放送局: トラヴェル

プレミア放送日: 3/30/2003 (Sun) 21:00-22:00

製作: ブチエリ/スパランゴ・プロダクション、ボックス・コミュニケーションズ

製作総指揮: デイヴィッド・E・ガーバー

出演: ジム・ローズ、ビビ、ラバー・ボーイ、ミスター・リフト、キャッピー


内容: カルト的人気のある巡業見世物サーカス、ジム・ローズの「ツイステッド・ツアー」に同行して、その一部始終を記録。


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サーカスはボリショイやシルク・ド・ソレイユみたいな、派手で華麗なショウばかりではない。いわゆるサイド・ショウと呼ばれる際物/見世物もまた、サーカスの一部だ。侏儒や蛇女、シャム双生児やエレファント・マン等、いわゆる畸形の人間や奇人変人を出し物にした、人々の負の好奇心に訴えかける、なにやら胡散臭いサーカスとしてのサイド・ショウも、また昔から存在していた。


私が東京で学生をしていた頃、新宿の花園神社でその手のサイド・ショウをやっていたのを見たことがある。ろくろ首や熊男、人間女機関車みたいな大層な看板を掲げており、確か500円なりを払って中に入ってみると、熊男はただ毛深いだけの男、人間機関車というのは、一方の鼻の穴からもう一方の鼻の穴に鎖を通し、左右にしごいてしゅっしゅっぽっぽと機関車のような擬音を出すだけという、人を食った言語道断な見世物だった。ろくろ首というのがどういうものだったかはもう覚えていない。


要するにサイド・ショウというのは、そういう胡散臭い見世物であって、まず大っぴらに話題になることはないが、なぜだか気になる類いの興行である。完成した芸を見せる本来のサーカスとは異なり、本当は見てはならないものを見る、というような後ろ暗い快感を伴うのが、サイド・ショウの特質だ。だからなぜだか暗い雰囲気の小屋で、人々は互いに口をきかず、押し黙ったまま舞台を見てたりする。そして、騙された、ぼられた、と思っても、それを少なくともその場で口に出して文句を言う奴はいない。それがサイド・ショウだ。


ところがアメリカに来ると、そのサイド・ショウのイメージもがらりと変わる。アメリカではその手のファンを中心に、かなり知られたサイド・ショウの巡業団体であるジム・ローズの「ツイステッド・ツアー」は、やっていること自体は日本のサイド・ショウと大差ないのだが、それがアメリカ人が観客となっただけで、マイナーなイメージのサイド・ショウではなく、プロレスまがいのノリノリのショウになるのだ。


ジム・ローズの名は、90年代に全米各地で巡業コンサートを開き、一部のファンに圧倒的人気を博していた、オールターナティヴ系のロック・ツアー、「ロラパルーザ」と密接な関係にある。ニルヴァーナやスマッシング・パンプキンズ等、ロラパルーザと切り離すことのできない人気グループは多いが、基本的にロラパルーザは、メインストリームからは少しはずれた、いわゆる怒れる若者の匂いがぷんぷんとするツアーだった。ジム・ローズのサイド・ショウは、そのロラパルーザに主として前座として登場し、それらの若者に圧倒的にアピールした。なんとなくわかる。


そして今、その「ツイステッド・ツアー」は、ロラパルーザの前座としてではなく、自分たちの一座として全米興行をする身分になった。割れたグラスや剃刀の刃を食う芸が十八番である座長のローズを筆頭に、彼の妻であり、紅一点としてやはりサソリを食ったりのゲテモノ・ショウも兼ねるビビ、関節を外しての拘束着脱出が得意のラバー・ボーイ、乳首に開けたピアスから垂らした鎖に重いものをぶら下げて振り回すミスター・リフト (見てるだけで痛いぞ)、そして新メンバーの、超でぶながら超人的なヨーヨーの使い手であるキャッピーを加え、いよいよ「ツイステッド・ツアー」、全米ツアーの始まりだ。


番組はそのツアーの模様を追うわけだが、なんてったってシルク・ド・ソレイユとはわけが違う。ツアーといっても、それは各地のバーやクラブを一時的にサーカス小屋と見立ててのツアーであり、専用ホールや劇場を回るわけではない。人件費を浮かすため、舞台の仕込みはすべて自分たちでやるしかなく、開演直前まで、全員でなんとか舞台の体裁を整えるのだ。


どこでもせいぜいが100人くらい入れば満杯になるような場所で、若者相手にこのような芸をすると、結構受けることは受ける。しかし、見ていると観客はロラパルーザほどノリノリというわけではなく、椅子に座りながらただ観賞しているという感じで、それほどのめりこんで見ているようには見えない。確かにたかだか数人の変則芸主体では、これをメイン・イヴェントとするのは無理があろうという気はする。ロラパルーザの前座として登場し、既に半分でき上がっているような観客を前に演じている分にはよかったが、ローズ一座だけでは、やはりちと弱いのだ。


思うに「ツイステッド・ツアー」は、やはりロラパルーザ系のロック・ツアーあたりと一緒に巡業した方が、お互いを盛り上げる上でも一石二鳥の効果が狙えたと思う。ロラパルーザは一時的に休止に追い込まれたみたいだが、最近また復活したと聞いた。また一緒にやれないものか。あるいはもうロラパルーザがダメなら、MTVの「ジ・オズボーンズ」で人気が復活したオジーがメインのオズフェストなんてどうだろう。こうもりの首を噛み千切ることで名を馳せたオジーのオズフェスト、「ツイステッド・ツアー」とはまたとない組み合わせになると思うのだが。







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Jim Rose' Twisted Tour

ジム・ローズ・ツイステッド・ツアー   ★★

 
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