K9 カーマ

放送局: アニマル・プラネット

プレミア放送日: 8/15/2005 (Mon) 11:30-12:00

製作: アーデン・エンタテインメント

製作総指揮: ダン・アーデン

出演: カーリ・ハレンドーフ、チャーリー


バーキテクチャー

放送局: DIY

プレミア放送日: 10/5/2005 (Wed) 21:00-21:30

製作: DIY

製作総指揮: マシュー・クラリック、ジェフリー・ウッズ

ホスト: ケニー・アルフォンソ、カレン・トバイアス


内容: 犬がメイン・テーマの新番組2種。


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私んちはメス猫を一匹飼っているが、基本的に私は犬派か猫派かと訊かれれば犬派である。それが猫を飼っているのは、単にうちの女房が猫派で、何年か前にニューズで、動物シェルターで殺されるのを待っている捨てられた犬猫たちを見て、即座にその場で一匹でも助けると決心したため、わざわざブルックリンのシェルターまで足を運んで、その時はまだ幼かった子猫を一匹貰い受けてきたからだ。


私だって犬を飼いたいとは思っていたが、できれば大型犬を飼いたいと思っているので、アパート住まいで気楽に外で遊び回らせることのできない現状では諦めている。できれば広い庭のある一軒家で、いつでも好きな時に犬が外に出て日向ぼっこができるようなのが理想なのだが、最近ではそういう未来は永遠に来ないような気がしている。


しかし、ニューヨーク、特にマンハッタンではほとんどの家に庭はなく、高級なコンドミニアムか庶民的なアパートかという違いこそあれ、犬を飼っている人は同じ屋根の下で一緒に暮らしており、しかもその数はかなり多い。室内で飼っているから、えさの心配だけでなく、当然毎日何回かは散歩に連れて行って運動や排泄もさせないといけないから手もかかると思うが、年々ニューヨークの犬人口 (犬口?) は着実に増えつつあるように感じる。人間嫌いで、人間とのつき合いよりペットの方が大事と考えている者だって大勢いるに違いない。


したがって、ペット、ここでは特に犬と人間とのつき合いにおいて、人間関係と等しく、いや、それ以上に情熱や金や時間を注ぎ込む人間がかなりいるだろうということは、容易に想像できる。そして需要のあるところに供給があるのは資本主義の当然だからして、TV番組においても、ペット愛好家や動物好きを主要ターゲットとするアニマル・プラネットというチャンネルが、ちゃんとある。もちろん一日24時間、なんらかの動物、ペット関係の番組を放送している (後で調べてみたら既に日本でもサーヴィスしていた。)


それはいいんだが、最近、それがどんどんエスカレートしてきたなと感じる番組も出現してきた。たぶんその筆頭と言える番組が、この「K9カーマ」だろう。因みにK9は「ケイナイン」と発音する。もちろん、「イヌ科」を意味する「Canine」からきた語呂合わせで、だいたいアメリカでは犬関係の部署 - 例えば警察犬を扱う部署なんかは、K9ユニットと呼ばれるのが普通だ。そして問題は、その後の「カーマ」のところにあるのはこれまたもちろんだ。


因みに辞書を引くと (実際にはネット辞書で調べると)、カーマとは、業、運命、因果応報、なんて説明がされている。元々は仏教用語である由だが、最近はアメリカでもこの単語をよく聞く。こないだNBCの新番組「マイ・ネイム・イズ・アール (My Name Is Earl)」を見ていたのだが、その内容はというと、ジェイソン・リー演じる主人公アールがTVの「ラスト・コール・ウィズ・カーソン・デイリー」を見ていて、ホストのデイリーの「私はカーマというものを信じているんだ」みたいな発言に痛く感じ入り、気持ちを入れ替えてこの世に善行を施そうとするという様を描くコメディだった。


そのなにやら意味深の「カーマ」が番組タイトルの一部である「K9カーマ」は、ニューヨークに住む女性カーリ・ハレンドーフと、そのパートナーである、たぶんシベリアン・ハスキーのチャーリーとの交流をとらえるシリーズ番組だ。ハレンドーフはプロのドッグ・トレイナーで、なんと犬を交えた、あるいは犬のためのヨガ教室を主宰している。どうやらこの辺から「カーマ」という単語が連想されているようだ。


それにしても、いくらストレスの溜まりやすい大都会ニューヨークに住んでいるとはいえ、ついに犬までがヨガをするようになったか。どっちかっつうと、私の目から見ると、教室に通ってくる犬と飼い主たち (実際にいるのだ) の犬の方は、飼い主のエゴにつき合っているだけという印象を強く受けるのだが、本当にこれで身体や心が癒されているのだろうか。飼い主にあちこち触られ、手足を伸ばされ、ヘンなポーズを要求され、果ては空中に抱えられと、これが人間のガキならまだ高い高いといってきゃっきゃっと喜ぶかもしれないが、どうも見ていると、犬の方はただ戸惑っているだけという風にしか見えない。それにしても、これが猫ならまず人間の都合になんかつき合わないだろうが、犬の場合、たとえそれが意に沿わないものだとしても、おとなしくされるがままになってしまうところが犬だよねえ。


チャーリーがハレンドーフの心の支えであることは一目瞭然で、ハレンドーフは、チャーリーの誕生日にはわざわざケーキを買ってくる。一瞬、人様の食うケーキを犬にやるのかとぞっとしたが、犬専用のベーカリーが作った犬用のケーキで、砂糖は入ってないと聞いてほっとする。しかし、ちゃんとロウソクを立てて祝い、もう、自分の子供に接しているのとほとんど変わらない。実際の話、都会に住む妙齢のシングルの女性にとって、ペット、特に犬は既に家族であり、よき話し相手であり、子供でもあるのだ。むしろペットの飼い主の方こそペットの存在を必要としていると言えよう。ハレンドーフはチャーリーのことを話しながら思わず涙をこぼし、自分の人生にとってチャーリーの存在がいかに大切なものかを述べるのだ。


この「K9カーマ」の約2か月後から放送の始まった「バーキテクチャー (Barkitecture)」は、犬が吠えること (Bark) と建築 (Architecture) をかけ合わせた造語であり、つまり、犬小屋を設計することを意味している。初耳だったのでこの番組を放送しているDIYチャンネルの発明した造語だろうと思っていたら、グーグルで検索すると20万件も引っかかってきた。既に市民権を得ていた単語を私が知らなかっただけらしい。因みにDIYチャンネルのDIYは、言わずと知れたDo It YourselfのDIYで、つまり、日曜大工とかが趣味の人のためのハウ・トゥ・チャンネルだ。似たようなチャンネルに、特に家の回りのリフォーム関係に焦点を絞ったホーム&ガーデン・テレヴィジョン (HGTV) チャンネルというのもあるが、DIYの方がさらに間口が広い。


つまり「バーキテクチャー」は自分で犬小屋を作ってみようという者のためのハウ・トゥ番組なのだが、最初私はこの番組の話を聞いて意外に思った。なぜかというと、通常、アメリカのペットとして飼われている犬は、人間様と同じ生活をしている。つまり、家の中で寝泊りする。したがって、犬小屋というのは必要ないのだ。これはマンハッタンのような庭のないアパートに住んでいる者も、郊外や田舎の一軒家に住んでいる者も同様である。基本的に、アメリカの人々に犬小屋という概念はない。犬小屋を家の中に置く場合というのも考えられないわけではなく、実際に広い一軒家に住む人の場合はそれが一番多いだろう。いずれにしても本当に犬小屋を必要としているのは、牧羊犬のような、仕事をする上で犬を外に出している必要があったり、あるいは完全にペットとしてではなく番犬として犬を飼っている場合、それにプロのブリーダーが何匹も飼っている場合くらいに限られるだろう。


実際、こないだブラヴォー・チャンネルの夫婦の関係をとらえるリアリティ・ショウを見ていたら、妻が夫よりも飼い犬の方を大事にするという夫婦のエピソードがあった。この妻はどこへ行くのにも何をするのにも飼い犬と一緒で、しまいには夜も犬と一緒に寝るようになり (別に深い意味はない)、大型犬がベッドを占領するため寝場所のなくなった夫の方は、最近はカウチで寝ている。夫にとってはあんまりではあるが、しかし、一人暮らしの女性なら、ペットの犬を自分と同じベッドで寝かせるという者はかなり多いはずだ。要するに、ペットとしての犬は、かなり擬人化され、ほとんどペットというよりもパートナーとして接せられている。自分のパートナーに小屋を建てて外で寝かせようと考える者なぞいまい。


それなのにまたなんで犬小屋を作ろうという番組が出てくるのかと思ったのだが、要するに、これは犬の飼い主というよりも、DIYが趣味の人の自己満足のためであるようだ。要するに一軒家に住んでいて日曜大工を趣味としている人なんかが犬を飼っている場合、どうしても犬小屋を作ってみたくなるみたいだ。つまり、犬小屋を作るといっても、本気でそこに犬を住まわせるわけではない。犬を外に遊びに出した時の、一時休憩所、あるいは見張り小屋的な感じが濃厚だ。


そのため、犬小屋といっても飼い主の趣味が前面に出た、奇妙奇天烈奇想天外な犬小屋ができたりする。もし私が飼われている犬だったとしたら、こんな犬小屋を自分の家と認識するくらいなら野良でいた方が絶対ましと思うに違いない、自意識過剰のセンスのかけらもない犬小屋がかなりあって、そういうのが、犬小屋のコンヴェンション・ショウ (というのがちゃんとあるのだ) で発表されていたりするのだ。中には機能的でデザインもよく住み心地もよさそうな犬小屋もあることはあるんだが、それでも、アメリカにおいて本当に犬にとって快適な環境というものを考えることのできる人は、そもそも犬小屋を作るという発想をしないだろう。やはり犬小屋はそれを作る人の自己満足でしかないわけだ。


とはいえ、それを自己満足と知っていて、実際にはたぶん使用されないだろと思いながらも、それでもどうしても作りたいから犬小屋を作るというなら、それはそれで個人の問題であり、部外者の口出しすることではない。要するに、そう思っている犬の飼い主が結構いるということなんだろう。だからいつの間にやらバーキテクチャーという新語ができてるし、こんな番組ができるし、犬小屋コンヴェンションが盛況だったりする。そしてもちろん私もアパート住まいにもかかわらず、いつか犬を飼ったら犬小屋を作ってみたいと思ったりしているのだった。






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