Jurassic World


ジュラシック・ワールド  (2015年7月)

「ジュラシック・パーク3 (Jurassic Park III)」から既にもう14年経っていると知った時は、思わずもうそんなに、と、ちょっと呆然とした。なんとはなしに7、8年、もしかしたら10年くらいは経っているかもという気はしたが、14年か。それも「3」から14年であって、オリジナルのスティーヴン・スピルバーグが監督した「ジュラシック・パーク」からは、なんと22年経っている。


なんということだ。これじゃオリジナルを見ていない者がこの世に大勢いても不思議じゃない。続編が作られてもまったくヘンじゃない。まったく心機一転、新しい作品を見る気分で見れてしまう。というか、これを見たのはアメリカの劇場であり、要するにもうニューヨークに住んで20年以上経つのかと、これはこれでまた別の感懐がある。


都合3作製作された前シリーズは、オリジナルの「1」が断トツに面白く、たとえまたスピルバーグが演出していようとも「2」はちょっと遊びが強過ぎるような印象があり、「3」も「1」には及ばなかった。やはり恐竜だろうが「ジョーズ (Jaws)」だろうが、この手のパニックものは一番最初の作品が最も面白い。そのシリーズ化されるに至った最初の作品を手がけているスピルバーグは、やはりえらい。


「1」で印象的なシーンは数あれど、特にクルマに乗った主人公たちをT. レックスが追いかけてくるシーンの印象は、いまだに強烈だ。我々を餌としてしか見ていないT. レックスが、こちらに向かって全速で走ってくるのだ。あれは怖かった。劇場の満員の観客が全員ぎゃーっと悲鳴を上げ、口々にRun!、Drive!とスクリーンに向かって絶叫していた。シーンが終わった後に観客が全員ぜーはーしてるなんて映画はめったにない。


この時は女房と一緒に見ていたのだが、当然彼女もぜーはーして、緊張したのか、ちょっとトイレ行ってくると言って席を立った。わりとよくあることなのでまったく気にしなかったのだが、彼女、そのまま上映が終わるまで帰ってこなかった。映画が終わって、あれ、そういえばと思って後ろを振り返ると、わざわざ一番後ろの席で見ていた。なんでも刺激が強過ぎて、ちょっと前の方の席ではこれ以上耐えられないと思ったらしい。さすがスピルバーグ。


それからすると、実は今回も一緒に見ていた女房は案の定途中でトイレに立ったが、今回は時間を計算して、ちょっとストーリーがテンポを落とした時を見計らって席を立ち、これから面白くなるぞという前にちゃんと帰ってくる余裕があった。今回も結構緊張したりエキサイトしながら見たそうではあるが、「1」の時のようにパニック・アタックに襲われそうになるほどではなかった。面白くはあったが、やはり「1」には及ばなかったということだろう。


今回、新作が製作されたのは、やはりテクノロジーの進歩によってDNA操作による新恐竜創出が夢物語ではなくなったことが大きい。「3」ではT. レックス並みに巨大凶暴な恐竜があればと、T. レックスとは棲息年代も大陸も違うスピノサウルスをわざわざ持ってきて戦わせていたが、ちょっと無理あり過ぎという印象は如何ともし難かった。遺伝子操作によってT. レックスより大型で凶暴な恐竜ができたとなったら、それは誰だって興味を惹かれるだろう。しかも知能も高く、人間の裏をかいたりする。本当にこんなのがいたら確かにヤバい。


一方、ジュラシック・ワールドでは、それほど大型ではないが同様に凶暴な肉食恐竜のヴェロキラプトルを、調教はできないまでもなんとか手なずける程度にはしようという試みも行われていた。この、大型のI. レックスと小型のヴェロキラプトルの配置はなかなかうまい。最後にはヴェロキラプトルが大きくストーリーに絡んでくるはずと、わくわくさせる。


オリジナル・シリーズで主人公格の学者ペアを演じたサム・ニールとローラ・ダーンの代わりに、今回の主人公ペアはジュラシック・ワールド施設責任者のクレアにブライス・ダラス・ハワード、調教員のオーウェンにクリス・プラットが扮している。プラットは昨年、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー (Guardians of the Galaxy)」で一気にブレイク、瞬く間に超売れっ子になった。どちらかというとどこにでもいそうな普通顔で、私は最初、顔を覚えきれなかったのだが、いったん認識できると、なんとなく彼が人気あるのもわかる。たぶんこの微妙な普通さ加減と、コメディでも行けるところがアピールしているんだろう。


個人的には「ブロークン・ホースズ (Broken Horses)」に次いでまたまた悪役のヴィンセント・ドノフリオも印象に残った。NBCの「ロウ・アンド・オーダー: クリミナル・インテント (Law & Order: Criminal Intent)」では名刑事で、今春の「ラン・オールナイト (Run All Night)」でもまだ正義の側にいたのに、最近はギャングの親分的な役ばっかしだ。


そういえば「ロウ&オーダー」フランチャイズの一つである「ロウ&オーダー: スペシャル・ヴィクティムズ・ユニット (Special Victim’s Unit)」に出演しているBD・ウォンも、ここでは悪役だ。と、なにげにウォンのフィルモグラフィを見ていて、彼がスピルバーグの「ジュラシック・パーク」にも出ているのを発見した時には、思わずあっと声を上げた。しかも「ジュラシック・パーク」でも今回も役名は同じヘンリー・ウーで、要するに彼だけがオリジナルにも今回も出ている、たぶん唯一のキャラクターだ。まだ同じところで働いていたのか。


たぶんスピルバーグと今回演出のコリン・トレヴォロウとの最も大きな違いは、「ジュラシック・パーク」でも今回にも登場してくる子供キャラクターの扱いにあると思われる。「ジュラシック・パーク」ではメイン・クレジットされているのはニールとダーンであるわけだが、本当の主人公が (恐竜を除けば) 子供の姉弟だったのは明らかだ。今回もちょっと色気づき始めた兄とまだ幼い弟の兄弟を登場させておきながら、彼らは基本的にサブ・キャラ以外の何ものでもない。それがいい悪いではなく、スピルバーグだったら彼らをまだ何かに使ったはずと思わせる。










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カリブ海の島で恐竜をフィーチャーしたテーマ・パーク、ジュラシック・ワールドは、順調に営業を続けているとはいうものの、ここらで観客を新規開拓するための新しいアトラクションが必要だった。責任者のクレア (ブライス・ダラス・ハワード) は極秘裏にDNAを改造した大型恐竜の開発を進めており、生み出した恐竜I. レックスを島の一部を囲って監視と研究を重ねていた。、ジュラシック・ワールドで働くオーウェン (クリス・プラット) は、小型ながら肉食で獰猛なヴェロキラプトルを調教するという難事に挑戦、ある程度まで成功しており、セキュリティ担当のホスキンス (ヴィンセント・ドノフリオ) は、ヴェロキラプトルを軍事目的に利用できないかと考えていた。ある時、立ち入り禁止エリアからI. レックスの姿が消える。慌てて警備が柵内に入って調査を始めるが、それは知能の高いI.レックスの画策だった。I.レックスは警備員を噛み殺すと、開いたゲートから外の世界へと抜け出す‥‥


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