放送局: カートゥーン・ネットワーク

プレミア放送日: 11/19/2004 (Fri) 19:30-20:00-20:30

製作: レネゲイド・アニメーション

製作総指揮: サム・レジスター

出演: パフィー (Ami Onuki (大貫亜美) & Yumi Yoshimura (吉村由美))

声の出演: ジャニス・カワイ (アミ)、グレイ・デリスル (ユミ)、キーオン・ヤング (カズ)


物語:

第1話: ディス-ハーモニー (Dis-Harmony)

パフィーの前に大ファンだという女の子が現れる。最初は喜ぶ二人だったが、彼女はパフィーの行く先々のどこにでも現れる危ないファンだった。

第2話: コレクト・オール5 (Collect All 5)

シリアルのおまけのハグルバディーズ (Hugglebuddies) を5つ全部集めなくちゃという強迫観念に駆られたユミは、火の中水の中を、最後の1個のバニーハグルを探して回るが‥‥

第3話: ニンジコンプープ (Ninjcompoop)

通信教育で忍者養成キットを手に入れたアミは、忍者にかぶれて何に対しても忍者まがいの行動に走ってしまう。


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近年、アメリカではなにやら日本が小ブームの気配である。TV番組だけに限らず、カルチャーも含め、生活の様々な場面で日本製のものや日本の影響を受けたものを目にする機会がめっきり増えた。街を歩くと漢字やカナを意匠としてあしらったTシャツを着た若者が闊歩し (刺青にすらしている)、本屋に行くとマンガ・コーナーが常設され、和食の店が増え、スシが常食化し、映画を見に行くと、なんで日本人はムーヴィ・ドット・コム入りのキャンディ・バーを発明しないのかという宣伝フィルムが流れる。あるいは、ここまで身近になったものは、もはやブームとも言わないかもしれない。日本製品やカルチャーは、既に確実にアメリカ人の生活の一部として根づいているのだ。


その中でも、TV番組としてそういった日本ブームの火付け役として間違いなく一役買ったのは、フード・ネットワークが放送した「料理の鉄人」こと「アイアン・シェフ」だろう。日本製の番組が、日本製の番組のままアメリカで流通し、人気を得たのは、アニメ以外では史上初めてのことだった。そしてスパイクTVの「風雲! たけし城」こと「MXC」が登場し、「トリビアの泉」こと「ヘイ! スプリング・オブ・トリヴィア」が現れ、そして今、「ハイ・ハイ・パフィー・アミユミ」だ。


とはいえ「ハイ・ハイ・パフィー」は日本製の番組ではない。れっきとしたアメリカ製のアニメーションだ。日本人のパーソナリティを起用してアメリカ向けの番組と製作するというこのことが、日本という存在がアメリカ人にとって身近なものになったんだなあと思わせる。かれこれ4半世紀も前に、ほとんどキワモノとして現れ、そして消えていった「ピンク・レイディ」が放送されたのとは既に違う時代に我々は住んでいるのだ。


とはいえ最初私が「ハイ・ハイ・パフィー」の話を聞いた時、これはてっきり日本でパフィーを主人公として製作したアニメーションを、英語に吹き替えた番組だとばかり思っていた。実際の話、パフィーがアメリカでどこまで知られているかははっきり言って疑問だし、ティーンエイジャーを中心にある程度の知名度はあるとしても、それがTV番組として成功するかはまったく別問題だということは、既に「ピンク・レイディ」が証明している。


私の印象としては、アメリカにおけるパフィーの知名度は、かつての少年ナイフとどっこいどっこいというものであった。かなり熱狂的なファンもいることはいるのだが、要するに、ライヴハウスを満員にはできても、1,000人キャパの施設を一杯にするまでにはいかない、といった感じである。それなのにパフィーのアニメーションがアメリカで製作された理由は、ほとんどたった一つ、この番組を放送するカートゥーン・ネットワークの副社長兼番組プロデューサーのサム・レジスターが、パフィーの熱烈なファンであったからに他ならない。


レジスターは2001年夏、ニューヨークのケーブル・アクセス公共チャンネルで、なぜだかオン・エアされていたパフィーの「ブギ・ウギ No. 5」を偶然目にする。しかし、歌っているのが誰か確認しようと最後まで見たのに、「表示が日本語で、結局誰だかわからなかった」そうだ。うーん、いったいなぜケーブル・アクセスでパフィーを流していたのかも疑問なら、アーティスト名が日本語のままというと、ヴィデオそのものも日本ヴァージョンのものをそのまま放送していたようだ。しかし、おかげで、たぶんパフィーはそのキャリアで最も重要なファンを獲得したわけだから、ケーブル・アクセスに感謝しなくてはなるまい。


そして翌年、レジスターは、今度はNPR (公共ラジオ) を聴いていて、また偶然パフィーを耳にする。今度はアーティスト名をしっかりと聞いたレジスターは、カートゥーンが放送する新アニメーション「ティーン・タイタンズ (Teen Titans)」の番組主題歌の歌手としてパフィーを起用する。アメリカでパフィーの知名度が急上昇したのは、まさしくそれからである。


それにしてもパフィーって、TVといいラジオといい、当初はわりと公共放送でオン・エアされていたとはまったく知らなかった。私は人より多くTVやラジオを見たり聴いたりしている方だと思うが、それでもケーブル・アクセス・チャンネルなんて、たぶん800万ニューヨーク市民のうち、せいぜい多くて1,000人くらいしか見てないんじゃないかとしか思えないチャンネルだし、ラジオもFM以外はほとんど聴かないので、NPRなんてほとんど無縁だったのだ。そういうチャンネルばかりを見たり聴いたりしているレジスターって、きっと根が真面目な人間なんだろう。


さて、パフィーの歌う「ティーン・タイタンズ」のテーマ・ソングは、非常に耳馴染みがよくて覚えやすく、私は「ティーン・タイタンズ」を見たのはこれまでせいぜい2、3回くらいしかないのだが、たったそれだけで歌を覚えてしまった。いきなり頭の中で「♪ウェン・ゼアズ・トラブル、ユー・ノウ・フー・トゥ・コール‥‥」なんて鳴り出すくらい圧倒的に覚えやすいメロディで、番組そのものよりもテーマ・ソングの方が断然面白い。ただし、この曲は60年台のTV番組「デインジャー・マン (Danger Man)」のパクリだということもどこかで聞いた。近くのTV&ラジオ博物館に行けば事の真偽を確かめられると思うんだが、ちょっと不精でそこまではやってない。


「ハイ・ハイ・パフィー」でももちろん主題歌はパフィーが歌っており、やはりノリがよくて覚えやすい。「♪ハイ・ハイ・パフィー・アミ・ユミ・ショウ、ハイ・ハイ・パフィー・アミ・ユミ・ショウ、エニシング・イズ・ポッシブル‥‥」なんて、ちょっと芸がなさ過ぎるくらいのまんまの歌詞なのだが、とにかく耳に残る。堂々と自分たちのことを「♪ビギスト・イン・ジャパン‥‥」なんて歌っているのはちと恥ずかしいような気もしないではないが、番組主題歌としての役割はきちんと果たしていると言えよう。


番組そのものは、まず実写のパフィーが登場し、よくわからない日本語での合図 (チュリス、と言っているように聞こえるのだが、日本での流行り言葉かなんかか?) や、簡単な日本語、英語をちゃんぽんで喋る。いきなり日本語で歯を磨いたか、とか、にらめっこしましょ、とか言われてもアメリカ人には何のことやらちんぷんかんぷんだと思うが、語感さえ伝わればいいんだろう。一方、英語の方はちょっと長いセンテンスになると、今度は声優が吹き替えてたりしている。


その後で本題のアニメーションになるのだが、30分番組に3話ずつ話が収められている。番組キャラクターとしてのアミとユミのセリフは当然英語なのだが、これはパフィーたち本人ではなく、アメリカ人声優が担当している。まあ、確かにこれを本人たちにやらせるのは荷が重過ぎるだろう。それはいいんだが、絵柄がいかにもアメリカ的なデフォルメを施されたキャラクターで、まず第一に、どっちがアミでどっちがユミかまったくわからない。本物のパフィーでもどっちがアミでどっちがユミだか理解してない人間に、本人たちに似せることを意識しているとはまったく思えないキャラクターを見せられても、そりゃわかるわけがない。


それに、いくらアニメとはいえ、あの、三味線を弾くバチみたいな指はなんだ。あんな指でギターを弾けるわけないだろうと思わず突っ込みを入れたくなる。あ、もしかしたらコードは押さえにくいかも知れないが、指がバチみたいだから逆にピックは要らなくてピッキングはしやすいか。いずれにしても、この種の指先が四角いデフォルメを施されたキャラクターはアメリカ製のアニメーションではよく見かけるのだが、特にこういう、日本のアニメのようなおめめパッチリ可愛いキャラクター的な図柄の場合だと、バチ指先は不釣合いと言うか、まったくそぐわない。その辺もうちょっと考えてくれと言いたくなる。


さらに、最近、日本語を意匠として用いるヘンなデザインが流行っていると上に書いたが、番組タイトルの「Hi Hi Puffy AmiYumi」のロゴも、実はその例に洩れない。特に「Hi Hi」の「i」の上の点なんか半分に割れているために濁点に見えてしまい、さらには縦棒の下側が右にはねているため、私は最初「Hi Hi」をローマ字と思わず、これはなんだ、「かじかじ」か、それとも「がしがし」と読むのかなと思っていた。ああいう下手くそなデザインはやめてくれ。また、このノリで、チャンネルのイニシャルを利用したCNロゴを、カタカナでカネ (要するにカートゥーン・ネットワーク) としたロゴなんて、本当に日本のカートゥーンがこのロゴを使用しているのかと目を剥いてしまった。やってみたかったことはわかるのだが、「カネ」だと日本人なら「金」をすぐに連想するのを止める法はなく、はっきり言ってあまり勧められない。


とまあ、突っ込みどころはままあるが、この番組、子供の視点から見たらかなり楽しめるんじゃないだろうか。アニメーションのキャラクターが、たとえ日本だけにせよ実際にスターの女の子の二人組であるというのは、アメリカのプリ・ティーンの、特に女の子には大きくアピールする要素がある。MTVで「アシュリー・シンプソン・ショウ」があれだけ人気が出たのも、自分たちと等身大の音楽をやっている女の子というアシュリーのイメージが、若い女の子に強くアピールしたからだった。その上よくわからないカルチャラル・ギャップを持つパフィーなんて、キッチュ受けする可能性は高い。アシュリーほど人気が出るとは思えないが、そこそこいい線いくんじゃないか。


いずれにしても「ハイ・ハイ・パフィー」が、カートゥーンから今秋、最も推されていた番組であることは間違いない。番組が始まるちょい前なんか、マンハッタンのありとあらゆるところで番組ポスターを見かけた。目の前をパフィーの顔が大写しになったニューヨークの市バスが走っていくのを見るのは、なかなか面白い体験だったと言える。番組内に、さり気なく、こんにちは、だとか、うるさい、だとか、ごー、よん、さん、にー、いち、なんて単発で日本語が登場することもあり、もしかしたら「料理の鉄人」や「たけし城」や「トリビアの泉」よりも、「ハイ・ハイ・パフィー」こそが最も日本文化をアメリカに浸透させる契機になるのかもしれないなどと思うのであった。




追記 (2005年1月)

パフィーがそれなりにアメリカでも注目されていることは知っていたが、先日、分厚いニューヨーク・タイムズ日曜版のスタイル・ページに目を通していたら、そこでパフィーが日本のファッション・リーダー的な扱いで紹介されていた。そうか、パフィーってファッションを含めてのトータルなシンボルとして見られているんだなと思って記事を読んでいたら、彼女らの最も熱心なファンは夜8時までには寝ているとも書かれてあった。アメリカでの日本発の最初の大きなムーヴメントの主役になるには、もう一踏ん張りというところか。 





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