「ハップ・アンド・レナード」は、南部テキサスを舞台にしたジョー・R.・ランスデイル原作のクライム・ノヴェル・シリーズの映像化だ。日本でも角川文庫でシリーズの半分くらいは邦訳されている。とはいっても私は原作を知っていたわけではなく、番組が目に留まったのは、何よりもまず出演者によってだ。
タイトル・ロールのハップとレナードを演じるジェイムズ・ピュアフォイとマイケル・ケネス・ウィリアムズ、そして二人に絡むハップの前妻トゥルーディに扮するクリスティーナ・ヘンドリクスは、それぞれ近年最終回を迎えた人気ドラマに出演していた。ピュアフォイはFOXの「ザ・フォロイング (The Following)」でカルトの主宰者を演じ、ウィリアムズはHBOの「ボードウォーク・エンパイア (Boardwalk Empire)」で禁酒法時代のギャングを演じ、ヘンドリクスはAMCの「マッド・メン (Mad Men)」で主人公のジョン・ハムに絡んでいた。それぞれ非常に役柄に合ってうまく演じていると思っていたので、そういう面々が終結した「ハップ・アンド・レナード」のキャスティングを見て、まず、おっと思ったのだ。
考えると、「フォロイング」も「ボードウォーク・エンパイア」も「マッド・メン」も、シリアス過ぎるくらいシリアスで、特にピュアフォイとウィリアムズは、最初から自滅を運命づけられているようなキャラクターを演じていた。それが今回は1980年代を舞台にした、クライムものとはいえ、どちらかというと肩の凝らない軽いタッチのドラマだ。今度はそういうものに出たかったのだろうと思う。
ピュアフォイ演じるハップは、かつて徴兵忌避で刑務所に入れられたことがある。どちらかというと暴力よりは女性の方に目がないが、銃を使わないわけでもなく、時には射撃場でライフルを撃ったりもする。一方のウィリアムズ扮するレナードは、ヴェトナム戦争の経験のあるヴェテランで、黒人のゲイだ。短気で切れやすく、ゲイということでおじから疎まれていたりするが (80年代なのだ)、そのおじのために近所のケチな小悪党どもをボコボコにしたりもする。
ヘンドリクス演じるトゥルーディはハップの前妻で、今は現ボーイフレンドのハワードと一緒に暮らしているが、訳あってハップの力を借りに現れて、またハップとベッドを共にしてしまう。ハワードはそのことを知っても別に気にするわけでもない。まだヒッピー・カルチャーを引きずっているのだ。いずれにしてもヘンドリクスの下品な色気はここでも健在。
トゥルーディがハップに持ってきた話とは、ハワードが刑務所に入っていた時に知った男から得たもので、川の中にまだ強奪した大金が手つかずのまま残っているはずだという。その男は刑務所内のごたごたに巻き込まれて殺されてしまったので、今はそのことを知っているのはハワードだけだ。金が咽喉から手が出るほど欲しいハップとレナードは、話に乗る。とはいえトゥルーディとレナードは実は犬猿の仲だ。しかしハップは、レナードと一緒じゃなければと主張を通す。
一方、ハワードの仲間の一人であるパコを探して、ソルジャーとエンジェルの、人を殺すことをなんとも思っていない危険な二人組が近づいてきていた。どうやら過去にパコ絡みの因縁があるらしい。ソルジャーに扮しているのはジミ・シンプソンで、彼はかつてデイヴィッド・レターマンの「レイト・ショウ (Late Show)」で、ボスに意見するインターン役として準レギュラー出演していた。私は最初、彼が本当にインターンで、たまたまそういうスキットに抜擢されたものだと思っていた。それがここではサイコパスだ。ソルジャーの相棒の殺人マシーンのエンジェルに扮するポリアンナ・マッキントッシュの切れぶりもいい。
いずれにしてもそんなわけで、なかなか印象的な顔ぶれが揃っている。クライム・ドラマであり、ヴァイオレンスも流血もあるが、話のテンポやリズムは結構ゆるゆるだ。近年で最も乗りが似ている番組というと、FXの「ジャスティファイド (Justified)」ということになるかと思う。とはいっても、こちらは出てくる者はほとんどケチな悪党ばかりではあるが。