Larry King Live   ラリー・キング・ライヴ

放送局: CNN

プレミア放送日: 6/3/1985 (Mon)

最終回放送日: 12/16/2010 (Thu) 21:00-22:00

ホスト: ラリー・キング


Piers Morgan Tonight   ピアース・モーガン・トゥナイト

放送局: CNN

プレミア放送日: 1/17/2011 (Mon) 21:00-22:00

ホスト: ピアース・モーガン


内容: CNNの長寿インタヴュウ番組「ラリー・キング・ライヴ」の最終回と、その後を継いだ「ピアース・モーガン・トゥナイト」。


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ラリー・キングは、CNNの顔と言ってもいい存在だ。CNNだけではなく、アメリカのジャーナリズムを代表するようなパーソナリティとも言える。キングの代名詞と言えるパンツのサスペンダー、そしてデスクの上に心持ち身を乗り出し、組んだ両腕の肘をついて、相手の目を見るのではなく、むしろ目をそらしながらも身体全体で相手の話を聞いているというようなキングが確立した独特のインタヴュウ・スタイルは、視覚的に印象的で目に焼き付きやすい。


インタヴュウ番組の「ラリー・キング・ライヴ」では、キングは多くをこの姿勢で相手の話を聞くことに費やす。キングの眼は大きくて鋭い。それで見つめられると逆に相手が圧迫感を感じてしゃべれなくなることもあるかもしれない。このスタイルはそれに対応するために編み出した、キング流のインタヴュウ技術なのではないかと思う。特に近年は歳とって肉が落ちてきたもんで、よけいに眼光鋭しという印象が強調される。


「ラリー・キング・ライヴ」では、丸々1時間たっぷりある時間のほとんどを、相手を話させることに仕向ける。キングはできるだけ話の腰を折らないように、うんうんと相槌を打ったり、話の収拾がつかなくなってくると方向修正を試みたりはするが、とにかくなるたけ口を挟まないでいることを信条としていることは、傍目で見ていてもよくわかる。


いつぞやキングは近年のトーク・ショウに対し、結局彼らはゲストを呼んでおいて自分のことしか話していない、と苦言を呈していた。つまり「ラリー・キング・ライヴ」は、いかに相手を自発的にしゃべらせるかということが眼目にある。キングは徹底して聞き役なのだ。一対一のインタヴュウにおいては、相手の話をまずは聞くことが最も重要ということが、番組を見ているとよくわかる。聞き上手こそよいインタヴュウの第一歩だ。


とはいっても、何事にもスピードが求められる近年の時流において、キングのこの流儀が時にかったるいという印象を与えることも否定できない。一般的な視聴者は、特にインタヴュウイーがよく知らない人物である場合、1時間も律儀に付き合いはしないだろう。近年の番組の視聴率の低下は、そのことを如実に物語っている。


一方、私生活においてはキングはかなり艶福家、というとなんだが、女性関係が派手、というのとも違うかもしれないが、何度も結婚離婚を繰り返している。人の結婚した回数をわざわざ調べるという気にも到底ならないので朧ろな記憶で言うのだが、確か7回結婚離婚して、今は8回目に結婚した相手と暮らしているはずだ。既に80に手が届くところまで来ているキングに対し、相手の女性はまだ40代くらいに見える。


この年の差はかなり大きい。そのキングより年上で、先頃これまた50歳くらい年下の女性と何回目かの結婚をしたヒュー・ヘフナーは、あんたはセックスできるのかという無礼な芸能専門レポーターの質問に対し、ベストを尽くしているという感動的な答えを返していたが、同様の疑問はキングにもついて回る。あんたはそれだけ歳の離れた妻と、夜はどうしているのか?


むろんキングにそういう質問をぶつけるやつはいないが、しかし答えは意外なところから現れた。キングの妻が浮気しているという事実がすっぱ抜かれたのだ。自分がゴシップ記事ネタになってしまったキング、しかもなお悪いことに、キングの妻の浮気相手が芸能ニューズに出演して、彼女からキングを殺してくれと頼まれた、と告白した。こうなると、もう立派なスキャンダルだ。


自分の番組よりも自分がスキャンダル・ネタとなることで注目を浴びたキング、心底嫌気が差したのは間違いあるまい。自分の番組も視聴率不振で喘いでいるところにもってきて、泣きっ面にハチだ。たぶんCNNからも番組のキャンセルを仄めかされていたと思うが、ここへ至ってもうこの辺が潮時だと思ったのだろう、昨夏、今年限りで番組を終えると発表した。


キングは番組最終回に先立つ11月に、TBSの「コナン (Conan)」のプレミア・エピソードのオープニング・ギャグに天使の羽をつけて現れ、コナン・オブライエンにケーブルで番組を持つんだと示唆していた。天使というよりは妖怪という容貌のキングの格好がまず笑えた。しかも自分の番組はやがて最終回を迎えてしまう。ケーブルの次世代を形作っていくだろうオブライエンにバトン・タッチという気もなくはあるまい。このキングの登場は、意外で非常に受けた。


さて、12月の番組最終回は、まずスタジオにビル・マーと「アメリカン・アイドル (American Idol)」ホストのライアン・シークレストが登場しひとしきり歓談、その合間合間にヴィデオではアーノルド・シュワルツネッガーやバラク・オバマ大統領、ビル・クリントン前大統領、リージス・フィルビン、ドナルド・トランプ等が顔を見せる。そしてニューヨークからの中継で顔を揃えているのは、ケイティ・コーリック、ブライアン・ウィリアムス、ダイアン・ソウヤー、バーバラ・ウォルターズの4人だ。


おおう、これはすごい。現ネットワークのワールド・ニューズのアンカー3人プラス・ウォルターズという、アメリカのニューズを支える顔の揃い踏みだ。この4人が顔を揃えるという機会が、社会の一大事以外にもあったのか。それともこれが社会の一大事か。今ここに爆弾を落とせば、アメリカのTVジャーナリズムは当分機能しなくなるだろうなんて考えが頭をよぎる。コーリックはキングをねぎらうポエムを朗読。うまいもんだ。スタジオにはその後「ドクター・フィル (Dr. Phil)」ことフィル・マグロウが顔を見せ、トニー・ベネットが手向けの歌を歌う。


驚いたことには、スタジオには妻と二人の息子も顔を見せた。どうやらすったもんだの挙げ句、妻とは元の鞘に収まったらしい。愛情のためというよりお互いの欲得や計算が働いたのだろうと邪推するが、夫婦間のことなんか他人にはわかりようもない。本人たちが納得しているなら他人が口出しする問題でもないか。しかし、二人の息子は共に10歳くらいで、ということはキングが70になる手前くらいでできた子供だ。見習わんといかんと感心する。


キングは「ラリー・キング・ライヴ」こそ最終回を迎えるが、ジャーナリズムから引退したわけじゃない、CNNにも今後も顔を見せるしスポーツ中継もあると、自分がいなくなるわけじゃないことを念押ししていた。これはこれまた先頃、キング同様アメリカTV界の長老格であるリージス・フィルビンが、長年やっているABCの朝のトーク・ショウ「リージス・アンド・ケリー (Regis and Kelly)」を今季限りで降りると発表、するとマスコミが挙ってフィルビンがもう業界からいなくなってしまうように書きまくったので、そうならないように釘を刺しておいたのだろう。番組は去るが、業界から去るわけではない。


さて、キングの跡を継いだピアース・モーガンは、アメリカでは「アメリカズ・ガット・タレント (America’s Got Talent)」と「セレブリティ・アプレンティス (Celebrity Apprentice)」というNBCの二つのリアリティ・ショウでお馴染みだ。「タレント」は近年の夏の定番番組となっているタレント発掘番組で、モーガンはシャロン・オズボーン、ハウイ・マンデルと共に3人のジャッジの一人だ。「アプレンティス」では、最初のセレブリティ・ヴァージョンで見事最後まで勝ち抜いて優勝を果たした。ちなみにその時最後までモーガンと優勝を争ったのが、ブラヴォーが編成した「ザ・リアル・ハウスワイヴズ・オブ・ニューヨーク (The Real Housewives of New York)」に出演していたベセニー・フランケルだ。


モーガンは英国人であり、「アメリカン・アイドル」のサイモン・コーウェル同様、歯に衣着せない辛辣な意見やジョークが売りだ。とにかく英国人というのは皮肉屋が多いのは事実であり、モーガンも「タレント」である時出演者に向かって、あんたは本当にバカか、とマジに言っているのを見たことがある。アメリカ人ジャッジは普通そこまではまず言わない。


「ピアース・モーガン・トゥナイト」は、1月17日から始まった。栄えある最初のゲストは、これまた2011年夏に、アメリカ最強のトーク・ショウ「ジ・オプラ・ウィンフリー・ショウ (The Oprah Winfrey Show)」を終えることを決めたホストのオプラ・ウィンフリーだ。要するに昨年から今年にかけて、そういう、人が移動する時期に当たっている。考えたら「アメリカン・アイドル」だって、新シーズンから新ジャッジだ。


番組第2回ゲストは、ショック・ジョックと呼ばれる著名ラジオDJのハワード・スターン、第3回が元米国務長官のコンドリーザ・ライス、第4回がリッキー・ジャヴェイス、第5回がニック・クルーニー、ジョージ・クルーニー親子だった。ただしこの回はニックはスタジオでモーガンと直に話していたが、ジョージはLAからのTV中継だった。


モーガンは今のところ、「タレント」みたいな辛辣な批評家というよりも、心持ちソフトに進行を心掛けているようだ。番組が相手に話を聞くインタヴュウ番組である以上、その方が話を進めやすいということはあるだろう。ただし、おかげでいつものモーガンっぽくはないという印象も受ける。


私にとって「ピアース・モーガン・トゥナイト」および全CNN番組を見る機会が格段に増えたのは、3月11日の東日本大震災以降からだ。震災以降、うちで見れるアメリカの全ニューズ・チャンネルを交互に見ていたのだが、たぶんCNNは日本に支部もあり、日本の視聴者も多い関係もあるのだろう、ここが最も多く時間を費やして震災関係のニューズを報道していた。自然私もほとんどCNNで震災関係の知識を手に入れた。モーガンもこの時ばかりはスタジオにゲストを呼ぶのではなく、日本のCNN関係者、および、震災翌週からは日本に発ったアンダーソン・クーパーとのやり取り等でほぼ番組を費やしていた。


話は変わるが、CNNを中心とするアメリカでの震災報道を見て、こちらでも朝やっているフジ系の「スーパーニュース」や「めざましテレビ」を見ると、両者の報道にだいぶ温度差があることに気づく。「めざましテレビ」を見ると、大変な状況にもかかわらずみんながんばってんだな、という感じなのに、CNNや他のアメリカの報道を見ると、もうメルトダウンは避けられない、日本はダメだ脱出しないとという感じで、思い切り暗くなる。


一時期アメリカにおける主要なニューズは、メルトダウン後に放射能がアメリカにどのような影響を与えるかというものばかりで、ほとんどメルトダウンは不可避という感じだった。これも日本政府の発表とアメリカが独自に入手した情報にかなり差があるためらしく、日本政府は大規模パニックを抑えるために嘘をついていると疑心暗鬼になっているらしい。真実はその中間あたりかと睨みながら、デマにだけは踊らされないよう自分を戒めながら、私はTVにかじりついていた。9/11の時もこういう感じだった。とにかく今は一日も早い復興を祈るしかない。








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ラリー・キング・ライヴ   ★★1/2

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ピアース・モーガン・トゥナイト   ★★1/2

 
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