Late Night with Conan O’Brien  レイト・ナイト・ウィズ・コナン・オブライエン

放送局: NBC

プレミア放送日: 9/13/1993

最終回放送日: 2/21/2009 (Sat) 0:35-1:35

製作: コナコ、ブロードウェイ・ヴィデオ、ユニヴァーサル・メディア・ステュディオス

製作総指揮: ローン・マイケルズ、ジェフ・ロス

ホスト: コナン・オブライエン

バンド・マスター: マックス・ワインバーグ


内容: NBCの人気深夜トーク・ショウ「レイト・ナイト」のコナン・オブライエンがホストを担当する最後のエピソード。


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かれこれ7年前、まだ「ジミー・キメル・ライヴ」が始まる前、ABCは深夜トーク・ショウを一本も擁していなかった。当時若者が見ている深夜トークはスポンサー受けがよく、金のなる木という見方があったため、ABCは根強い固定ファンのいる硬派のニューズ番組「ナイトライン」を終わらせてでもこのジャンルに参入したかった。


しかし地道に根回ししてそれなりの経験を積んだパーソナリティを養成するよりは、既に経験のあるホストを他チャンネルから引き抜いてきた方が手っとり早いと安易な道をとったABCが、アメリカの深夜TV界にどんな激震をもたらし、そしてどんなに手ひどいしっぺ返しを食らったかはこちらに詳しく書いたので繰り返さないが、いずれにしても、これで他のネットワークも自社番組のホスト引き抜かれにはほとんど神経過敏になった。当時深夜トークには最も力を入れていたNBCが過剰反応的に自社ホストのガードに走ったのも、あながちゆえないことではなかった。


さすがに当時も今もアメリカの深夜TV界で最も人気のある「トゥナイト」ホストのジェイ・レノを引き抜こうとは、ABCも考えなかったしNBCもその可能性は考えなかった。だがその直後に編成されている「レイト・ナイト」のコナン・オブライエンだとどうか。デイヴィッド・レターマンに愁眉を送ったABCならやりかねんと、NBCが疑心暗鬼になったのもわからないわけではない。


そこでNBCがオブライエンを今後とも自社内にキープすべく採った方策が、2009年限りでレノを「トゥナイト」から引退させ、オブライエンをその後のホストに就任させることを約束するという、とんでもない提案だった。レノは昔も今も人気ナンバー・ワンであり、今後も安泰が約束されているといっても過言ではない。昨年の脚本家組合ストの時に一人で乗り切った実力を見ても、人気、実力、共にまったく衰えていない。今がピークとすら言える。あと20年楽勝でやれる。


そのレノを強引に引退させてまでオブライエンを「トゥナイト」ホストにつける意味があるのか。私の意見ではほとんど自殺行為にしか見えなかった。なんとなればレノとオブライエンのギャグの質はかなり異なる。大衆受けするレノに較べ、癖のあるオブライエンのギャグは、今も昔も視聴者を選ぶ。今でこそ昔に較べややあくが抜けて大衆受けする要素も増したが、それでもまだまだだと思う。レノ後の「トゥナイト」でオブライエンが成功するという保証はどこにもないのだ。


「レイト・ナイト」にはいくつかのレギュラーのギャグ・コーナーがあるが、その一つ「マスタベイティング・ベア」、つまり「オナニーするクマ」コーナーなんてのは、まず1時間放送時間の早まる「トゥナイト」では使えまい。だいたい、ほとんど何が面白いのかよくわからない。「イン・ジ・イヤー2000」コーナーも同様で、私はくすりともできない。その他のコーナーも大同小異で、正直言って、「レイト・ナイト」はあまり笑えない。


逆に言えば、これが現在なら即座にキャンセルされたに違いない番組をめったにない忍耐でここまで成長させてきたのに、とんびにアブラゲさらわれる形でABCに持っていかれるかもしれないとなったら、NBCは何が何でもオブライエン残留に固執するだろうというのは非常によくわかる。しかしそれが必ずしもいい結果を生むとは限らない。私の意見では、むしろそのことが裏目に出る可能性の方が高いのではないかという気がする。


一方で、同様に癖があり、視聴者を選んだレターマンの「レイト・ショウ」が、レノの「トゥナイト」を裏番組に回してもそれなりに健闘しているのを見ると、オブライエンもうまくやっていけるかもしれないとも思う。微妙なアジャストは明らかに必要だが、これまでに培った経験は決して無駄にはなるまい。いずれにしてもこればっかりは今夏、オブライエンの「トゥナイト」が始まってみないことにはわからない。すべてはそれからだ。


とまあそういうわけで、長らく親しんだニューヨークのロックフェラー・プラザのスタジオから西海岸のLAに越すことになるオブライエンは、この2月20日 (正確には2月21日未明) 放送分が番組最終回ということになった (番組自体は再放送が翌週いっぱいまで続いた。) 特に最後の1、2週間は、番組はほとんど総集編のような形で、過去の番組からの選りすぐったクリップ、およびオブライエン出立を祝うセレブリティ・ゲストの出演が相次いだ。


また、最後の1週間は、オブライエンがもう使うこともないからと、斧やハンマーでスタジオ内のセットを次々に破壊、毎日少しずつその破片をスタジオ内の観客にプレゼントするというパフォーマンスも行われた。特に最終回はスタジオ内に小型の工事用車両を導入し、ロープを巻きつけて柱を倒すことまでやっていた。破壊行為というのはエキサイティングだからスタジオ内の観客も喜んでいたが、しかしそうやってもらったガラクタに過ぎないセットの一部は、帰り際にそこいらのゴミ箱に捨てられたのは賭けてもいい。


最終回に最初に録画で登場したセレブリティ・ゲストはミュージシャンのジョン・メイヤーで、メイヤーはお祝いと称してオブライエンに「L.A.’s gonna eat you alive (LAはあんたを生きながらにして食べちゃうぞ)」という歌をプレゼントする。ところでメイヤーって、ああ見えてキャメロン・ディアスとかジェシカ・シンプソンとかジェニファー・アニストンとか、名だたるシンガー、女優と付き合ってしかも振っているという、実は結構なプレイボーイだ。男はやっぱり顔じゃなくて才能だよなと思うのであった。


その次に登場したのはウィル・フェレルで、実はその翌日にHBOで放送が予定されていたスタンダップ特番の宣伝も兼ねて、本人としてではなく、ジョージ・W・ブッシュとして登場して帰っていった。なんつーか、単純にオブライエンをねぎらいに来ているわけじゃないというところが、アメリカのショウビズ界だなあという気にさせる。今ではアメリカ唯一の売れっ子という感じのするフェレルにしても、折々の宣伝は欠かせないということらしい。


その次にやってきたのが、番組が始まった当初にオブライエンの共同ホストという役回りで数シーズンを一緒に過ごしたアンディ・リクター。正直言ってリクターの存在は、「レイト・ナイト」の最初の数シーズンが面白くなかった理由の一つでもあると私は思っているのだが、まあいいか。さすがに出演した回数があれだけあると、リクターが絡んでいてもそれなりに面白いクリップは集められる。


最後の音楽ゲストはザ・ホワイト・ストライプスで、「ウイアー・ゴーイング・トゥ・ビー・フレンズ (We’re going to be friends)」を歌う。彼らにしては結構湿り気のある歌で、当然最終回ということを踏まえた選曲だろう。オブライエン自身のリクエストかもしれない。しかし、二人共多少肉がついたというか、歳とった。あの時代錯誤のプリンス・プリンセスが、普通のおじさんおばさんみたいになっちまった。


番組の最後は、オブライエンが延々と10分以上時間を費やして番組関係者に謝辞を述べた。最後に一発高笑い的な大きなギャグを期待していた私としては、どちらかというと期待外れの幕切れだが、考えたら17年間の締めくくりに関係者に礼を言うことは必要なのかもしれない。しかし、かのジョニー・カーソンが「トゥナイト」を辞める時ですら、数十年分の謝辞を確か1分程度に簡潔にまとめて終わりだった。むしろその方がプロという感触を強く受けた。これはNBCのワールド・ニューズの重鎮トム・ブロコウが「ナイトリー・ニューズ」を去る時にも、ABCのピーター・ジェニングスが「ワールド・ニューズ・トゥナイト」でガンの告白をした時にも、同じくABCのテッド・コッペルが「ナイトライン」を去った時にも言えた。あれらのあっけないくらいの潔さに較べると、やはりオブライエンはまだ青いという気がする。


たぶん結構感激屋のレノも最後は長い挨拶を述べるかもしれず、レターマンならさらっと行ってくれるかという気はしないでもないが、いずれにしても、笑えないドライなギャグでこれまでやってきたオブライエンが、私の知らない人々を持ち上げて真面目に礼を述べてもなあ。これがアカデミー賞受賞セレモニーなら、5分以上前に音楽鳴らされて退場を強制されているぞ。数年前のエミー賞セレモニーで、長すぎるスピーチをするなと散々脅かしていたホストはあんた自身じゃなかったのかと、思わず突っ込みを入れたくなってしまった。自分の番組なら構わないのか。


さて、レノの「トゥナイト」は5月に最終回を迎え、オブライエンがホストの新生「トゥナイト」は、6月から放送予定だ。オブライエンなき後、ジミー・ファロンが後を継いだ新「レイト・ナイト」も既に放送は始まっている。それで「トゥナイト」を去るレノがどうなるかというと、実はこちらは今秋からなんとNBCでプライムタイムにデイリーのトーク・ショウを持つことが決まっている。最初、貧乏くじを引いたのはレノと思えたところ、最終的に実をとったのはレノだった。


というのが現時点での展開だが、実際に予定されている番組がすべて始まるまで、またどう転ぶかわからないのがアメリカのメディアの怖ろしいところだ。まだまだアメリカ深夜トーク界の転換期は決着を見ていない。レノだってオブライエンだって、新天地で成績がとれなければどういう扱いを受けるかわかったもんじゃない。そういう世界で何年何十年と忍耐強くホストという業務を遂行していけることこそが、ウィットに富んだ受け答えをすることよりも大きな、彼らの最も重要なホストとしての資質だという気がする。








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レイト・ナイト・ウィズ・コナン・オブライエン   ★★1/2

 
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