Late Night with Jimmy Fallon  レイト・ナイト・ウィズ・ジミー・ファロン

放送局: NBC

プレミア放送日: 3/3/2009 (Tue) 0:35-1:35

製作: ブロードウェイ・ヴィデオ、ユニヴァーサル・メディア・ステュディオス

製作総指揮: ローン・マイケルズ

製作: マイケル・シューメイカー

脚本: A. D. マイルズ

ホスト: ジミー・ファロン

バンド: ザ・ルーツ


内容: コナン・オブライエンの後を受け、ジミー・ファロンのホストで始まった新「レイト・ナイト」。


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NBCの人気深夜スケッチ・コメディ・ショウ「サタデイ・ナイト・ライヴ (Saturday Night Live: SNL)」のレギュラーだったジミー・ファロンは、1998年から8シーズンにわたり、ティナ・フェイと共に時事のニューズを茶化す「ウイークエンド・アップデイト」コーナーを担当していた。昨年、その「SNL」のプレミア・エピソードが再放送された時に、チェヴィ・チェイスが既に「ウイークエンド・アップデイト」に出演しているのを見て驚いたのだが、30年以上も前のそもそもの第1回から連綿として現在まで続いている人気コーナーを任されていたのだから、ファロン自身それなりに人気があったものと考えていいだろう。


とはいっても、そのファロンの相方を務めていたフェイの貢献も忘れてはならないのはもちろんだ。個人的な意見を述べさせてもらえれば、むしろこの時期の「ウイークエンド・アップデイト」は大半をフェイに負っており、ファロンは単にフェイに対して相槌を打っていただけというような印象がある。ギャグをかますというより、本人の人好きのするキャラクターという部分によってレギュラーとして居座っていたという印象の方が強い。


むろんそれはそれで得難い才能であることは確かではある。ただし、その後先輩のウィル・フェレルに倣って映画界に進出、「TAXI NY」や「2番目のキス (Fever Pitch)」みたいなそれなりに予算もかけたハリウッド映画でクイーン・ラティファやドリュウ・バリモア等の人気タレントと共演したが、ヒットせず、結局それきりになった。映画界からすっぱり声がかからなくなったそうで、つまりファロンは、好感度の高いキャラクターではあるが、スターではない。


その後ファロンの名をまた思い出したのは、彼の活躍でなく、彼がまったく活躍しないという逆の理由によってである。つまり、長らく相方を務めたフェイが製作主演するNBCのコメディ「30ロック (30 Rock)」で、「SNL」のその他の面々が大挙してゲスト出演する中、ファロンだけがいないというその不在によって、逆にそういえばファロンって今どうしてるんだという疑問がふつふつと頭をもたげてきた。あれだけ仲がよさそうに見えながら、実はそれは表面だけで、本当は仲が悪かったのか。だからフェイから声がかからなかったのか。昨年、共和党の副大統領候補サラ・ペイリンに酷似していることを利用してギャグを連発しまくり、時の人となったフェイとは対照的に、まったく名を聞かなくなったファロンの不在はなにがしかの興味を喚起した。


むろん、今ではそれが仲が悪かったからではなく、その時既にファロンは、コナン・オブライエンが西海岸に去った後の「レイト・ナイト」のホストが確定していたために、その準備に追われていたからという理由が判明している。たぶんその時点で、他番組への出演を制限する契約条項があったんだろう。それにどうやら映画界進出が不発に終わり、今後のキャリアの点で頭を悩ましていたファロンに「レイト・ナイト」ホストの声がかかった時、率先してやるべきだと奨めて励ましたのがフェイだったそうだ。なんだ、やっぱり仲はよかったんだな。


さて、オブライエンが去った後、ファロンがホストの新「レイト・ナイト」の放送は3月最初の月曜夜、つまり火曜未明から始まった。まず冒頭、控え室にいるファロンに時間だという声がかかり、ついでにオブライエンにも声がかかる。カメラがパンすると、まだ私物を整理中のオブライエンが控え室の中にいるではないか。ファロンが慌てて、今日からオレの番組が始まるんだというと、オブライエンは、まあティーヴォしとくよと答え、話の接ぎ穂を失ったファロンが、あんたはLAでジェイ (レノ) の控え室を使うんだよねと言うと、オブライエンはぎろっと、ジェイの番組はまだ続いているよと返し、ファロンは絶句する。なかなかいい出だしだ。


オブライエンは思い出したように、で、ゲストはどうなっているのと訊くと、ファロンは待ってましたとばかりに、今日はロバート・デニーロ、ジャスティン・ティンバーレイク、明日以降はキャメロン・ディアス、それにドリュウ・バリモア、となかなかのメンツを挙げ、これにはオブライエンも、ほう、それはすごい、で、来週はというと、今度はファロン、「サバイバー」第1シーズンのジャヴェイシと答え、これははっきり言って笑った。その第1シーズンの「サバイバー」にはまりまくりの私ですら、え、ジャヴェイシ、名はなんとなく覚えているが顔は覚えてない、誰だっけ、というくらいだ。普通一般の視聴者でジャヴェイシを覚えている者はまずいまいと断言してしまっていいだろう。番組が始まって2週目でゲストの枯渇か。なかなか笑えていいぞ。


しかし実は、プレミア・エピソードで最も面白かったのは、このつかみの部分だけだった。番組開始に先立ってファロンは結構長い間準備に時間を費やしており、番組の体裁をとった予行演習みたいなものもNBCのサイト内で提供していた。だからそれなりに準備は万端かと思ったのだが、やはり予行演習と本番とでは雲泥の差があるようで、声がかかりカーテンが開いてファロンがスタジオ内に出てきた瞬間から、もう一見して緊張しまくりなのが見てとれる。終始そわそわと落ち着かないしやたらと上唇をなめる。


冒頭のモノローグもはっきり言って不発で、本人もあまり受けていないと思っているから、それを解消しようともっと早口になって焦る。それが見ているこちらにも伝染するので、こちらまで緊張してくる。頼むからもうちょっとリラックスしてくれ、こっちまでどきどきしてくるだろ。その後のバンド、ザ・ルーツを従えた、ラップのリズムに乗っての時事ニューズのアナウンスは、冒頭のオブライエンを絡めたギャグを別にすれば最もできがよかった。問題は、そこからすべて下り坂になってしまったことにある。


だいたい、その後の「ターゲット・デモグラフィック: ブロンド・マザース」は、笑う笑えないというよりもさっぱりわけがわからず、頭をひねるしかない。芝刈り機やコピー機、金魚鉢を観客になめさせて10ドルを与える「リック・イット・フォー・テン」もまったく笑えない。うーん、こりゃまずい。


その後のゲスト・コーナーに入り、最初のゲストが話さなくてこの種の番組のホスト泣かせとして知られるロバート・デニーロというのは、もちろん当然ファロンも緊張してうまくしゃべれないだろうということを見越したカウンター・ギャグというか、ジョークの一種だろう。実際、特に話が弾むわけではないデニーロを相手に、なんとかしなくてはと焦るファロンというのは、ほとんど読み通りだったろうとは思うが、それがギャグになっておらず、いたずらにファロンがしゃべればしゃべるほど空回りするのを見るのは、ちょっと可哀想ですらあった。


だいたいトーク・ショウのゲスト・コーナーというのは、いかにゲストをしゃべらせるか、面白い話が聞けるかというところこそが勘所であるはずで、それがホスト自身がしゃべり倒していては話にならない。ゲストのデニーロが、間が開くことを怖れてとにかくあることないことしゃべり続けているファロン相手にふんふんと相槌を打っているのを見るのは、そりゃ本末転倒だろうと思ってしまう。ニューヨーカーのデニーロとしては、地元から発信のトーク・ショウをサポートする、くらいの気持ちだったと思うが、確かに彼が出たことで話題性はあったが、番組としてはファロンにはマイナスに働いたという印象の方が強かった。


その次のゲストのティンバーレイクになって、歳が近くて共通の話題があることもあって、ようやっと話が噛み合い出す。ここまできてやっとファロンも一と息というところか。音楽ゲストはヴァン・モリソンで、実は私はモリソンのことは、どうやら大物らしいということくらいしか知らない。私にとってはネコに小判か。


さてプレミア・エピソードを見ての感想は、ファロンは頑張っているというものだ。正直言ってあまり覚えていないが、オブライエンが最初に「レイト・ナイト」のホストとして登場した時よりは、断然ファロンの方がいいというのは言えると思う。プレミアのファロンは見ていてこちらも緊張したが、オブライエンが最初に「レイト・ナイト」ホストとして登場した時は、あまりに笑えなくて、それをどうしようもないオブライエンが痛々しくて、まともにTVを見ていられなかったという印象だけは覚えている。それに較べればファロンは大いに頑張ったと言える。


近年新しく深夜トークのホストになった者の大半は、既にホストとしてなんらかの経験があった。2002年の「ラスト・コール」のカーソン・デイリー、2003年の「ジミー・キメル・ライヴ」のジミー・キメル、2005年の「レイト・レイト・ショウ」のクレイグ・ファーガソン、2006年の「トーク・ショウ」のスパイク・フェアステンが近年新しく深夜トークのホストに就いているわけだが、デイリーはそれ以前はMTVの「TRL」のホストであり、キメルはコメディ・セントラルで「マン・ショウ」の共同ホストを担当していた。


ファーガソンは建て前上は素人だが、番組ホストとして選出されるまでに既にトライアルで番組ホストを実戦で何度も経験しており、ファロンのようにいきなりスタジオの観客の前で本番を迎えさせられたわけではない。その点では、ファロンと最も本番までの経緯が似ているのは、フェアステンじゃないだろうか (放送作家出身という点で、本当にフェアステンと経緯がそっくりなのはオブライエンだろうが。) とはいっても、FOXの週一の新深夜トークと、毎夜の歴史ある番組の新ホストとでは、その重さ、注目度が違うのはもちろんだ。ファロンに堅くなるなというのが無理だったかもしれない。


ニューヨーク・タイムズは、最初の週のファロンの「レイト・ナイト」を評して、ファロンよりもバンドのザ・ルーツの方が笑えた、と言っていた。残念ながらそれには同意せざるを得ないが、しかしファロンが本領を発揮するのはこれからだろう。実際、翌日ファロンが番組第2回に登場してきた時は、いきなり前日とまったく顔が変わってリラックスしており、何度も笑えたかはともかく、安心して見れた。とにかく初日をなんとか大過なくやり遂げたことで、肩の荷が降りたんだろう。ほとんど別人で、たった1日でこんなに変わるものかと驚いたくらいだ。因みにゲストはフェイとジョン・ボン・ジョヴィ、意外なゲストとしてニューヨーク市長のマイク・ブルーンバーグも来ていた。ボン・ジョヴィは歌ったわけではなく、音楽ゲストとして歌ったのはサンティゴールド。


番組も第2週目に入ると、ファロンはもうほとんどヴェテランのようで、いきなり「レイト・ナイト」がその他の深夜トークの中に入っても違和感なく、ちゃんと自分の場所を占めているような感じになった。オブライエンの「レイト・ナイト」が定着するまで数年はかかったことを考えると、この進歩は著しい。実は私はファロンが在籍中の「SNL」を見ている時、ファロンはフェイあってこそだなという印象を持っていた。しかもその「SNL」を別にすれば、ファロンがなんらかのホストをしたのは、いつぞやのMTVの「ムーヴィ・アウォーズ」くらいしか記憶になく、それも上出来とは言い難かった。それがあっという間に「レイト・ナイト」のホストに違和感なく収まっている。元々人好きのするキャラクターだ、こういう仕事こそ向いていたのかもしれない。「レイト・ナイト」と「レイト・レイト・ショウ」、それに「ジミー・キメル」が三つ巴の争いをする零時半以降の深夜トークのバトルが面白くなってきた。








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レイト・ナイト・ウィズ・ジミー・ファロン   ★★1/2

 
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