ジーザス・クライスト・スーパースター・ライヴ・イン・コンサート (Jesus Christ Superstar Live in Concert) 

放送局: NBC 

プレミア放送日: 4/1/2018 (Sun) 20:00-22:30 

製作: ストーリーライン・エンタテインメント、マーク・プラット・プロダクションズ 

製作総指揮: クレイグ・ゼイダン、二ール・メロン 

監督:  デイヴィッド・ルヴォー

作詞・台本: ティム・ライス 

作曲: アンドリュウ・ロイド・ウェバー 

場所: ニューヨーク、ブルックリン、ウィリアムズバーグ、マーシー・アヴェニュウ・アーモリー 

出演: ジョン・レジェンド (イエス・キリスト/ジーザス・クライスト)、サラ・バレリス (マグダラのマリア)、ブランドン・ヴィクター (イスカリオテのユダ)、アリス・クーパー (ヘロデ王)、ノーム・ルイス (カヤパ)、ベン・ダニエルズ (ピラト総督)、ジェイソン・タム (ペテロ)、ジン・ハー (アンナス)、エリック・グロンウォール (使徒シモン) 

  

物語: 一人人々から信望を集めるジーザスに、ユダは徐々に疑惑を深め、信心を失って行く。同様にカヤパやピラト総督もジーザスをなんとかしなければと思っていた。そんな中、マグダラのマリアだけはジーザスに変わらぬ愛情を捧げる‥‥ 


_______________________________________________________________

Jesus Christ Superstar Live in Concert


ジーザス・クライスト・スーパースター・ライヴ・イン・コンサート  ★★★

ミュージカルというジャンル自体はTVでもたまさか目にする。終わってしまったけれどもFOXの「グリー (Glee)」、NBCの「スマッシュ (Smash)」は結構人気もあった。CWの「クレイジー・エクス-ガールフレンド (Crazy Ex-Girlfriend)」もミュージカルに分別されるだろう。残念ながら1シーズン限りで終了が決まったが、先頃もNBCで「ライズ (Rise)」が放送された。 

 

ABCの「ナッシュヴィル (Nashville)」やFOXの「エンパイア (Empire)」、「スター (Star)」は、ミュージカルというよりも音楽業界テーマのドラマという方がしっくり来るが、それでも音楽パフォーマンスが番組の重要な一部であるという点は変わりない。 

 

レギュラー番組の一エピソードをミュージカル仕立てで製作するというのもわりとある。最近ではCWの「リバーデイル (Riverdale)」がミュージカル・エピソードを放送していた。 

 

これらとは一線を画すのが、単発のミュージカル、それもライヴ中継のミュージカルだ。ミュージカルをライヴ中継するというのは、ある意味当然の発想だ。元々ブロードウェイのミュージカルは毎夜ライヴで公演をこなしているわけだし、それをTV中継すればいいだけと言えなくもない。 

 

一方で、それを舞台としてではなく、ドラマ仕立てで、入念に事前にカット割りをしてライヴで中継するとなると、話は別ものになる。難易度が飛躍的に高まるのは言うまでもない。近年このジャンルを再生させるのに一役買ったのが、NBCの「ザ・サウンド・オブ・ミュージック・ライヴ! (The Sound of Music Live!)」だ。この番組の成功により、NBCは「ピーター・パン・ライヴ (Peter Pan Live)」、「ザ・ウィズ・ライヴ (The Wiz Live)」、「ヘアスプレー・ライヴ (Hairspray Live)」等のライヴ・ミュージカルを定期的に提供した。 

 

これに影響を受けて近年、ライヴでこそないが、FOXが「ザ・ロッキー・ホラー・ピクチャー・ショー (The Rocky Horror Picture Show)」、ABCが「ダーティ・ダンシング (Dirty Dancing)」等、TVミュージカル製作に手を出している。FOXはさらにNBCの轍を踏んで、「グリース・ライヴ (Grease Live)」、「ア・クリスマス・ストーリー・ライブ! (A Christmas Story Live!)」等、ライヴでTVミュージカルを提供している。 

 

このライヴ・ミュージカルの最新例が、今回の「ジーザス・クライスト・スーパースター・ライヴ・イン・コンサート」だ。従来の「‥‥ライヴ」というタイトルが、今回に限っては「ライヴ・イン・コンサート」と、さらに「イン・コンサート」が付け加えられているのを見てもわかる通り、今回はこれまでのライヴ中継とちょっと異なり、ドラマ仕立てではなく、観客のいる舞台としてのミュージカルをライヴ中継するという体裁がとられている。 

 

これはイエス・キリストの物語を現代に翻案したという構成が、下手にドラマ仕立てにするよりも、ロック・オペラとしての舞台をそのまま提供した方がより効果的と判断したためだろう。実際、中途半端にセットを組まれるより、いっそ思い切って最初からこれは舞台という作り物の装置と明言した方が、話に入りやすいというのは確かにあると思う。 

 

とはいえカメラはフィックスで一定場所に留まっているわけではなく、舞台上を縦横無尽に動き回る。カメラの動きは事前に入念に調整したに違いない。舞台奥から客席に向かって撮るシーンも何度もあり、おかげで観客の様子も手にとるようにわかる。旧態依然の舞台生中継とは別ものと言える。言わば観客も演出の一部なのだ。 

 

今回イエス・キリスト/ジーザス・クライストに扮するのは、ジョン・レジェンド。実は番組を見てしばらくしてこの項を書き出して初めて、そう言えば彼は黒人だったと気づいた。黒人のキリストだったのか。私がほぼ宗教に無関心だからというのもあるが、それでも、要するにそのことに気づかないくらい、その他の見るべき要素が詰まった、あるいは黒人がキリストであることになんの違和感もなかった、非常にエンタテインニングな舞台だったからとも言える。 

 

レジェンドと言えば現在すぐ思い出すのは、妻のクリッシー・テイゲンと共に出ているグーグルのTVコマーシャルで、リモートでTVで目指す番組をサーチできないテイゲンのそばで、レジェンドが表情を変えないまま、♪もう2時間も経っている気がする、我々は永遠に番組を探せない、という思いを高らかに歌い上げるのがバックに被さる。要するにグーグルで探せば一発というCMで、最初見た時は大いに笑った。しかし、やはりレジェンド、歌がうまい。 

 

マグダラのマリアに扮するのが、サラ・バレリス。こちらは最近、トニー賞のホストをジョシュ・グローバンと共に務めていた。ブロードウェイに馴染みも深く、現在公演を重ねている「ウエイトレス (Waitress)」の曲を作ってトニーにもグラミーにもノミネートされている。私としてはNBCの勝ち抜きアカペラ・リアリティ「ザ・シング-オフ (The Sing-Off)」で、途中からジャッジとして参加したことで覚えている。コンテスタント寄りのコメントで、いい人なんだなと思った。おかげでマグダラのマリアというキャスティングにも違和感ない。 

 

二人以外で最も印象に残ったのは、ヘロデ王に扮したアリス・クーパー。彼が登場した途端、場内が沸いた。こういう盛り上がりは、舞台のライヴ感が出て非常に楽しい。こういうある意味こけおどし感で最後まで突っ走る。ちゃんとキリストの磔刑で幕が下りる。十字架が空中に舞い上がる。すげえ。 

 

一つ難点があるとしたら、時々バック・バンドの音が大き過ぎて歌が聴きにくかったことが挙げられる。とはいえ英語ネイティヴではなく、歌われると歌詞でなんと言っているかはよく聴きとれない私は、クローズド・キャプションをオンにして歌詞は字幕で見ていたから、物語を把握するのに問題があったわけではない。バンドも乗っていて、これでもかとばかりに思い切り演奏しまくったんだろう。  


 


 







< previous                                    HOME

 
 
inserted by FC2 system