Jimmy Kimmel Live   ジミー・キメル・ライヴ

放送局: ABC

プレミア放送日: 1/27/2003 (Mon) 0:05-1:05

新時間帯プレミア放送日: 1/8/2013 (Tue) 23:35-0:35

製作: ジャックホール・インダストリーズ、タッチストーンTV

製作総指揮: ジミー・キメル、ダニエル・ケリソン

ホスト: ジミー・キメル


内容: 時間帯を移動した深夜トーク・ショウ。


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Jimmy Kimmel Live


ジミー・キメル・ライヴ   ★★1/2

ついにこの時代がやってきた。過去長きにわたり、アメリカの深夜トーク・ショウは、NBCの「トゥナイト (Tonight)」と、CBSの「レイト・ショウ (Late Show)」の二強時代が続いていた。


むろんこれは11時30分、正確に言うと11時35分から一時間の枠のことで、零時35分からはまたNBCで「レイト・ナイト(Late Night)」、CBSでは「レイト・レイト・ショウ(Late Late Show)」という深夜トークの第二弾が始まるのだが、やはりポイントは歴史ある「トゥナイト」と、「レイト・ショウ」との鍔迫り合いにあった。


この時間帯に出遅れた三大ネットワークの一角ABCは、2003年から「ジミー・キメル・ライヴ (Jimmy Kimmel Live)」を投入して深夜トークに参入した。しかしABCにはこの時間帯、既に、人気のあるニューズ・マガジン番組の「ナイトライン (Nightline)」があった。それで「ジミー・キメル」は、番組放送開始時間を深夜0時5分からとせざるを得なかった。


視聴者にとって、日付けが変わった後の番組というのは心理的にすごく遅い時間帯であり、普通に働いている者は、TVを視聴することよりベッドに入ることを優先する。実際、例えばNBCの「トゥナイト」-「レ イト・ナイト」では、「トゥナイト」を見ている者がそのまま「レイト・ナイト」を見続けるかというとそんなことはまったくなく、「レイト・ナイト」の視聴者数は、だいたい「トゥナイト」の約半数程度でしかない。つまり、深夜トークにとって、番組が日付けの変わる深夜零時以前に始まるかどうかは死活問題だ。


「ジミー・キメル」はその、潜在的視聴者が最初から限られている中で、番組が始まる最初の30分は、ヴェテランの「トゥナイト」と「レイト・ショウ」の後半と競合するという苦しい戦いを最初から強いられていた。たった今までは。今回、ついにABCは「ジミー・キメル」と「ナイトライン」をスイッチ、「ジミー・キメル」の放送開始時間を早め、ここに3大ネットワークの深夜トークが完全に同時間帯で勝負するという、史上初の事態が出来した。


実は「ジミー・キメル」が放送開始時間を早めるのは、これが初めてではない。ABCは2011年4月に「ナイトライン」を5分短縮し、「ジミー・キメル」を深夜零時丁度から始めるというマイナー・チェンジを既に行っている。要するに、「ジミー・キメル」の放送開始時間を早めるという案は既にでき上がっていて、今回はその総仕上げとして「トゥナイト」や「レイト・ショウ」にぶつけてきたに過ぎない。「ナイトライン」はそれまで「ジ ミー・キメル」が駐在していた零時半からの枠に移動になった。


「ジミー・キメル」は1月8日からの新時間帯への移動に当たり、前日の1月7日、正確には既に1月8日 放送のエピソードを、これまでの総集編の放送に充てた。私は、確かにこれまで見ている深夜トークというと、「トゥナイト」か「レイト・ショウ」が中心で、 「ジミー・キメル」を見るのは、「トゥナイト」も「レイト・ショウ」も再放送で既に見ていた場合、というのが最も多い。


しかしなんらかの特別編成をしたり話題になったりした場合は、「ジミー・キメル」も見ている。というわけで、特に注意してこれまで「ジミー・キメル」を押さ えていたわけではないが、この総集編に収められているギャグ・スキットは、全部既に見ていた。ちゃんと押さえるべきところは押さえてたんだなと、自分で自分自身に感心したが、考えたら「ジミー・キメル」が話題になる (力を入れた) スキットを放送する時って、だいたいアカデミー賞中継とかの直後に編成された特別な場合で、そういう時ってだいたい時間が押して裏番組の深夜トークは既に終わっており、「ジミー・キメル」を見るしかなかったりするのだった。


因みにこの日は「ナイトライン」も従来枠での最後の放送であり、番組の最後にこの日のアンカーのシンシア・マクファデンが、「ナイトライン」がこの枠で放送 されるのもこれが最後です。ジミー・キメルの健闘を祈ります、みたいなことを言っていた。「ナイトライン」の放送環境は、かつてテッド・コッペルがアンカーだった時代から悪化しており、一時は番組自体がキャンセルされそうになっていた。「ナイトライン」としても、たとえ時間帯を遅らせられようとも、キャンセルされるよりはましと思っているのだろう。


「ジミー・キメル」がキメルここにありを広く知らしめたのは、やはりその2008年 のアカデミー賞授賞式中継直後に放送されたエピソードで、ベン・アフレックやハリウッドの大物たちを巻き込んで製作したオリジナル・ミュージック・ヴィデ オだろう。あるいは、自分がいかにハンサムであるかを強調し、やはりハリウッドのイケメンを巻き込んで製作した、「ハンサム・メンズ・クラブ」スキットだ。むろんこれらのスキットは総集編に収められていた。


また、近年ではあるシチュエイションで視聴者にヴィデオを撮らせ、それを集めて放送するというのもよくやる。例えばNFL中継で、クライマックスの最後のプレイの最中にTVの電源を消して他の者の反応を見るとか、もらっても絶対誰もが喜ばないクリスマス・プレゼントを贈って箱を開ける者の反応を見たり、子供が楽しみにしていた ハロウィーンのお菓子を全部食べちゃったと言って、ショックを受ける子供たちの姿をヴィデオに撮らせ、それを集めて放送する。結構ヴァイラルになったりする。


そして明くる1月8日、正確には同日の1月8日夜、晴れて11時35分から、「トゥナイト」と「レイト・ショウ」を裏番組に回し、「ジミー・キメル・ライヴ」は始まった。とはいっても内容はそれまでとほとんど一緒だ。時間帯が多少早まったことで、ちょっと危ないジョークは控えめにしないと、とどこかのインタヴュウでキメルが言っていたのを読んだが、今んところ特にこれまでとジョークの質が変わったという感じはしない。


その第1回の冒頭のギャグ・スキットでは、街頭に出て、放送時間帯が早まって心機一転の「ジミー・キメル」が、以前とどう変わったかを通行人に訊く。もちろんこの時点では新生「ジミー・キメル」の放送はまだ始まっておらず、この世に新しい「ジミー・キメル」を見た人間なぞいない。キメル本人ですらまだ見たことはな い。それなのに街頭でマイクを向けられた通行人は、前よりエッジィになったね、とかユーモアの質が変わった、とか、さも見たことがあるように質問に答えている。とことん嘘つきだ。それともサーヴィス精神が旺盛なだけか。


「ジミー・キメル」ではよく、ありもしないものについて通行人に話を訊く。例えば以前、iPhone5の発表直前に、通行人に以前と同じiPhone4を持たせ、新しいiPhone5をどう思う? と訊くと、訊かれた者たちは自信満々に、前より軽くなったしスクリーンも大きくなったね、と言うのだ。iPhone5はまだ発売されてないってば。


さて、この日の番組ゲストはジェニファー・アニストンだ。アニストンというと、現在の日中トークで最も人気のある「エレン (Ellen)」の第1回のゲストもアニストンだった。彼女を呼ぶと験がいいとか。しかしアニストンは、今日が新生「ジミー・キメル」の第一回ではなく、引っ越し前の最終回だとカン違いしており、スレッジ・ハンマー片手にステュディオに現れると、いきなりこれでこのデスクともおさらばねと、新しいデスクを叩き壊し始めた。キメルは茫然としてそばで見ているという演出。キメルはついでにアニストンに散髪してもらっていた。音楽ゲストはノー・ダウト。


翌1月9日放送の第2回では、冒頭のモノローグの部分で雑音が聞こえる。キメルが振り向くと、ステュディオの隅にいるのはウィル・フェレルで、彼はパートでTVショッピングのバイトをしており、本来ならキメルがまだいないはずのこのステュディオで、日本の刀を売っていたというもの。キメルから苦情を受けたフェレルは気 が動転して刀で自分の指を切って出血しまい、退場。因みに彼のアシスタント役は、「 L.A. ギャングストーリー (Gangster Squad)」公開の宣伝に来ていたこの日のゲストのライアン・ゴズリングだった。音楽ゲストは私の知らないカントリー・シンガーで、カウボーイ・ハットを被って出てきた瞬間から興味をなくしてしまったので、名前を思い出せない。


私は、今でも番組を見て笑える頻度という点では「ジミー・キメル」は「トゥナイト」と「レイト・ショウ」に及ばないと思っているが、それでもレターマンとレノに較べて、ジョークのテイストという点ではいかにもより若い人に受けそうだ。現在TBSに移っているコナン・オブライエンの「コナン (Conan)」ほど癖があるわけではなく、レノやレターマンほどヴェテラン過ぎるわけでもない。時間帯が移ったことで、今後「ジミー・キメル」が躍進しそうな気配は大いにする。









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