Late Night with Jimmy Fallon   レイト・ナイト・ウィズ・ジミー・ファロン

放送局: NBC

プレミア放送日: 3/3/2009 (Tue) 0:35-1:35

最終回放送日: 2/8/2014 (Sat) 0:05-1:05

製作: ブロードウェイ・ヴィデオ、ユニヴァーサル・メディア・ステュディオス

ホスト: ジミー・ファロン

バンド: ザ・ルーツ


内容: NBCの深夜トーク・ショウのホストが代わる最後のエピソード。


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もちろんジミー・ファロンが「トゥナイト」に移る前の最後の一週間について書こうとしているのだが、しかし、それに勝るとも劣らない電撃発表があった。むろんデイヴィッド・レターマンの来年の引退発表に他ならない。今すぐの引退ではなく、レターマンの「レイト・ショウ (Late Show)」が最終回を迎えるのは来年2015年なのだが、これが大きなニューズだった証拠に、「レイト・ショウ」を放送するCBSを筆頭に、各ネットワークはトップ・ニューズでこれを報じた。視聴率争いでは常にジェイ・レノがホストの裏番組「トゥナイト (Tonight)」の後塵を拝していたとはいえ、30年以上におよぶ深夜トーク・ショウのホストとしては文句なしに最長、そのレターマンの引退発表が業界に与えた衝撃は小さくなかった。レノが「トゥナイト」を降りたばかりでこれだ。


その「トゥナイト」の新ホストに就任するファロンは、「トゥナイト」に移る一週間前に、現ホストの「レイト・ナイト」 の最終回を迎える。思えば、ファロンが5年前に「レイト・ナイト」ホストに就任してから、あっという間だったような気がする。それが今では既に深夜トーク界の中堅どころだ。今でもよく覚えているが、「レイト・ナイト」のプレミア・エピソードは、大任ということでガチガチに緊張したファロンが、早口になって受けずに空転しまくった。それを思えば隔世だ。


さて「レイト・ナイト」が最終回を迎える最後の週は、当然のように総集編の体裁をとった。レノの「トゥナイト」の場合は、前回いかにも総集編らしい総集編を組んでいたこともあり、今回はただ毎回そういうコーナーを設けて、以前のクリップを紹介しただけだった。しかしファロンの「レイト・ナイト」が過去を振り返るというのは初めてのことでもあり、火、水、木の3日間の放送は、本当に過去のクリップからの抜粋だけをファロンが紹介するという体裁をとった。


2/4 (火): ミュージカル・スケッチ総集編

2/5 (水): デジタル・オリジナル総集編

2/6 (木): ゲスト・コメディ総集編

2/7 (金): ゲスト: コリン・ファレル、クリス・プラット。音楽ゲスト: 2チェインズ

2/8 (土): ゲスト: アンディ・サンバーグ。音楽ゲスト: ザ・マペッツ


こうやってまとめて見ると、本当にファロンは音楽が絡むと冴えるのがよくわかる。これはこれまでのどのトーク・ショウのホストと比しても遜色ない得難い才能だ。あれだけ失敗しまくったプレミア・エピソードでも、音楽ギャグ重視のその萌芽は、ラップのリズムに乗せたニューズ・ジャムで、既に現れていた。


その後も印象的な音楽スキットは目白押しで、だからこそわざわざそういう音楽ギャグだけを集めて総集編を作ることも可能だ。バック・バンドのルーツの面々が絡むこともあれば、他の音楽ゲストでスキットを作ることもある。盟友のジャスティン・ティンバーレイクが登場することも多い。


その中でも特に印象に残っているのは、カーリー・レイ・ジェプセンとルーツを交え、おもちゃの楽器で歌った「コール・ミー・メイビー (Call Me Maybe)」、御大ブルース・スプリングスティーンの真似をしていたら、本人が登場して一緒に歌った「ボーン・トゥ・ラン (Born to Run)」の替え歌「クリス・クリスティ・ブリッジゲイト・スキャンダル」は、現ニュージャージー州知事で、共和党の次期大統領候補でもある大デブのクリス・クリスティが、権力を濫用してマンハッタンとニュージャージーを結ぶジョージ・ワシントン・ブリッジの料金所を閉鎖し、交通の大混乱を巻き起こした事件を皮肉ったものだ。後でこのことがばれて、クリスティは大統領候補どころか知事辞職に追い込まれかねないほど槍玉に上げられた。


敬虔なクリスチャンとして知られるNFLのティム・ティーボウとデイヴィッド・ボウイを掛け合わせたティーボウイに扮して歌ったボウイの「スペース・オディティ (Space Oddity)」の替え歌は、神様があんまりオレばかりに頼るなとティーボウをうざったがるもので、これまた話題になった (QBのティーボウは、タッチダウン・パスが通った後、必ず片膝を地面について神に感謝の祈りを捧げるポーズ (ティーボウするという動詞にまでなった) で知られる。) それ以外にも、ティンバーレイク、ラグタイム・ガルズを交えた「バーバーショップ」ヴァージョンのティンバーレイクの「セクシーバック (SexyBack)」、レディスミス・ブラック・マンバーゾと共にアフリカのリズムに乗せてベン&ジェリーのアイスクリームのフレイヴァーを歌った替え歌等、記憶に残るものは多い。


しかしなんといっても特筆すべきは、いよいよレノが辞めるということが正式に発表され、レノとファロンの仲はと取り沙汰され、うるさくなった外野を鎮静化させるために作ったスキットで、この日、レノの「トゥナイト」が終わった後、コマーシャルに行かず、カメラはそのままレノを追う。楽屋に引っ込んだレノが電話をかけた相手はファロンで、渦中の二人が曲に乗せて心中の思いを歌い上げる。曲はもちろん「ウエスト・サイド・ストーリー (West Side Story)」から、「トゥナイト」だ。こいつは本気で笑った。レノの場合はたぶん歌は吹き替えだったと思うが、しかしうるさい外野を黙らせるに充分のインパクトがあった証拠に、その後この手のゴシップ的ニューズはまったく聞かなくなった。


そしてもう一本非常に強く記憶に残っているのが、マンハッタンの摩天楼を断崖絶壁に見立て、ビルの屋上からファロンとブラッド・ピットがヨーデルでコミュニケイションを図るというスキットだ。なぜかヨーデル、意味もなくピット、セリフなし字幕付きというこのスキットも、また大いに笑わせてくれた。


そんなこんなで最終回のゲストは、ファロン同様NBCの「サタデイ・ナイト・ライヴ (Saturday Night Live)」出身で、現在FOXで「ブルックリン・ナイン-ナイン (Brooklyn Nine-Nine)」に主演しているアンディ・サンバーグ。「SNL」繋がりで、ティナ・フェイ、エイミー・ポーラー辺りが最後のゲストくさいと思ってたんだが、ま、二人共何度も呼ばれて来てるし、あまり出しゃばり過ぎても双方に益はないという判断なのかもしれない。


そして最後の音楽ゲストは、人間ではなくマペッツの面々で、彼らと共にファロンがドラムを叩きながら、ザ・バンドの「ザ・ウエイト (The Weight)」を歌う。ファロンはちゃんと人とハモって歌えるだけでなく、ピアノやギターを弾いたりブルース・ハープも吹く。ドラムも叩けるのか。本当に音楽では多才なやつだ。


そして演奏を終えたファロンは、ステージを降りてステュディオを出て行く。廊下を歩いて向こう側のステュディオのドアには、「ザ・トゥナイト・ショウ・スターリング・ジミー・ファロン (The Tonight Show Starring Jimmy Fallon)」と書かれている。ドアを開けると、そこには既に「トゥナイト」のために待機している仲間たちがいて、諸手を上げてファロンを歓迎する。「レイト・ナイト」は終わったのだ。










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Late Night with Jimmy Fallon


レイト・ナイト・ウィズ・ジミー・ファロン  ★★★

 
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