放送局: USA
プレミア放送日: 6/1/08 (Sun) 22:00-23:30
製作: NBCUケーブル・ステュディオ
製作総指揮: デイヴィッド・メイプルス、ポール・スタピン
監督: マーク・ピツナースキ
脚本: デイヴィッド・メイプルス
音楽: W. G. スナッフィ・ウォールデン
美術: ジョン・ハンセン
出演: メアリ・マコーマック (メアリ・シャノン)、フレデレック・ウェラー (マーシャル・マン)、レスリー・アン・ウォレン (ジンクス・シャノン)、ニコール・ヒルツ (ブランディ・シャノン)、トッド・ウィリアムズ (ボビーD)、クリスチャン・デ・ラ・フエンテ (ラファエル)
物語: メアリはニュー・メキシコのアルバカーキーで、犯罪事件の重要関係者を保護する、政府の目撃者保護プログラムで働く女性エージェントだ。普段はマーシャルとペアで動いているが、仕事は多忙な上、私生活でも母や問題ばかり起こしている妹のブランディに振り回され、今日は誕生日だというのに自分のために割く時間もない。さらに殺人事件が発生、保護プログラムでかくまっているフランキーの息子が殺される。果たしてフランキーの素性がばれて追っ手が迫っているのか、それとも別の犯罪に巻き込まれたか、メアリはFBIのボビーDと共同で捜査を進める‥‥
_______________________________________________________________
「イン・プレイン・サイト」の放送を始めたUSAは、ベイシックのケーブル・チャンネルではTNTとタメを張る最大手のチャンネルだ。視聴者の多い大手チャンネルであるためには、当然人気シリーズを編成している必要がある。TNTに「ザ・クローザー」があるのと同様、USAには「モンク」を筆頭にデブラ・メッシング主演の「ザ・スターター・ワイフ (The Starter Wife)」、アクション・ドラマの「バーン・ノーティス (Burn Notice)」、「サイク (Psych)」、それにNBCから移動してきた「ロウ&オーダー: クリミナル・インテント (CI)」なんて番組がある。「4400」や「ザ・デッド・ゾーン」なんてSF系の番組も一時はチャンネルを牽引していたんだが、現在では「CI」を除き、コメディ基調のドラマが主流だ。よくも悪くも「モンク」の大成功が効いている。
その最新の番組「イン・プレイン・サイト」は、目撃者保護プログラムに従事するタフな女性エージェントを主人公とするアクション・ドラマで、「モンク」ほどではないが、やはり気の利いたセリフやにやりとさせるやりとりが横溢する、ユーモアを絡めた番組となっている。目撃者保護プログラム (Witness Protection Program: WPP) とは、大きな犯罪事件に関わった者たちが、命を狙われる可能性があるために、名前や住居を変えさせて保護するプログラムのことだ。保護が長期にわたる場合、いつまでも警護の者が目撃者にくっついているわけにもいかないので、彼らのアイデンティティを変えさせて広いアメリカのどこかに住まわせた方が効率がいい。
最近ではショウタイムが昨年、やはりこのWPPによってアイデンティティを変えた一家を描くアクション・ドラマの「メドウランズ (Meadowlands)」(英オリジナル・タイトルは「ケイプ・ラス (Cape Wrath)」を放送していた。ただ、こちらの方は基本的に英国製ドラマだったこともあり、いかにも「第一容疑者 (Prime Suspects)」を製作した国らしいダークで暴力的なドラマになっており、ユーモアの絡む「イン・プレイン・サイト」とはだいぶ印象が違った。同じ題材で番組を製作しても、お国柄の違いでここまで別の番組になるかという感じだ。WPPではないが、FXが製作した「ザ・リッチズ (The Riches)」は赤の他人が金持ちの人間になりすますという、やはりアイデンティティを偽る話だった。
WPPは保護対象人物のアイデンティティを変えさせるといっても、当然彼らの本当の素性を知っており、定期的に面倒を見る政府エージェントがいる。保護するという立場上、そうでなければなるまい。勝手に保護すべき人物に居場所を変えられては困るのだ。番組の主人公メアリ・シャノンが、その面倒を見る立場のWPPエージェントだ。こられのエージェントは一対一で保護対象者を持っているのではなく、何人ものプログラム下の人間を抱えて面倒を見ている。効率を考えたらこれまた当然だ。これらの金は全部我々の税金から出ているわけだし、ムダには使って欲しくない。
パイロット・エピソードでは、そのメアリの保護下にあった、元ギャングの殺し屋の息子が殺される。果たして彼の素性がばれて追っ手が差し向けられたのか、それとも他の理由があるのか。さらに新しくキエフ出身の女の子がやはり保護対象者として送られてくる。彼女は証人になることを承認する代わりに、胸を大きくする豊胸手術を代償として要求していた。メアリはこんな女の子の面倒も見なければならない。
さらに私生活では、ほとんどわがまま、自分勝手としか言いようがない母のジンクス、妹のブランディがいる。いわばほとんど崩壊家族なのだが、そこをほとんど切れそうなメアリの我慢の糸一本でかろうじて繋いでいるという感じだ。ブランディはさらに、当然メアリには内緒だが部屋の中になぜだか大量のコカインを隠し持っており、ばれたらメアリのクビが飛ぶだけでは済むまい。
さらにボーイ・フレンドのスパニッシュ系の色男ラファエルとも、セックスの相性はいいようだがその他もろもろのコミュニケーションがうまくいっているとは到底言い難い。仕事のパートナーのマーシャルはこれがまた扱いにくい口の減らない男と来ている。そんなこんなで、今日もメアリは私生活と仕事を両方首の皮一枚残して、綱渡りのように毎日をなんとか乗り切っていくのだった。
主人公を演じるのがメアリ・マコーマックで、最も知られているのはNBCの「ザ・ホワイトハウス (The West Wing)」だろう。最近では昨年のスティーヴン・キング作品の映像化「1408」にも出ていた。びっくりしたのが、こないだTVを見ていたら、「ロウ&オーダー: クリミナル・インテント (CI)」にマコーマックが、「イン・プレイン・サイト」そのままのWPPエージェントのメアリ・シャノン役で出ていたことだ。なんだ、これは。「ロウ&オーダー」はディック・ウルフ製作番組で「プレイン・サイト」はデイヴィッド・メイプルス、ポール・スタピンがプロデューサーと、接点はどこにもないはずだが、と思っていたら、実は元NBC番組の「CI」は、今シーズンから場所をケーブルのUSAに移して、そちらでファースト・ラン番組としてUSAの新番組のような形で番組が続いている。
要するにこの手の登場人物のクロスオーヴァーにありがちの番組製作者繋がりではなく、番組を放送するUSAとネットワークのNBCが同系列であることを利用したクロスオーヴァーであったらしい。マコーマックは特に深く「CI」で話に絡むわけではなく、話題づくりのために派手に宣伝もしていなかったので事前にはまったく知らず、その点では意外性抜群で面白かった。それはよかったのだが、「CI」のそのエピソードの放送時期と「イン・プレイン・サイト」の放送は完全に重なっており、マコーマックは「プレイン・サイト」の撮影もこなしながら忙しい合間を縫ってニュー・メキシコからニューヨークまで飛んで撮影したのか、それとも「プレイン・サイト」の撮影はだいぶ前に既に終わっていたのかと、不思議な気がした。
マコーマックはタフな女性エージェントという役どころであり、今、こういう、私生活でも問題を抱えながら女手一つでもやっていくというスタイルのドラマ、しかも刑事ドラマがわりと目につく。この舞台設定が最も近いのは、TNTでホリー・ハンターが刑事に扮している「セイヴィング・グレイス (Saving Grace)」だろう。ハンターの演じる女性刑事グレイスはアル中寸前で、ほとんど幻覚かは知らないが天使が見えてしまうという点での違いはあるが、私生活に大きく問題を抱えまくり、それでも男には頼らないという点で、やはりどうしても連想してしまう。ネットワーク番組では、NBCの新番組「ライフ」でサラ・シャヒ演じるリース刑事がやはりこんな感じだ。いずれにしても最近の女性は、特に刑事という職業に限らず、ほとんど男に頼らない。時代というものだろう。
一方、単純に外見から言うと、マコーマックの顔は現在ショウタイムの「ウィーズ (Weeds)」に出ているメアリ-ルイーズ・パーカーと共通点が多いという気がするが、外見全体から滲み出る雰囲気から言うと、かなりダイアン・レインに近い。要するにあぶらの乗った大人の色気というやつだ。ところで番組開始時によく巷で見かけたポスターでは、マコーマックがいかにも時代遅れのレイ・バン型のサングラスをかけていた。実は「ライフ」でもシャヒがこの手のサングラスをかけていて、あまりにも普通には見ない形なので強烈に印象に残った。いまどきあの型を売っているのか、それとも暗に流行っているのに私が流行に疎いだけか。しかしマコーマックは、ポスターではレイ・バンをかけているが、番組中ではほとんどサングラスをしていない。単純に本当はメガネが似合わないのではと思ったりもする。
アメリカの番組で主人公の親が出てくると、かつての人気俳優だったりすることがよくあり、誰がキャスティングされているのかを見るのも楽しみの一つだ。例えばUSAの昨年のアクション・ドラマのヒットとなった「バーン・ノーティス」では、ジェフリー・ドノヴァン演じる主人公の母親として登場したのはシャロン・グレスだった。「イン・プレイン・サイト」でマコーマックの母を演じているのは、レスリー・アン・ウォレンだ。当然彼女たちは主人公の足手まといになったり迷惑をかけこそすれ、助けにはならないだろう。最近は女性の方が男より働くしタフだ。
