Jurassic Park III

ジュラシック・パーク 3  (2001年7月)

もうスティーヴン・スピルバーグはほとんど関係していないのに、「ジュラシック・パーク3」はいきなり記録的な観客動員数で先週の興行成績のトップに立った。これだけ人が見に行くんだから、皆期待しているものと見える。私ももちろんその口だ。恐竜が現代に甦るという基本的なアイディアはやはり悪くないし、ちょっと「2」では下手な日本的怪獣映画みたいなノリになってしまって、スピルバーグ、ちと間違えたなと思わないではいられなかったが、演出が代わった今回は、また新たな魅力を発揮しているかも知れない。


まあ、見た後の結論から言えば、別に面白くないわけではなかったが、やはり本家の「ジュラシック・パーク」を超えるには至らなかった。どちらかといえば、スピルバーグにしては失敗しているように見える「2」と同じくらいの面白さか。思えば、本当に「1」は面白かったなあ。「3」では、まあ、色々な伏線が張ってあるわけだが、その伏線が画面を見ている時にほとんど先が読めてしまうのが欠点と言える。


遺跡発掘現場で見つかった恐竜の咽喉の骨の化石やパラグライダー、恐竜の卵等、まあ、それが後でまた使用されるのは誰だって気づくわけだが、あまりにもストレートな使い方で、伏線と呼ぶのすら憚られる。そういう演出の中でこれはいい、と思ったのは、恐竜に襲われているグラント博士 (サム・ニール) がエリー (ローラ・ダーン) にかけた衛星電話をとったエリーの息子が、お母さんを呼びに行く途中でついTVの「セサミ・ストリート」に見入ってしまう件りで、方やグラントたちは恐竜に襲われて一刻を争っているというのに、その急ぎの電話を待たしたまま、ついTVを見てしまった、というところは、本当にスピルバーグでもやりそうな演出で、この部分はとてもよかった。


監督はジョージ・ルーカス率いるインダストリアル・ライト&マジック出身のジョー・ジョンストンで、「ロケッティア」、「ジュマンジ」等の監督作がある。私があまり興味を持っていないSF畑出身のため、これまで未見。「遠い空の向こうに (October Sky)」だけは見ようと思っていたが見逃していた。タイトルを見ていると、空を飛ぶ題材が多いことに気づく。今回の恐竜も出物は翼竜のプテラノドンということで、よほど空を飛ぶことに惹かれているのか。


しかし、だったら、空を飛ぶプテラノドンの視点から見た人間どもの映像がないと面白くないと思うんだが、残念ながらそういうシーンはなかった。逃げ惑う人間に向かって急降下していくプテラノドンの視点から見た映像があれば、もっと面白くなっただろうに。ついでにプテラノドンが嘴に誰かを銜え、急上昇していくプテラノドンに銜えられた人間の視点から見た地上の映像なんてのがあれば、もっとよかったのに。そのついでに、高度200メートルまで持ち上げられた餌食が、下に落とされるシーンなんてのがあれば、もっと面白くなっただろうに。と、まだまだ面白く撮れただろうにと思う。多分、これまで撮った映画に空を飛ぶ題材が多いことは単なる偶然で、別にジョンストンは本当は空を飛ぶということ自体にそれほど惹かれているというわけではないんじゃなかろうか。空を飛ぶシーンの演出を任せたら、やはり宮崎駿にかなうものはいるまい。


これだけ作品がヒットしてしまうと、もしかしたら4匹目のドジョウを狙って、「4」が製作されるかも知れない。しかし「3」を見る限り、ニールもダーンも、もうこのシリーズには飽きているような感じがした。特にこれまでで体力的には最もきつかったニールは、絶対もうこれで打ち止めだと思っているだろう。賭けてもいいが、たとえ「4」が製作されても彼はもう出ないに違いない。今回限りのウィリアム・H・メイシーとティア・レオニは、なかなかうまい人選で、特に富豪のふりして実はしがない家具屋に過ぎない、という詐欺師まがいの役を演じるメイシーは、こういう小心者の小悪党的な役なら文句なしだ。戦闘のプロの振りして実はこちらも素人という、チーチ・マリンみたいな雇われ傭兵もなかなかはまっており、ニールの教え子ビリーに扮するアレッサンドロ・ニヴォラも悪くない。


しかし作品として最も失敗したと思うのは、今回プテラノドンと共にフィーチャーされている大型肉食恐竜のスピノサウルスが、T. レックスより凶暴に見えないことじゃないだろうか。「1」でのT. レックスは見るからに獰猛そうで、こいつに襲われたら一巻の終わり、みたいな怖さがあったが、こいつも怖いんだよう、と出されたスピノサウルスは、実はそれほど恐ろしい印象を受けない。T. レックスが肉食獣として最大最強だというのをこれまでずっと聞かされ続けてきたのに、いきなりこんな恐竜もありました、本当はこいつが一番強いんです、といわれても、簡単に納得はできない。学会もそれで納得しているのか。それよりも、小型で素早く、知能もありそうなヴェロキラプトルの方が、いつもながら怖いと思う。


今回もこの島は破壊されることなく残したまま映画は終わるわけだし、「4」だって作ろうと思えば作れないことはないだろう。しかし、なんか、このままだと新作の度に新しい恐竜を捏造しそうな気がする。ガキの頃に見た東宝、東映の南海の怪獣大決戦みたいなノリになっていくんではなかろうか。あまり見たいとは思わないが、でも、ふんだんに金をかけてリアルな特撮で行けば、もしかしたら面白くなるかも知れない。その可能性も捨て難いので、別に「4」製作に反対はしません。







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