Lara Croft: Tomb Raider

ララ・クロフト: トゥームレイダー  (2001年6月)

アンジェリーナ・ジョリーを主人公ララ・クロフトに起用、「コン・エアー」、「将軍の娘」のサイモン・ウエストが演出を担当した人気ヴィデオ・ゲームの映像化が、「トゥームレイダー」だ。「レイダース」シリーズと「ハムナプトラ」シリーズ、ついでに「バットマン」を足して割って繋ぎ合わせたノン・ストップのアクション娯楽作で、本当にゲームを楽しむような感じでぽんぽんと話が進む。


実は私は原始的初代ファミコンの「スーパーマリオ」以来、ほとんどヴィデオ・ゲームをしていない。「マリオ」にははまったが、もういいや、というのが正直な気持ちだ。やってる時は楽しいのだが、ゲームが終わってふと我に返ると、時間を損した、もっと建設的なことに時間を費やせたのに、的な、自己嫌悪、とまでは行かないが、一種索漠たる気持ちにとらわれる。その後、実はムーヴィング・セールでスーパーファミコンを手に入れたのだが、なんと接続の仕方がわからなくて、ソフト共々眠ったままだ。その方がいいのかも知れない。


だから「トゥームレイダー」も、売れているゲームということは知っていたのだが、実際にやったことはない。それでも、映画はきっとゲームをほとんどそのまま映像化したんだろうと思う。ストーリーの進み具合が、この画面をクリアしたから次、みたいな感じでぽんぽんと進んでいくのだ。「トゥームレイダー」以前にも、「モータル・コンバット」とか「ストリートファイター」のようなヴィデオ・ゲームをオリジナルとする映画はあったが、それらはキャラクターや基本設定はゲームから借りてはいるものの、実際のストーリーはゲームとは別物になったから、「トゥームレイダー」は初の本格ヴィデオ・ゲーム映画と呼んでもいいんじゃないだろうか。


とにかくほとんどご都合主義的にものすごいスピードでばんばん場面が変わるため、気がつくと、あれ、なんでジョリーは今カンボジアにいるんだっけ? と、いきなり話の筋道を忘れる。その理由を思い出す間もなく、今度は南極といった具合だ。しかもそういう場面で、いきなりジョリーにとるべき道筋のヒントを与える小さな女の子が出てくる。あ、これはゲームをやっている時に裏技かなんかでボーナス・ポイントをとると、画面にこんな女の子が現れてヒントを与えるんだろうと思いながら見てたんだが、本当のところはどうなんでしょう。


主人公のクロフトに扮するアンジェリーナ・ジョリーは、結構イメージがゲーム上のクロフトに合っており、文句なしのキャスティング。私の目には彼女は運動神経よさそうには見えなかったんだが、アクションのほとんどをスタント・ダブルなしで自分でこなしているそうだから、実はわりとアクションは得意なのかも。私はジョリーの、あのぷよぷよとした唇がわりと気に入っていたのだが、一緒に見に行った女房曰く、ジョリーの下唇の真ん中に縦に1本線が入っているのが気になるという。えっと思って見てみると、本当にそうなのだ。以来、私までそれが気になってしょうがなくなってしまった。他人から指摘されるまではまったく気がつかないのに、いったん目についた途端、それが気になって気になってどうしても意識から追い払うことができなくなるというのは、人間の心理というのは本当に不思議なものだ。


それにしても最近、TVでジェイムズ・キャメロンが製作したTVシリーズの「ダーク・エンジェル」の主人公に扮するジェシカ・アルバといい、「X-ファイルズ」スピンオフの「ザ・ローン・ガンメン」の紅一点イヴに扮するズレイカ・ロビンソンといい、黒髪の女性アクション・ヒーローというのが流行りだ。数年前から「ズィーナ (Xena)」に主演しているルーシー・ロウレスもいる。一方、今、アメリカのTV/映画界でブロンドのアクション・ヒーローというのは、昨年の「チャーリーズ・エンジェル」でのドリュー・バリモアやキャメロン・ディアス以外ちょっと思いつかない。しかし、これだってコメディの要素が強い作品だったし、パメラ・アンダーソン主演の「VIP」なんて、完全にイロモノだ。一昔前にはファラ・フォーセットみたいなブロンド・アクション・スターもいたが、今ではほぼ完全に姿を消している。やはりブルネットの方がちょっと神秘的かつ野性的に見えるんだろう。


ジョリー以外ではクロフトの父親役で、「パール・ハーバー」で大統領役を熱演したジョン・ヴォイトが出演している。「パール・ハーバー」でははっきり言ってやり過ぎで、逆に鼻白んだが、こういう肩の力を抜いて冗談ぽく演じてくれた方が、余裕が感じられていい。あとの役者陣は、ほとんどが初見か覚えのない者ばかり。本当にこの映画はジョリーのための作品だったのだなあ。既にジョリーは「トゥームレイダー」続編の主演にサイン済みだという。まあ、確かにはまり役だ。


先週見た「ソードフィッシュ」同様、ストーリーやキャラクターという点では描き込みが足りないという批判が出るのは当然だろう。だいたい、なんでいきなりカンボジアに行ったり南極に行ったりするのか、よくわからなかった。あまり勢いよく話が進んでいくので、のせられたままあっという間に終わっちゃったという感じだ。が、これまた「スウォードフィッシュ」同様、まったく同じ1時間40分でとにかくアクションに徹した姿勢は高く買う。もちろんプラスアルファとして思いもがけないドラマ性があったりすると嬉しいんだが、観客の立場から言わせてもらうと、まず第一にアクションを見に行っているわけだから、とにかくそこをしっかりと撮ってもらいたい。しかし、そのアクションも確かにどこかで見たようなやつが多かったことは否めなく、私の女房は、評価はC-と厳しい採点をしていた。ううん、人それぞれ。







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