Lara Croft Tomb Raider: The Cradle of Life


トゥーム・レイダー2  (2003年8月)

ギリシアでアレクサンダー大王の遺跡を調査していたララ・クロフト (アンジェリーナ・ジョリー) は、ついに海底に沈んでいた宮殿跡の在り処を突き止め、パンドラの箱の所在を明らかにする、黄金色に光り輝く球体を発見する。しかし、それも束の間、ララの跡を追っていたチャイニーズのギャングに、その球体を奪われてしまう。彼らは、パンドラの箱を利用して世界征服を企むリース (シアラン・ハインズ) と取り引きをしていた。その企みを阻止すべく、世界を股にかけたララの活躍が始まる。


___________________________________________________________


実は「トゥームレイダー2」も、今夏のアクション大作にあって、あまり誉められてないし、客もあまり入ってない。予告編で見ると前よりもアクション・シーン自体は面白そうに見えるのに、とにかく、今夏は同様のアクション大作が多すぎて、少しでもケチが入ったり、ネガティヴな意見が前に出てくると、途端に客足が落ちる。


特に今夏はシークェル (続き物) が多く、その点で、前作と較べ、特にこれは、というようなオリジナリティや特徴がない限り、批評家はほとんど誉めないし、客の方も、これは前に見たからいいや、てな感じでパスする傾向がある。最もそのワリを食ったのが「チャーリーズ・エンジェル2」であったのは間違いなく、批評家からも客からもほとんど目を向けてもらえなかった。そしてこの「トゥームレイダー2」も然りである。その点で「マトリックス リローデッド」は、この夏真っ先に第2弾を投入していて成功した。また、こういうシークェルを避ける傾向の真っ只中に公開され、それなりの成績を上げた「T3」も、かなり健闘したと言ってもいいだろう。


しかし「トゥームレイダー2」は、残念ながら前作の興行成績を超えることはないだろうと思われる。実は私はアクションに限ると、前作よりもこちらの方が面白いと思った。色々新機軸を考えているし、女性版「インディ・ジョーンズ」みたいだ。トゥームレイダーことジョリーは、前回同様世界を股にかけて活躍するのだが、いちいち新しい舞台に変わる度に結構派手な登場の仕方をする。それでアフリカに行った時に、あんたはもうちょっと普通に現れることができないのかと訊かれたりするのだが、それだと失望させるといけないと思って、なんて答えたりしている。要するに、それが「トゥームレイダー」の根本の思想である。観客を、見ている間退屈させなければいいのだ。そしてそれに徹してくれるならば、こちらとしても異存はない。だいたい、「トゥームレイダー」に、アクション以外のいったい何を見に行くというのだ。


しかし前作では、わりと難しそうなアクションでも自分で演じていると聞いて感心したものだが、今回は、さすがに自分でこなすのは無理で、一目でスタント・ダブルを使用しているとわかるアクション・シークエンスが結構ある。だいたい、バイクで万里の長城から飛び降りたり、香港の高層ビルから飛び降りたり、棒高飛びしたり、くるくる回転しながら右から左に飛び移ったりと、さすがにいくらなんでも本職でもない限りできそうもないシーンが多い。それだけアクションのレヴェルが上がっているわけだが、そのアクションを見せるために、ストーリーを無理にこじつけたように見えるところは、まあ、非難されてもしょうがないかもしれない。


また、たまさか、そのアクションの流れが止まるように感じるところがある。役者が演技し始める時で、特に今回、ジョリーの相棒かつラヴ・インテレストの役回りを受け持っているテリー役のジェラルド・バトラーがちと弱いのが痛い。ジョリーはオスカー女優ということからでもわかるように、演技をさせようと思えばできるし、さらにアクションもこなせるというところが魅力なのだが、一方、バトラーはその両方で弱い。「007ゴールデンアイ」のショーン・ビーン・タイプの役者なのだが、サイボーグのような殺人マシーンにも見えなければ、ジョリーとの絡みでも今一つピンと来ない。主演のジョリーより魅力的でない男優ということでわざわざ選んできたみたいだ。


それよりも、今回あっと思ったのが、アフリカでのクライマックスでの、CG利用の森の守り神だかゴブリンだかの出現である。考えたら「トゥームレイダー」は元々コンピュータ・ゲームなのだからこういう展開があってもおかしくはないと言えるのだが、私は基本的にアクションは生身でやってもらいたいと思っている。だからアクションはアクションでもファンタジー系には惹かれないし、「ロード・オブ・ザ・リングス」にあまり感心しないのもその辺に理由があるのだが、しかし今回、岩や木の幹から出現するCGの化け物に対して、心の準備ができてなかったので、思わず、なんだなんだと思ってしまった。


考えれば、「インディ・ジョーンズ」だってCGシーンもあったわけだし、「トゥームレイダー」がCGを使っていても別に構わないわけだが、しかし、そのCGをさり気なく有効に使う「インディ・ジョーンズ」と、そのCGを一つのアクション・シークエンスのメインに持ってきて、それまでの話の流れをがらりと変えてしまう上にそれほど効果があるとも思えない「トゥームレイダー」では、作品のレヴェルが違うという気がする。やはりスピルバーグの方が一枚上手だ。まあ、しかし、ヤン・デ・ボンは、昔から、自分がやりたいことはこれまで誰も見たことのないアクションを撮ることだと明言していたから、そういう点をあげつらうのは趣旨に反することなのかもしれない。


一つ面白かったのが、ジョリーとバトラーの絡みのシーンである。映画のレイティングがPG-13 (13歳以下は成人同伴が必要) となっているところからして、それなりのヴァイオレンスやセクシャルなシーンがあることはわかっていたはずなのだが、作品が作品でもあり、かなり家族連れで幼い子も見に来ていた。しかし、この絡みのシーンは、これが007シリーズならともかく、家族映画として幼い子に見せるにはちょっと濃厚すぎるかなと思える描き方で、私の目の前に座っていた家族連れのお母さんは、いきなり子供に手で目隠しをしていた。


今回「トゥームレイダー2」に今一つ客が入りきらず、批評家の受けもよくないのは、こういう、007のように大人向けアクションとして見るには子供騙しすぎるし、インディ・ジョーンズのように家族向けとするには、ヘンにエロティックなシーンを用意して、結局、どっちつかずになってしまっていることにあるような気がする。コンピュータ・ゲームから派生してきた作品だから、当然子供も見たがるわけだが、ジョリーの持つ色気も利用して大人の客も呼ぼうとすると、今度は子供にとってはセクシーすぎるということになるわけだ。


あと、もう一つ、リースは細菌兵器を利用して世界征服を企んでいるわけだが、その伏線はまったく生きていない。サリンやらSARSやらで疑心暗鬼になっている世界情勢を危惧して描写を抑えたというよりも、ただ、単純に、描き込めてないのだ。やはり、何でもかんでも詰め込むよりは、ポイントを決めて、重要なところだけじっくり描いた方が、結局は印象に残る作品ができそうだなと思うのであった。







< previous                                      HOME

 
inserted by FC2 system