Hollywood Treasure    ハリウッド・トレジャー

放送局: SyFy

プレミア放送日: 10/27/2010 (Wed) 22:00-22:30-23:00

製作: SyFy

製作総指揮: エリック・ムーア

出演: ジョナサン・マンクータ、トレイシー・マッコール、ダイアナ・ゴーヴェイア、ジョー・マダレーナ


内容: 映画の小道具専門のオークション業者プロファイルズ・イン・ヒストリーに密着する。


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すべてはヒストリー・チャンネルの「ポーン・スターズ (Pawn Stars)」から始まった。昨年7月から放送の始まった、ラスヴェガスのポーン・ショップ (質屋) に密着するリアリティ・ショウ「ポーン・スターズ」は、瞬く間に人気番組の仲間入りをし、ヒストリー・チャンネルのドル箱番組になった。


ヒストリーはこれに気をよくして、今年早々、同系統のリアリティ・ショウ「アメリカン・ピッカーズ (American Pickers)」を編成した。こちらは全米の小屋や納屋に眠っている値打ちものを探し出す二人のピッカーに密着する番組で、こちらも同様に非常に高い人気を獲得した。今年前半のケーブル・チャンネルは、「ポーン・スターズ」と「アメリカン・ピッカーズ」の2番組が視聴率上位を独占していたと言っても過言ではない。


この種のお宝発掘番組は以前からあった。なんといっても古株中の古株であるPBSの「アンティークス・ロードショウ (Antiques Roadshow)」、およびHGTVの「キャッシュ・イン・ジ・アティック (Cash in the Attic)」というヴェテラン番組が既にある。「アンティークス・ロードショウ」の方はNHK教育番組みたいな真面目くさった蘊蓄番組で、「キャッシュ・イン・ジ・アティック」の方は実際にお宝をオークションにかけて売れるまでをとらえる、エンタテインメント性充分の番組だ。


そこに参入してあっという間に断トツ人気となったのが、「ポーン・スターズ」と「アメリカン・ピッカーズ」で、この分野はまだまだ開拓の余地があることを証明した。世知辛いこの時代、庭の納屋や屋根裏部屋にお宝が眠っている可能性が、もしかしたら自分の家にもあるかもしれないという庶民のちょっとした夢を刺激した。そして何をカン違いしたか、どこから見ても二束三文の価値にしか見えないものを堂々とポーン・ショップに持ち込む奇人変人の類い、持ち込まれた奇妙奇天烈な品々、再発見された本当のお宝、値切り値切られる一発勝負の駆け引き、お宝と思われたものがクズ品だった時の客の落胆ぶりなど、要するに、この分野は人気番組となるドラマ的要素が最初からあった。


そしてこの分野が流行りと見るや、後から後から雨後の竹の子の如く同系統の新番組が製作された。特に元々リアリティ・ショウ中心に番組を編成しているディスカバリーと姉妹チャンネルのTLCは、恥も外聞もないくらいに大量のお宝発掘/オークション番組を製作した。下記は今年後半投入されたそれらの番組群だ。



「ハードコア・ポーン (Hardcore Pawn)」Tru   8/16/2010 (Mon) 22:00-23:00

「オークショニアーズ (Auctioneers)」TLC   10/9/2010 (Sat) 22:00-22:30-23:00

「アメリカン・リストレーション (American Restoration)」ヒストリー   10/25/2010 (Mon) 21:00-21:30-22:00

「オークション・キングス (Auction Kings)」ディスカバリー   10/26/2010 (Tue) 22:00-22:30-23:00

「ハリウッド・トレジャー (Hollywood Treasure)」SyFy    10/27/2010 (Wed) 22:00-22:30-23:00

「オディッティーズ (Oddities)」ディスカバリー   11/4/2010 (Thu) 21:30-22:00

「オークション・ハンターズ (Auction Hunters)」スパイク   11/9/2010 (Tue) 21:00-21:30-22:00

「ホワット・ザ・セル? (What the Sell?)」TLC   11/14/2010 (Sun) 22:00-22:30-23:00

「ポーン・クイーンズ (Pawn Queens)」TLC   11/18/2010 (Thu) 22:00-22:30-23:00

「ストレージ・ウォーズ (Storage Wars)」A&E   12/1/2010 (Wed) 22:00-22:30-23:00

「キャッシュ&キャリ (Cash & Cari)」HGTV   1/3/2011 (Mon) 22:00-22:30



これらの番組は上に述べたように、単純にお宝の価値を検証するだけでなく、それらの所有者の方に焦点を当てたり、売却/オークションの駆け引きが主眼だったり、掘り出し物を求めてアメリカ中を旅する旅行記的面白さを提供したりと、番組によって狙いはそれぞれ異なる。とはいえ、やはり根は一緒であり、この種の番組が一斉に同じ時期に投入されると、見る方としてはこんぐらがってしょうがない。


例えば「ホワット・ザ・セル?」と「ポーン・クイーンズ」は、両者とも女性経営のポーン・ショップに密着するもので、一度見ただけだと絶対混同する。「オークション・ハンターズ」と「ストレージ・ウォーズ」は、共にアメリカ中にある賃貸ストレージ施設において、賃貸料を払わず忘れ去られたもののオークションに注目する。時々、信じられない掘り出し物が出る。ピカソの絵が出たこともあるそうだ。いずれにしても、これも基本的に同一番組であり、どっちがどっちだったか一瞬迷う。


これらの中では、「ポーン・スターズ」スピンオフの「アメリカン・リストレーション」が、唯一毛色が違うというか、端的に言ってお宝発掘系の番組ではない。「ポーン・スターズ」では店に様々な値打ちもの、そうでないものが持ち込まれるが、物によってはそのままでは売れない、あるいはそのままにしておくには惜しいというものがある。それらの修復修繕専門の業者に密着するのが、「アメリカン・リストレーション」だ。


いずれにせよ、とにかくこれらの番組が一斉に大量に編成されると、正直言ってこっちはツライ。何が何だか後にはわけがわからなくなってくる。番組を整理しようにも番組タイトルだけではどれがどれだったかわからない。本当に泣きたくなった。その中で特に私の印象に残ったのが、「ハリウッド・トレジャー」だ。この番組はわかりやすい。タイトル通り、かつてハリウッド映画の製作に使われた小道具やセットのオークション専門業者に密着する。


アンティークというものは、センチメンタルな価値がつくと、値段が天井知らずになる。他の人にとっては二束三文の価値しかなさそうなものが、信じられないような高額で取り引きされる。ある人にとっては、それは値がつけられるものではないからだ。自分の全財産と引き換えにしてでも手に入れる価値がある。そういうことが起こりがちなのが、ハリウッド映画に使用されたプロップだ。


番組プレミア・エピソードの最初に競売にかけられるのは、1960年代の人気SFドラマ「宇宙家族ロビンソン (Lost in Space)」で使用されたレーザー銃だ。メッキも剥げ、一と目でちゃちいという作りで、「『宇宙家族ロビンソン』で使用された」という但し書きがなければ、100円だって出すのははばかられるという代物だ。それが「宇宙家族ロビンソン」という付加価値がついただけで、落札予想価格は25,000-30,000ドルという、それだけで耳を疑う値がついてる。さらに驚いたことには、このレーザー銃は最終的に70,000ドルで落札された。ガキのおもちゃにすらならないようなものが、私の年間のサラリーより高い。


同じく「ロビンソン」に使われた宇宙船のミニチュアのセットは、それこそただ置き場所をとるだけの、はっきり言って粗大ゴミにしか見えない。それが予想落札価格30,000-50,000ドル、実際の落札価格は85,000ドルだ。まだある。「メリー・ポピンズ (Mary Poppins)」でジュリー・アンドリュースが持っていた花柄模様のバッグは、予想落札価格10,000-15,000ドル、落札価格はなんと95,000ドルだ。ベラ・ルゴシが「ホワイト・ゾンビ (White Zombies)」で着ていたタキシードは予想価格50,000-80,000ドルが100,000ドルで落札され、「スターシップ・トゥルーパーズ (Starship Troopers)」のミニチュア宇宙船は予想価格3,000-5,000ドルが、その10倍の35,000ドルで落札される。


極めつけが「オズの魔法使い (The Wizard of Oz)」で、箒に乗った魔女が被っていたとんがり帽だ。黒い円錐形のなんの変哲もないこれまたちゃちそうな代物だ。パーティ・ショップでほとんど同じものが300円で買えるだろう。しかしこれはただのとんがり帽ではない。栄光の「オズの魔法使い」のとんがり帽なのだ。予想落札価格は100,000-150,000ドルだ。


ここまで来るともう多少のことでは驚かんぞと思っていたが、それでも結局それが200,000ドルで落札されると、思わずため息を漏らさずにはいられない。どこから見ても300円のパーティ用の小道具が2千万円か。もう少しでうちのアパートが買えちゃうんですけど。結局人が本当に金を出すのはモノそのものに対してではなく、それに付随してくるもの、付加価値、歴史、ドラマなのだなと思うのであった。








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ハリウッド・トレジャー   ★★1/2

 
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