Jurassic World: Fallen Kingdom


ジュラシック・ワールド/炎の王国  (2018年6月)

「ジュラシック・ワールド/炎の王国」の公開に当たって、映画を連想させる現実の出来事が二つあった。一つはハワイのキラウエア火山の噴火で、あの溶岩を見ていると、小さな島の噴火の場合は、棲んでいる動物および恐竜が噴火によって絶滅してもおかしくないと思わせた。映画の設定に俄然真実味が出た。 

 

一方、設定としてはこちらは今イチ納得いかないと思ったのが、ジュラシック・ワールドのあった島は、アメリカ大陸からはそう離れていないはずということだ。あまり大陸から離れていると観光客を呼ぶのに苦労するから、これはまずそうだろう。 

 

しかし、恐竜の中には翼竜もいる。必ずしも彼らが長距離を飛ぶのに適しているとは思わないが、しかし、島が噴火で滅ぶかもしれないという時、数十kmくらいは飛べないかと思う。あるいは、泳げないか。 

 

そしたらつい先頃北海道で、利尻島にはいないはずのヒグマが発見されたというニューズを見た。繁殖期なのにメスを見つけられないため、北海道から約20kmの利尻島までメスを探しに泳いで渡ったらしい。子孫を残せるかどうかは種の存続に関わる大問題だとはいえ、自分が今生死の瀬戸際に直面しているわけではない。それでも自分の子孫を残すために、命を賭して何十kmも泳ぐ。これが後ろから溶岩迫っているという状況なら、もちろん泳ぎが不得手な恐竜や個体もいるだろうが、皆絶対に泳ぎ出すだろう。その時、近くの島や大陸までたどり着く個体はそこそこいるんじゃないかと思うのだ。 

 

という外野の意見は置いといて「炎の王国」だ。前作の「ジュラシック・ワールド (Jurassic World)」から3年後の世界を描く。ジュラシック・テーマ・パークが失敗に終わり、島に見捨てられた恐竜たちは自分たちの世界を謳歌していたが、しかし活火山が噴火を始める。島にいれば絶滅は免れない。ハモンド博士のパートナーだった富豪のロックウッドは、クレアを屋敷に招き、恐竜の保護計画を話す。渡りに船とばかりにクレアは話に乗るが、しかしロックウッド財閥の実験を握っていたイーライには、別の考えがあった。 

 

映画の冒頭は、見捨てられた島にやってきて、恐竜の骨からDNAを採取しようとする何者かを描く。むろん恐竜の餌食になるのはお約束だが、しかし、その描き方が今一つサスペンスに欠ける。似たような状況を描くそもそものオリジナルの「ジュラシック・パーク (Jurassic Park)」で、雨の中をサンプルを持って逃げようとするウエイン・ナイトがどういう目に遭ったかをスリル満点に描いたスティーヴン・スピルバーグ演出をまだ鮮明に覚えている身としては、どうしても比較して今回は弱いかなと思ってしまう。 

 

一方、それから25年後! の現在、さすがにCG技術の進歩は大したもので、もうどの恐竜がCGでどの恐竜が模型かなんて、ほとんどわからない。それなのにスピルバーグ作品ほどスリリングに感じないのは、恐竜出し過ぎでこちらが知らず知らずのうちに飽きているのか、暗にどこかにリアリティを感じていないのか、それともやはり演出の問題か。最近のこの手のCG前面提出のパニックものは、どんなにCG技術が発達しても、どこか乗り切れないという部分が確実にある。 

 

とはいえ、話自体のまとめ方はいかにもツボは抑えており、なるほどと思わせる。「ジュラシック・ワールド」では武闘派のヴィンセント・ドノフリオが、復活した恐竜を軍事目的に使えないかと画策し、今回もやはりそういう輩が出てくる。究極の生物兵器と言える代物だから、そういう人間が現れるのはすこぶる当然だ。 

 

個人的にもうちょっと見せ場があってもよかったんじゃないかと思ったのが、ロックウッドの孫娘に扮するメイジーだ。活躍しないわけではないが、まだまだ見せ場があってもいい。ロックウッド屋敷の隅から隅まで知り尽くしている女の子が恐竜やクレアやオーウェンを助けずして、誰がその役を引き受ける?  

 

そして、忘れちゃならないメイジーの乳母役のアイリスに扮するジェラルディン・チャップリンの描き方も、今一つ不満だ。イーライに邪険にされるアイリスがそのまますごすご引き下がったままというのが納得できない。あれはどう見ても、その後メイジーの逃亡反乱を裏で手引きするアイリスとの共闘がないわけがないだろう。これまた、これをスピルバーグが演出していたら、チャップリンに対する敬意をちゃんと表明するだろうにと思ってしまう。結局恐竜映画を見ていても、最終的に最も気になるのはやはり人間だったりする。











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ジュラシック・ワールド・テーマ・パークが瓦解して3年後、恐竜たちをとり残したままの島で、火山の噴火活動が活発化する。このままでは島の崩壊と共に恐竜たちも絶滅してしまう恐れがあった。故ハモンド博士のビジネス・パートナーだったロックウッド (ジェイムズ・クロムウェル) は、今では恐竜の保護活動に携わるクレア (ブライス・ダラス・ハワード) に接触し、恐竜を見殺しにせず、新天地に移送するという計画を話す。これを実行するには、かつての恐竜の世話係だったオーウェン (クリス・プラット) の協力が必要だった。クレアはオーウェン、および同僚のIT専門のフランクリン (ジャスティス・スミス)、獣医のジア (ダニエラ・ピネダ)  と共に島を目指す。しかしロックウッドの側近のイーライ (レイフ・スポール) には、別の考えがあった‥‥ 


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