Human Wrecking Balls  ヒューマン・レッキング・ボールズ

放送局: G4

プレミア放送日: 11/12/2008 (Wed) 22:30-23:00

製作: ベイス・プロダクションズ

製作総指揮: ジョン・ブレンカス、ミッキー・スターン

出演: クレイグ・パンフリー、ポール・パンフリー


内容: 素手であらゆるものの破壊に挑戦する。


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オタク向けチャンネルG4は、一時はほとんどPCユーザやゲーマー向け情報番組、および過去のTV番組の再放送ばかりで、一般視聴者にはほとんど縁のないチャンネルだった。しかし近年、番組の拡充に力を入れた結果、今では日本人には「SASUKE」こと「ニンジャ・ウォリアー (Ninja Warrior)」の放送で知られている。さらに「ハール!」のような、オタッキーではあるが妙味のある番組も編成、それなりに知られるようになった。


そのG4の最新番組が、この「ヒューマン・レッキング・ボールズ」だ。レッキング・ボール (Wrecking Ball) とは、クレーンとかに吊り下げられ、振り子のように振り回してビルとかを破壊する巨大な鉄球のこと。「ヒューマン・レッキング・ボールズ」は、クレイグとポールのパンフリー兄弟が、鉄球よろしくありとあらゆるものを素手で破壊することに挑戦する様をとらえる番組だ。車、ホテルの部屋、セスナ飛行機、一軒屋、オフィス、ボート、映画館、ボウリング・レーン、氷の塊等を、すべて素手と自分の生身の身体だけで徹底的に破壊し尽くす。


パンフリー兄弟はその筋では既によく知られている人物らしく、柔術、空手、パンクラチオン等の有段者である由。プロの破壊者としてギネス・ブックに載っているらしいが、それって、いったい何を基準にした世界記録なのかよくわからない。世界破壊選手権 (World Breaking Championship) の優勝者だそうだが、それだっていったい何の選手権か、知っている者の方が少ないだろう。だいたいパンクラチオンにしたって、確か古代ローマの格闘技かなんかで、そんなの、今やっているやつがいるのか。よくわからないが、まあ、確かに色々な格闘技に親しんできたという経歴だけはなんとなくわかる。


番組第1回は、パンフリー兄弟が二人して車を徹底的に破壊する。赤いスポーツ・カーはメイカーおよび車種名が取り外されており、かろうじてエンブレムだけは残っているのだが、あまり車に詳しくない私には、少なくとも現在は販売されていない車ということ以外、そのエンブレムだけではどこの車かはわからない。とはいえ、その車だと重すぎるのか、最初に素手で車をひっくり返すという挑戦の時には、その車ではなく、別のVWビートルが用意された。確かにこっちの方が軽いだろう。


まずは弟のポールが挑戦、兄のクレイグが運転席に座ったままだとさすがに重くて持ち上げることができず、クレイグに降りてもらってやっと3分ほど時間をかけてビートルをひっくり返すことに成功する。代わったクレイグはしかし、運転席にポールが座ったままで十何秒であっという間に助手席側からビートルを持ち上げてひっくり返した。いずれにしても確かにこいつら、力はある。


ところで、弟のポールの方が腕にしている刺青は漢字で、「勢力神」と読めるんだが、中国語としても、そういう単語があるかどうか疑わしい。グーグルで検索してもヒットしなかった。勝手に造語しているようにしか見えない。一歩譲って「努力神」としても、やはりそういう単語はないようだ。たぶん漢字それぞれの意味だけ教えてもらって、それらを勝手に組み合わせたのではないか。


さて、ビートルひっくり返しの後は、いよいよ素手でのスポーツ・カーの破壊作業に入る。まず二人で運転席と助手席に座り、ステアリング・ホイールやらのその辺の目につく内装をすべて引っぺがす。ステアリング・ホイールって素手でぶち抜けるものだったのか。それから二人して中から思い切りウインドシールドを蹴り上げる。ウインドシールドは内部の者を保護するという役目もあるから、外からの衝撃にはめっぽう強いのだが、内側からだとそれに較べると脆いということをテクニシャンが述べていた。そういえば昨年公開の「スモーキング・ハイ (Pineapple Express)」で、出演のジェイムズ・フランコがラリって運転中の車のウインドシールドを中から蹴り上げて穴を開けるという予告編を何度も見せられたことを思い出す。脚力のある人間なら特に難しいことではないのかもしれない。


話は変わるが、私は昔、池袋の西口を歩いていて、交通事故の瞬間を目撃したことがある。二台の車が丸井前の交差点で衝突したのだが、その瞬間、一方の車のウインドシールドが枠から外れて一枚のグラスとなって前面に浮き上がり、空中で粉々に砕け散った。4半世紀も昔の話で、今回パンフリー兄弟がウインドシールドを蹴り上げると、粉々にはならずに、その部分だけ穴が開くという感じで割れた。たぶん安全性の問題で、そういう風に割れるように品質改良されているのだろう。


その後兄弟は、これまた手で引きちぎることができてはたぶんまずいだろうと思えるシートを車の床から引き抜く。運転席側、助手席側の窓ガラスは、共に後ろ回し蹴り、前蹴りそれぞれ一発で粉々に砕け散った。開いたドアに体当たりをかませると、蝶番ごとぶっ飛ぶ。だんだん車の安全性が疑問になってきた。さらにフードを引っぺがし、リアのウインドシールドを、これは外から体当たりすることで破壊する。前述したようにウインドシールドは外からの衝撃には強くできており、ポールが以前これに挑戦した時は、頭を何針も縫う大怪我したそうだ。


今回は2回目のジャンプしての体当たりでウインドシールドはこらえきれずに枠から外れて落ち、一部は粉々のガラスの破片となってポールの腕のあちこちに突き刺さっていた。血が流れ、待機していたメディックが手当てをしていた。こういうやつらがアメフトやラグビーのフロント・ロウにいたら、普通の人間はひとたまりもないだろうなと思う。相撲をとってもいい線行くんじゃないか。今回の締めはクレイグが車の頭上に据えられたフォーク・リフトの上からジャンプして屋根の腕にショルダー・タックルをかますというもので、当然屋根はぼこぼこにへこんでいた。打ち所が悪ければクレイグも当然かなりの怪我を免れなかったろう。


番組第2回は取り壊し予定ホテルの一室を破壊し尽くすというもので、廊下に置かれているスナック類の自動販売機を手始めに、部屋の中の椅子、テーブル、チェスト、ドア、浴室ドア、鏡、カウンター、便器等を粉々にする。便器を素手で配管から引きちぎったのはおそれいった。壁に叩きつけた椅子は、そのまま突き刺さって落ちてこなかった。上で車のウインドシールドが粉々になる時、フレームから外れていったん空中に浮いた後、木っ端微塵に砕け散ったと書いたが、それはプラスティック・グラスの浴室ドアも一緒で、跳び蹴りの入ったグラス・ドアは、こらえきれずに枠から飛び出して一瞬宙に浮いた後、空中で粉微塵になるところをスロウ・モーションのカメラがとらえていた。


この回のクライマックスは壁をショルダー・アタックで突き破るというもので、内側がスティール補強されているドライ・ウォールに体当たりをぶちかます。さすがに人間がスティールには勝てないので、補強されているスティールとスティールの間の壁に体当たりするのだが、それだって実地検証で野球バットをスウィングして何度も壁にぶち当てても、小さな穴が開くくらいだ。人体ならはじき返されるのがオチだろう。


それをポールは集中してエネルギーを溜めると、壁に向かってショルダー・アタック、こちら側とあちら側のドライ・ウォールを突き破って隣りの部屋でクレイグが用意して待ち構えていたベッドのマットレスの上になだれ込んだ。こりゃ確かにすげえや。解説の男も、ポールを甘く見ていた、こんなのが本当にできるとは思わなかったと一とくさり。ポールは最後には窓にTVを投げつけ、窓ガラスを突き破ったTVははるか下の下界へと落ちていった。こいつら、たまらんわあ。


TRL






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ヒューマン・レッキング・ボールズ   ★★1/2

 
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