ホール・イン・ザ・ウォール

放送局: FOX

プレミア放送日: 9/7/2008 (Sun) 20:30-21:00

製作: フリーマントルメディア・ノース・アメリカ

製作総指揮: スチュアート・クラスナウ

共同製作総指揮: ケヴィン・ウィリアムズ

製作: ジョン・ペパー、グレアム・フラッシュナー、マット・ミラー

ホスト: マーク・トンプソン

フィールド・レポーター: ブルック・バーンズ


内容: フジTVの「とんねるずのみなさんのおかげでした」の人気コーナー「脳カベ」を、独立の番組としてリメイク。


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最近、アメリカのTV界は結構日本づいている。今年に入ってからだけでもG4の「アンビータブル・バンヅケ」、「スーパー・ビッグ・プロダクト・ファン・ショウ」、ABCの「ワイプアウト」、「アイ・サヴァイヴド・ア・ジャパニーズ・ゲーム・ショウ」等の日本製番組の吹き替えやそのリメイク、あるいは日本を舞台にした番組が登場している。


「ハール!」は直接的には和製番組とは関係ないが、その根本のところに和製大食いチャンピオンのタケル・コバヤシの存在がある。ほとんどカン違い的な「サムライ・ガール」もある。また、あるいは今年は北京五輪が開催された年でもあり、それも含めた汎アジア的な興味の中に日本も含まれているという見方もできる。いずれにしても、日本は旬だ。


今回FOXが放送を始めた「ホール・イン・ザ・ウォール」も、その列に連なる最新の和製番組のリメイクだ。とはいっても単体の番組のリメイクではない。フジTVの「とんねるずのみなさんのおかげでした」の人気コーナー「脳カベ」を、独立の番組としてリメイクしたものだ。


実は私は「みなさんのおかげでした」を通しで見たことは一度もない。巷で評判となっていた「脳カベ」こと「ヒューマン・テトリス (Human Tetris)」(うーん、言い得て妙) を、YouTubeで見たことがあるだけに過ぎない。しかし、それでもそのキッチュな面白さは充分に伝わってきた。これをリメイクするのか。「ワイプアウト」のように、誰もが「SASUKE (Ninja Warrior)」のリメイクであると言いながら、しかしアメリカ的に金をかけて結局別番組になったような展開になるのか。それともなんとかあのキッチュな味を活かす番組製作になるのか。これはちょっと興味をそそられる。


番組第1回では、まず赤とシルヴァーを基調とするユニフォームに身を包んだシックス・パックス (6-Packs) と、青とシルヴァーのビア・ベリーズ (Beer Bellies) という男3人ずつのグループが登場する。シックス・パックとは腹筋が6つに割れていることのスラングであり、要するに鍛えられた身体を持っていることを意味する。一方のビア・ベリーズは、読んで字の如くのビール腹だ。つまり、そういう体型の異なった2組のグループに分かれて競うわけだが、もしビール腹ということを考慮しないでカベの穴が一様に繰り抜かれている場合、これは明らかにビア・ベリーズの不利か。


進行はまず両チームから一人ずつ出、次に二人一緒、最後に三人一緒にカベ穴通過に挑む。通過できた者がポイントを獲得し、ポイント獲得数が多かったチームが賞金2万5,000ドルを獲得、さらに勝ったチームから一人が目隠しをして、チームメイトの声による指示だけを頼りに穴抜けをする、ブラインド・ウォールに挑む。これに成功したらボーナスは10万ドルだ。この辺の賞金の賭け方はいかにもアメリカ的という感じがする。


結局第1回では思ったよりは接戦でシックス・パックスが勝ち、ブラインド・ウォールに進むも、ここではまったく成功するかけらも見せずに挑戦者は無防備のまま壁を直撃、プールの中に落ちた。仲間が右、左と声をかけると、どっちに向かって右か左かをカン違いして逆方向を向いたり、まったくチャンスがないと思える姿勢をとろうともがくところを壁が直撃したりするこのブラインド・ウォールが、視覚的には最も笑える。


番組第2回は今度はブルックリン・レッキング・ボールス (Brooklyn Wrecking Balls) vsハリウッド・ヘア・レイザース (Hollywood Hair Raisers) という、いかにもタフなブルー・カラー然としたやつらと、どう見てもゲイ・チームが争った。勝ったのはレッキング・ボールスだが、やはりブラインド・ウォールは成功しなかった。


番組第3回はスモー・サンドウィッチ (Sumo Sandwich) という当然デブ然のやつら対スーパー・ジョッキースという競馬の騎手で、要するにこれもガタイの小さなジョッキース有利だろう。ところが意外にも3ラウンドを終えた時点でスモー・チームが4ポイント対ゼロとリード、勝負はカベ穴が迫ってくるスピードが倍になり、一方で成功した場合のポイント数も2倍になるというギャンブル的なスピード・ラウンドに進む。もし3人とも成功した場合は5,000ドルのボーナスもつく。


しかし結局勝ったのは、リードを守りきったスモー・チーム。やはりブラインド・ウォールは成功しなかったが、これまで見てきた中ではこのスモー・チームの彼が、最も成功しそうに見えた。成功したらボーナス10万ドルだったんだが。第4回になって初めて女性同士のチームの対戦となった。混成チームというのは今のところないみたいだが、回が進んできたら当然それもありになると思う。


これまで見た上での感想を言うと、やはりほとんど同じように作ってはいても、「脳カベ」と「ホール・イン・ザ・ウォール」では、番組の肌触りはかなり異なるものになっている。番組を丸々見たことがないとはいえ、やはり「脳カベ」の持ち味はそれまでの和製番組が持っている体力勝負系番組同様、そのキッチュなテイストにあると思う。ところが「ホール」では、賞金を賭け、参加者がそれを獲得しようとすることからくる、勝負としての印象が強い。つまりスポーツなのだ。「脳カベ」というよりは、むしろ「アメリカン・グラディエイターズ」の方によほど感触が似ていると言える。うーん、決して面白くないわけではなく、ところどころでは確かに声を上げて笑わせてくれもするが、しかしほとんどまったく同じ進行なのに、なぜこうも印象が変わってくる。


番組はこれまでのところ、「ニンジャ・ウォリアー」ほどカルト的人気を獲得するには至らず、「ワイプアウト」ほど新しい番組としての人気を確立するまでにも至っていない。やっぱ、なんか、リメイク、特に日本の番組のリメイクって難しそうだ。もしかしたらリメイクなんかせず、「ニンジャ・ウォリアー」同様、「脳カベ」をそのまま吹き替え放送してもよかったんではと思わないこともないが、あれは単体番組じゃないから、そういうわけにもいかないんだろう。


番組ホストは、最近では「スケーティング・ウィズ・セレブリティーズ」等、FOXの特に扇情系リアリティ・ショウで耳にする機会の多いマーク・トンプソン、フィールド・レポーターは「ベイ・ウォッチ」出身のブルック・バーンズ。トンプソンは高台からスタジオ内を見下ろす感じでアナウンスしており、スタジオ内は時にミラー・ボールが点滅して観客を煽り立てようとする。やっぱり、ちょっと「脳カベ」とはノリが違うよなあ。







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Hole in the Wall


ホール・イン・ザ・ウォール   ★★

 
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