I Am Number Four


アイ・アム・ナンバー4  (2011年2月)

一見ただのハンサムな青年、ジョン (アレックス・ペティファー) は、実は遠い星から追っ手の手を逃れて地球にやってきたエイリアンだった。しかし追っ手の魔の手は地球にも伸び、彼の仲間は次々と消されていく。ジョンは仲間の4番目で、既に3人までが敵の毒牙にかかった。次が自分の番と知ったジョンと、彼のガーディアンであるヘンリ (ティモシー・オリファント) は、なるべく人目につかないようにしながら点々と所在地を変えていく。しかし若いジョンは、その他の人間の若者と同じように学校に行って、遊んだり恋人を作ったりしたかった。ジョンは新しく転入した学校で、サラ (ダイアナ・アグロン) と出会う。二人は親密になるが、敵はすぐ近くまで迫っていた‥‥


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去年の夏頃から予告編をずっと見せられている「身元不明 (Unknown)」がやっと公開だが、たぶん今イチなのを編集や撮り直しでなんとかしようとしていたんだろうとしか思えない。最初はそれなりに面白そうだと思っていたが、半年に渡って何度も何度も同じ予告編を見せられ続けると、さすがに飽きる。記憶を失ったリーアム・ニーソンが、実は本当は最初からその計画の首謀者の一人だったという展開に20ドル賭ける。


そんなわけで同じアクションものでも、まだフレッシュに感じる「アイ・アム・ナンバー4」の方を見ることにする。ちょっとガキ向きっぽいが、それなりにアクションはよく撮れてるっぽいし、今FXの「ジャスティファイド (Justified)」でかなり印象的なティモシー・オリファントも出ている。悪くはなさそうだ。


主人公ジョンは実は遠い星を追われて地球に潜伏しているエイリアンなのだが、地球にも追っ手の手は伸びてくる。ジョンと彼のガーディアンであるヘンリは、目立たないようにしながら各地を転々とする。しかし地球人で言えばティーンエイジャーで、しかもハンサム、運動能力も高いジョンは、どこへ行っても目立ってしまう。


そのジョンが、追われていることに倦み、自分の生活をとり戻したいと、勝手にヘンリに黙って高校転入の手続きをする、というところでまず引っかかった。これで思い出すのは、まったく同じように人間ではない、こちらはヴァンパイアが、やはり高校に転入してくるという噴飯ものの設定で、少なくとも私を唖然とさせたCWの「ザ・ヴァンパイア・ダイアリーズ (The Vampire Diaries)」だ。


いったい、ヴァンパイアだろうがエイリアンだろうが主人公がなぜだかハンサムな青年で、彼らはむろん人目から隠れていなければならないはずの存在で、特にジョンのように命を狙われて追われているならばなおさらで、その彼らが揃って高校転入手続きだ。こいつら、自分がしていることがわかっているのだろうか。


アメリカの場合、ヴァンパイアやエイリアンがクラスメイトとして一緒に学校生活を送っているという、よく考えれば言語道断の設定に人々が慣れて不思議に思わなくなってしまったのは、かなりの部分UPN/WBの「バッフィ: ザ・ヴァンパイア・スレイヤー (Buffy the Vampire Slayer)」の影響を抜きにしては語れない。ヴァンパイアやそれを退治するガーディアンのような存在は、確かにマンガやTV、小説の世界ではそれこそ大昔からいたが、それをまったくなんの疑問もなしに人々が受け入れるようになったのは、やはり「バッフィ」の出現以降だろう。


それまではたとえヴァンパイアがいるという設定でも、それはニュー・オーリンズのアンダーグラウンドや人里離れた古城の中でのことと相場が決まっていた。それをひっくり返したのが「バッフィ」で、ティーンエイジャーがごく普通に学校生活を送っている、その隣りにいるのが実はヴァンパイアという設定に人は慣らされてしまった。「トワイライト (Twilight)」を含めた現在のヴァンパイアものは、その多くを「バッフィ」に負っている。


そして今、隣りでごく普通に机を並べているのがエイリアンで、彼は故郷の星の未来を一身に引き受けているだけでなく、彼なりにティーンエイジャーの悩みもまた抱えている。どちらかと言えば比重は後者の方にかかっている。正直言ってティーンエイジャーというのはそういうものだとは思うが、しかし、エイリアンでもやはりそうなのだろうか。そして人間同様の見かけをしているものなのだろうか。まだスティーヴン・スピルバーグの「E.T.」や頭でっかち足8本の昔のSF作品の火星人の方があり得そうな気がするし、その他にも疑問は山積みなのだが、ここでそれを言い始めても始まらない。


とまあ、設定としては私にはほとんどギャグとしてしか映らない「アイ・アム・ナンバー4」であるが、そこんところに目をつぶると、アクションとしてはそれなりに面白く撮れている。というよりも、ティーンエイジャーものとして、ティーンにはアピールするだろうというのはわかる。実際、見終わった時もスクリーンに向かって拍手している女の子のティーンエイジャーがいた。彼女にとっては今年ナンバー・ワンの映画であるかもしれない。要するにこの映画、「トワイライト」の変奏なのだ。


主人公ジョンに扮するのがアレックス・ペティファー。ハリウッドは次の世代のスター候補はいつだって困らないという感じ。サラを演じるダイアナ・アグロンはFOXの「グリー (Glee)」で知られているが、こうやって髪を下ろし気味にすると、「アンファビュラス (Unfabulous)」時代のエマ・ロバーツにそっくり。最初はロバーツ、変わんないなとばかり思っていた。


最初は敵と思わせといて実は味方だったナンバー6に扮するテレサ・パーマーは、TV版「ターミネイター (Terminator)」の「ザ・サラ・コナー・クロニクルズ (The Sarah Connor Chronicles)」に出ていたサマー・グローを思い出させる。ジョンのガーディアンのヘンリに扮するティモシー・オリファントは、TVの「ジャスティファイド」がはまり役で旬という印象を受けているので、正直言うと実は彼が出ているからこの映画を見たと言っても過言ではないのだが、特にこれといって可も不可もない役どころ。別に彼である必要もなかった。演出は「イーグル・アイ (Eagle Eye)」のD. J. カルーソー。








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