る体質や、あがり症を抑えるための薬、あるいは睡眠薬だったということだが、いずれにしてもこれらの薬に依存しないではいられないようになり、結果として中毒症と様々な副作用、さらにそれを抑えるための薬の常用という悪循環に陥った。その上、リタイアとカムバック、そしてまた忘れられた頃に以前を上回るほどの成功でカムバック、過食症による過度の肥満、金持ちになったかと思えばIRS (アメリカの税務署だ) の手入れによって破産、豪邸に住みながら毎日コーンフレークを食って飢えをしのいだというガーランドの人生は、ハリウッド、というかアメリカ人好みのドラマティックこの上ないものだった。人々はまるでハリウッド映画を見るようにガーランドの現実の生活に注目していたのだろう。


10代のガーランドを演じるブランチャードは、ガーランドを演じるには上背が高すぎるという気がするが、それ以外は申し分ない。あまり似ているとも思えないのに、「オズの魔法使い」を撮るシーンになるとそっくりになってしまうのはなぜだ。また、彼女はジュディ・デイヴィスにもなんとなく似ており、おかげでデイヴィスが大人になったガーランド役として出てきても、違和感はそれほどない (まあ、まったくないわけではないが)。それと、ガーランドの最初の娘、ライザ・ミネリに扮する女優が、これは本当に本人にそっくりなんで笑ってしまった。あの垂れ目の具合といい、一瞬、本人が若作りして出てるのかと思ったくらいだ。似ているといえば、MGMのボス、ルイス・B・メイヤーに扮するアル・ワックスマンがこれまた本人によく似ている。ワックスマンはしかし、この番組の収録直後に亡くなったそうだ。合掌。


番組中で使用される歌の数々は、もちろんガーランド本人の歌の録音を使用している。ガーランド以外の人間の歌う「虹の彼方に」なんて誰も聞きたくないから、これはたとえどんなにデイヴィスが歌がうまかろうと、自分で歌うのは認められまい。「虹の彼方に」は、「オズの魔法使い」撮影の時だけでなく、一時は再起不能と噂されたガーランドが芸能界復帰を果たすステージでまたこの歌を歌うという、番組最大の見せ場にもなっている。ガーランドがリズムを崩して自分流に歌う「虹の彼方に」をフル・コーラスで聴かせてくれるのは4時間もの時間があるミニシリーズならではの特権であるが、そのほとんどをアップで結果的に口パクで歌うデイヴィスの表情もなかなかのものである。


その他にも「スター誕生」の演技でアカデミー賞確実と誰もが思ったその授賞式の日、出産のために病院でTVを見ているガーランド (デイヴィス) が、主演女優賞に「喝采」のグレース・ケリーの名前が読み上げられた時に一瞬放心する顔なんて、思わず笑ってしまうほど真に迫っていた。デイヴィスはやはりいい役者だ。今シーズンはまだ折り返し地点を過ぎたばかりだが、エミー賞のミニシリーズ/TV映画部門の主演女優賞は多分ほとんど彼女で決まりだろう。 そういえばデイヴィスは去年も「クーラー・クライメット (Cooler Climate)」で主演女優賞にノミネートされていたな。


番組内では、ほとんど芸能界をリタイアした時分にガーランドがぶくぶくに太ってしまうというシーンがある。そのシーンが、デイヴィスが演じているのは間違いないのにもかかわらず、あまりにもうまいメイクのためにほとんどデイヴィスに見えない。何度もテープを巻き戻して確認してみたが、それでもやはり確信が持てない。確かにこの特徴ある唇には見覚えがあるんだが、でも本当にデイヴィス? と、何度も首を傾げざるを得なかった。あんまりリアルにメイクするのも考えものだ。ガーランドは身長は5フィート (150cm) 弱しかなく、日本人の基準から見ても小さいが、最高に太った時は180ポンド (約80kg) あったそうだ。なるほど、ライザ・ミネリは母親からあの体質を受け継いでいるわけね。最近のライザって見る度に横に巨大化しているからなあ。


主演二人の演技の点ではほとんど文句のつけようがないほど完成度は高いのだが、所々でいきなりヴォイス・オーヴァーでローナの独白が入ってくるところがはっきり言って興ざめである。原作がローナが書いたものであるため、彼女の視点からのセリフが忘れた頃にいきなり挿入されるのだ。いったんは芸能界から消えたと思われたガーランドが、ステージで不可能と思われたカムバックを果たす。総立ちで熱狂する観衆。そこでいちいち「その日ママは伝説になった」なんてヴォイス・オーヴァーを入れるなよ (因みに声はローナ本人ではなく、シンシア・ギブが担当している)。見ればわかるのだ。


脇で特に印象に残るのは、シド・ラフトに扮するヴィクター・ガーバーと、ガーランドのステージ・ママに扮するマーシャ・メイソン。ガーバーはよく知られたブロードウェイ俳優であり、「アニー」でも自慢ののどを披露していたが、実在の人物に扮した今回はそのチャンスがなく残念。いずれにしてもガーバーはそういう本当の持ち味より、「タイタニック」での船の設計家として世界中に知られるようになってしまった。メイソンは、70年代にアカデミー賞主演女優賞に4度もノミネートされるなど一時演技派の代表だった印象があるが、いつの間にやら名を聞かなくなった。旦那さんのニール・サイモンが脚本を書いた作品にばかり出ていたから、それがなくなると自然活躍する機会が減ったようだ。最近見る機会がなかったので、最初出てきた時には彼女だと気づかなかった。彼女もまた体重の増えてしまったこと。CBSで放送されている「ジャッジング・エイミー (Judging Amy)」に出ているタイン・デイリーとすごく印象が似ている。


私はこの番組を見て、MGMのボス、ルイス・B・メイヤーが、いったんは獲得した「オズの魔法使い」の映画化権を、シャーリー・テンプルを擁するFOXに譲ろうとしていたということを初めて知った。もしそうなっていたとしたら、「虹の彼方に」を歌ったのはテンプルで、我々が今知っている「オズの魔法使い」とはまったく異なった作品ができあがっていたはずだった。テンプル主演の「オズの魔法使い」なんて、今となっては想像することすら不可能だが、それが歴史というものの面白さである。ちょっとした運命のいたずらで「オズの魔法使い」はガーランド主演に決まり、われわれが今知っている「オズの魔法使い」ができ上がった。それでも、「オズ」がなかったら、ガーランドはいったいどんな人生を歩むことになったんだろうか、ドロシー役を手に入れたガーランドは、果たして運がよかったのか悪かったのか、などとふと考えてしまう。そう思わせてしまうところが、この番組がよくできていることの証拠なんだろう。








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ジュディ・ガーランド物語   ★★★1/2

 
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