放送局: WB

プレミア放送日: 1/5/2003 (Sun) 21:00-22:00

製作: ネクスト・エンタテインメント、テレピクチュアズ・プロダクションズ

製作総指揮: マイク・フレイス

共同製作総指揮: ジェイソン・カーボン

製作: ケリー・ウェルシュ

ホスト: マイク・リチャーズ


内容: 1992年にイリノイ州のオーク・パーク/リヴァー・フォレスト高を卒業した生徒17人をハワイイのマウイ島に再集合させ、2週間一つ屋根の下で寝起きを共にさせ、旧交を温めさせると共に、昔の恋愛感情も甦らせ、その成り行きに注目する。


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アメリカ2003年のTV界は、リアリティ・ショウの編成ラッシュで始まった。しかし、何というか、全部どこかで見たことのあるようなやつばかりで、新味に欠ける。FOXの「ジョー・ミリオネア (Joe Millionaire)」なんて、たとえ最後にあっと驚く仕掛けが用意されていようとも、どこから見てもABCの「ザ・バチェラー (The Bachelor)」の焼き直しだし、そのABCの「ザ・バチェロレッテ (The Bachelorette)」は、主人公が男性から女性になって少し番組タイトルを変えただけで、はっきり言って「バチェラー」そのものである。


CBSの「スター・サーチ (Star Search)」も、二番煎じどころか、以前あった番組をまた作り直しているだけだ。その他、ABCの「セレブリティ・モール・ハワイイ (Celebrity Mole Hawaii)」は参加者が知名度のある人間になっただけの、「ザ・モール (The Mole)」の新ヴァージョン、WBの「ザ・サーリアル・ライフ (The Surreal Life)」は元セレブリティを一つ屋根の下で共同生活させてみようという番組で、これはCBSの「ビッグ・ブラザー (Big Brother)」と、MTVの「ジ・オズボーンズ (The Osbournes)」を合体させた試みだと言うことができる。


そんな中で、WBのリアリティ・ショウ「ハイ・スクール・リユニオン」は、これまでまったく目にしたことのない新しいコンセプトで目を引いた。昔の高校の同級生を10年後に再会させ、一緒に暮らさせてみようという番組で、このアイディアはなかなか面白い。学校というのは一つの世界であり、クラス、あるいはクラスメイトは、その後の人生に大きな影響を及ぼす。特に人生の最も多感な時期を送る高校時代はそれが顕著で、この時の友人とは、その後も一生付き合ったりする。初恋や初体験等、人生の一大事の出来事が起こりやすいのもこの時だ。この時楽しかったことは一生の思い出になるし、失敗したことは一生の汚点となってずっとつきまとう。


その時一緒にいたクラスメイトをリユニオン、つまり再集合させ、憧れたあの子や、いじめた、あるいはいじめられたあいつと共同生活をさせてみる、なんてのは、ちょっと胸がときめく試みだ。皆変わってないかもしれないし、皆変わってしまったかもしれない。いま会ってみると、昔憧れた子に幻滅してしまうかもしれないし、ウマの合わなかったあいつと話が弾んだりするかもしれない。焼けぼっくいにまた火がつくこともあるかもしれない。会いたくもあり会いたくもなし。やっぱり、なんとなく気になる番組だ。


さて、番組は始まり、最初にマウイの屋外の集合現場に到着したのは、必ずクラスに一人はいるという感じの、お笑いをとるタイプのジェフ。しかし、それでも滅多にない体験に、さすがにいつもは道化役だった彼も緊張の面持ちを隠せない。次に到着したのは、高校時代はシャイ・ガールと言われていたホリー。しかし彼女は卒業後変わり、雑誌「プレイボーイ」のモデルとしてヌード写真を撮ったこともある。そのホリーを見て、ジェフはいきなり興奮。どうやらホリーがプレイボーイで脱いだということは、当然のことながら同級生は皆知っているらしい。ホリーに近づいて再会を喜ぶ言葉をかけるジェフ。それに対してホリーは言う。


「悪いけど‥‥誰だったっけ?」

「‥‥え?」

「まったく思い出せないの」


いや、これは笑ってしまいました。絶句するジェフ。さすが元道化。意図せずとも笑わせてくれる。その後も続々と都合17人の参加者が到着。こうやって見ると、10年もあると結構人は変わる。しかしそこはやはりクラスメイト同士。段々皆も打ち解けてくる。ところが、そこで昔いじめっ子として鳴らしたデイヴが登場すると、それまでは楽しそうだったクリスの表情がいきなり曇る。彼はデイヴにいじめられていたのだ。一人バーベキュー・セットの後ろに佇むクリスを目ざとく見つけたデイヴはクリスの元へ。


「なんだ、おまえ、隠れてるみたいじゃないか」

「そうだよ、おまえから隠れているんだ」


そう強がりを言うのが精一杯のクリス。こういう力関係は何年経とうともまったく変わらないみたいだ。いじめられた側は、自分をいじめた奴に対してどうしても苦手意識が残るし、相手はそういう気持ちに敏感に反応して、またいじめたくなる。こういうのって、世界のどこに行っても変わらない。しかし、10年経った今でもやはり同じままなのか。この2週間でクリスは苦手意識を克服することができるのか。


さて、何人かの参加者を一つ屋根の下で寝起きを共にさせ、その一部始終を記録するというアイディア自体は、既に「ビッグ・ブラザー」が試みている。「ハイ・スクール・リユニオン」は、もちろん「ビッグ・ブラザー」ほど徹底しているわけではなく、「リユニオン」の参加者は「ビッグ・ブラザー」の参加者とは異なり、平気で屋外にも出て行く自由が与えられているし、寝室にまでカメラが設置されているわけでもない。元々参加者は既に顔見知りということもあり、その行動は基本的に自発的なものだ。


とはいえ参加者をほっといて、2週間何事も起こらなかったりするのもまた困るので、そこはTV番組、プロデューサーは「ホール・パス (Hall Pass)」という、いわゆるトランプのジョーカー的なパスを勝手に製作、それを参加者の一人一人に配って、アクションを促したりする。ホール・パスは、それを得た者が意中の者をデートに誘う権利を認めており、ハワイイで沈む夕陽を見ながらロマンティックなディナーを楽しんだり、二人だけの日中クルーズに連れ出すセッティングが用意されている。


プレミアの回でこのホール・パスを得たのが、ベンとニコールの二人。ベンは昔「ナード」(いわゆる「オタク」みたいなニュアンスを持つ蔑称) と呼ばれていたが、今ではビジネスマンとしてそれなりに成功している。一方、ニコールは背が高いのに (あるいは背が高いから?) シャイなタイプである。確かに彼女は、もう少し小振りだと結構可愛いっぽいんだが。その二人共、高校時代はおくてでほとんど目立たない存在だった。そしてそういう存在であった者にありがちだが、実は二人共、当時最もモテていた異性‥‥ナターシャとダンにそれぞれ淡い恋心を抱いていた。ニコールなんて、その想いは強くなりこそすれ消えることはなく、番組の冒頭から、帰るまでにはダンにプロポーズをさせると息巻いている。はてさて、どうなることやら。


しかし、ホール・パスを持ち、好きな子をデートに誘う権利を持ちながら、彼らは、いざとなると、どうしても目指す相手に声をかけられない。もう彼らは20代の後半だが、こういう時は時間が逆行して高校時代に逆戻りしまうようで、二人共、声をかけてもし断られたりなんかしたらどうしようと、いきなり、もうためらいモードに入ってしまっている。本当に、こういうのって、いつまで経っても変わらないんだなあ。


それでも二人はなんとか意中の相手をデートに誘うことに成功する。二人だけの秘密のビーチで、沈む夕陽を見ながらの浜辺のディナーで、ロマンティックな雰囲気に酔って、つい親密な空気が生まれる。食後、暗くなった波打ち際を二人きりで歩くダンとニコールは、積極的なダンのリードもあり、ついに唇を交わす。紅潮してぼうっとしてしまうニコール。しかし、多分プレイボーイだったんだろう、ダンはもちろんそれで満足するということはなく、どんどん積極的に押してくる。こいつ、惚れられているのをいいことに、そのままベッドに直行なんて考えているのがミエミエだ。


一方、口ではなんとでも言えても、やはりおくてのニコールは、急激過ぎる事態の進展についていけない。キスまではよかったが、それから先までは考えてなかったのだ。こんなはずじゃなかったのにと戸惑うニコール。「もしかしたらダンは昔のダンじゃないのかもしれない」とカメラに向かって告白する。いーや、賭けてもいいが、あの男は絶対昔からああだよ。高校時代って、必ずいる学校のアイドルに誰でも憧れたりするが、それは自分で勝手に理想の相手を想像して重ね合わせているだけで、その人本人とはまるで関係なかったりする。ダンが、ニコールが想像していたような人格者でなかったのは、火を見るより明らかだ。大きな火傷をしないうちにあんな男のことなんか綺麗さっぱり忘れてしまう方が自分のためだぞ。


基本的に外見上は幾ばくかの変化が現れてはいても、根本のところでは皆、ほとんど変わってないように見える。もちろん私は彼 (女) らの昔を知っているわけではないから、これは想像で言っているわけでしかないが、それでも、画面に映る彼らの言動の端々から、おまえ、相変わらずだなあという感じのニュアンスがばんばん伝わってくるので、これは当たらずとも遠からずだろう。


しかし、もちろん変わったこともある。というか、このリユニオンで、彼らの間での力関係のダイナミクスにいくらかの変化が見られるところもある。それが最も顕著に現れたのが、男性諸氏が連れ立って釣りに出かけた時で、それまではいくら今ではある程度の成功を収めているとはいえども、やはり過去の「オタク」のレッテルを引きずっていたベンが、全長3mはあるかと思われる巨大なカジキマグロを釣り上げるのだ。その瞬間、ベンはこれまでの「オタク」から、一挙に「ヒーロー」に変貌を遂げる。それまでは女性からほとんど歯牙にもかけてもらえてなかったベンがいきなり熱い眼差しを受けるようになり、同性からは嫉妬と羨望と尊敬が混じった目で見られるようになるのだ。面白いなあ。たかだか20人弱の集まりにしか過ぎないが、なんか、社会の縮図を見ているようだ。この番組はもう少しは続くはずだから、これからの展開もまだまだ予断は許さない。


番組の製作総指揮は、ABCで「バチェラー」も製作しているマイク・フレイス。私は結構リアリティ・ショウのファンなのだが、あまり恋愛ものに興味がないため、「バチェラー」はそれほど見ていない。しかし、「バチェラー」は現在、ABCで最も高い視聴率を稼いでいる番組だ。それに今回といい、確かにプロデューサーとしての目のつけどころはいいみたいだ。その上現在、「バチェラー」の姉妹番組「バチェロレッテ」は、「バチェラー」より高い視聴率をとっていたりする。ふうむ、今度は、では「バチェロレッテ」でも見てみるか。







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High School Reunion

ハイ・スクール・リユニオン   ★★★

 
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