放送局: FOX
プレミア放送日: 3/27/2002 (Wed) 21:30-22:00
製作: スティーヴ・レヴィタン・プロダクションズ、20世紀FOXテレヴィジョン
製作総指揮: ダン・ミラノ、スペンサー・チノイ、スティーヴン・レヴィタン
製作: ギル・ホランド
監督: ブレント・カーペンター、ジョン・フォーテンベリー、他
脚本: スペンサー・チノイ、ダン・ミラノ、スティーヴン・レヴィタン、他
撮影: オリン・ヤンガー
編集: ブレント・カーペンター
音楽: マーク・シェイマン
美術: ジム・ダルツ
出演: ユージーン・レヴィ (ギル・ベンダー)、セス・グリーン (ジミー・ベンダー)、サラ・シルヴァーマン (アリソン・カイザー)
声の出演: ダン・ミラノ (グレッグ)
物語: ウサギの人形のグレッグは職にあぶれており、人間の友人のジミーをせっついて、自分に何か職がないかを探させる。グレッグはジミーの父親でTV番組の監督をしているギルの元に面接に出かけるが、そこではギルが担当している子供向けの人形劇の主人公、ウサギのロチェスターが、あまりの怠慢のせいで首になったばかりだった。何でもいいから雑用でもないかと面接を受けたグレッグを、ギルとプロデューサーのアリソンは勘違いして役の面接に来たものだとばかり思って、グレッグの採用を宣言してしまう。かくして番組の新スター、グレッグ・ザ・バニーと、そのマネージャー、ジミーの新コンビが誕生するが‥‥
_______________________________________________________________
毎年、シーズンの途中で視聴率の悪い番組はキャンセルされ、代わりに新しい新番組が編成されるのだが、今年ほどそのミッドシーズンの新番組が不作な年はなかった。どのネットワークも2、3本、時には4、5本の新番組を年明けから5月くらいまで編成してくるのだが、今年に限っては、どれもこれも当たらない。今ミッドシーズンは例年に較べるとむしろ新番組の数は多いくらいなのだが、なぜだかことごとく不評である。
昨年は、このミッドシーズンでの差し替え番組として始まりながらヒットしたABCの「ザ・ジョブ」や「マイ・ワイフ・アンド・キッズ」、既にキャンセルされはしたもののそれなりの話題を提供した「X-ファイルズ」スピンオフの「ザ・ローン・ガンメン」等、それなりに話題作は事欠かなかった。一昨年も、これは放送が始まったのが年明けだったというだけで、差し替え番組ではないのだが、やはり年が明けてから始まった「マルコム・イン・ザ・ミドル」や、「タイタス」、それに「サバイバー」なんて超強力な番組があったせいで、シーズン中ずっとそれなりに新番組の話題が絶えなかったという記憶がある。
しかし、今年はこれまでに既に新シーズン開始時に匹敵するような数の新番組が年明けから編成されているというのに、最も話題になったのがABCのリアリティ・ショウ「ザ・バチェラー (The Bachelor)」1本きりという、なんとも寂しい状況が続いている。実はそれなりに話題になっている新番組はあるにはあるのだが、それが地上波ではなく、ケーブルのMTVが編成するリアリティ・ショウ、「ジ・オズボーンズ (The Osbournes)」であったり、同じくケーブルのFXが編成するドラマ「ザ・シールド (The Shield)」だったりするのだ。特に「オズボーンズ」の最近の人気沸騰振りはすごい。だがしかし、いったいネットワークの番組はどうなっているんだ。
現在、ネットワークがミッドシーズンに編成した新番組で成功していると断言できる、あるいは、これは面白いと全面的に推薦できる番組は、はっきり言って、ない。視聴率という数字の上ではCBSの「ベイビー・ボブ (Baby Bob)」が一歩リードしているが、いかんせん小粒という印象は拭えない。しかし、視聴率という点を抜きにして私個人の意見で言うと、このミッドシーズン、ドラマ、シットコム、リアリティ・ショウひっくるめて最も面白い番組は、FOXが編成した「グレッグ・ザ・バニー」ではないかと思う。
FOXは「グラットン・ボウル」や「セレブリティ・ボクシング」等、最近はとかく下品なリアリティ・ショウばかり編成しているという印象があるが、4大ネットワークでは最も新参のネットワークということもあり、ドラマやシットコムでも、古参のネットワークでは編成は無理だろうなあと思える、流行の先端を行く、とんがった番組を編成してくる。今流行りのラフ・トラックなしのシットコムの先鞭をつけたのはFOXの「マルコム・イン・ザ・ミドル」だったし、ネットワークでプライムタイムに「シンプソンズ」なんてアニメーションを編成しているのはFOXだけだし、今シーズン最も話題となった、番組内と現実の時間進行のスピードが同じ「24」なんて思い切った番組を編成するのも、FOXならではである。
しかし特に最近FOXらしさを出しているのは、リアリティ・ショウを別にすれば、シットコムであろう。黒人コメディアン、バーニー・マックを起用した「バーニー・マック・ショウ」を筆頭に、スーパーヒーローのTVキャラクターを主人公にした「ザ・ティック (The Tick)」(残念ながら既にキャンセルされたが)、コナン・オブライエンがホストの深夜トーク番組「レイト・ナイト」で、オブライエンと共に進行を担当していたアンディ・リクターが主人公の「アンディ・リクター・コントロールス・ザ・ユニヴァース (Andy Richter Controls the Universe)」等は、見た瞬間からこれはFOXだろうと断言できる、独特のキッチュなオフ・ビートな感覚を匂わせていた。そして、そういうFOXくささが最も顕著に出ている例が、「グレッグ・ザ・バニー」ではないかと思う。
「グレッグ・ザ・バニー」は、人形 (パペット) が主人公のシットコムである。そのパペット、ウサギのグレッグは、ひょんなことから子供向けのTV人形劇 (「セサミ・ストリート」みたいなものだ) に主演することになる。そのグレッグと周りの世界を描くシットコムなのだが、パペットが喋るのはさも当然という風に、あまりにも堂々とパペットと人間がやりとりしており、そこがまずおかしい。パペットの世界にも人気の大小による序列やヒエラルキーがあって、下の者は上にごまをすったり、おべっかを使ったりする。パペットでも当然人気が落ちると飛ばされてしまい、だからこそグレッグが大役を射止めたりできる。そういうのをいかにも自然に当たり前のものを当たり前に描写しているというように演出しているのだが、このオフ・ビートでありながら流行の最先端みたいな感覚は、FOXの独壇場である。
多分パペットは手ぐるみ (と言うのか、要するに手に嵌めるやつだ) だと思うが、普通に全身を映すと、下からパペットを動かしている人物の手が見えてしまう。それを色々とアングルを変えたりしてパペットの下半身は画面に映らないように工夫している。それでもどう見ても身長50cmを上回るとは到底思えないようなパペットが車を運転していくのを見ると、それだけでもなにやらそこはかとおかしい。こういう、パペットと人間を同列に扱い、コミュニケーションがとれるものだという前提をあくまでも大真面目に肯定しておく姿勢が、とにかくなにやら遊び心をくすぐるのである。
その主人公グレッグをおいといて、人間の方を演じているのは、グレッグの友人ジミーにセス・グリーン。実に色んなところで見かける、お笑い系統の若手ではジェイソン・ビッグスを凌ぐナンバー1の売れっ子という印象があるが、実は私が最もよく覚えているグリーンは、それほどお笑いに徹していたわけではない「バフィ 恋する十字架」に出ていたグリーンである。性格のよさそうな二枚目半的なところが人気のある理由なんだろう。ジミーの父親兼、グレッグが主人公のTV番組「スウィートナックル・ジャンクション (Sweetknuckle Junction)」監督のギルに扮するのが、「アメリカン・パイ」のユージーン・レヴィ。番組プロデューサーのアリソンに扮するのが、一時「サタデイ・ナイト・ライヴ」にレギュラー出演していたサラ・シルヴァーマン。グレッグの声は、この番組の製作総指揮でもあるダン・ミラノが担当している。
実は「グレッグ・ザ・バニー」は今回が一からのオリジナルというわけではなく、過去、インディ映画を専門に放送するIFCチャンネルで、これから放送する映画の前置きを述べるキャラクターとして既に登場していたそうだ。そう言われてみると、そういえば、確かにいたいた、ヘンなくだらないウサギの人形が、なぜだかインディ映画の解説兼紹介をしており、こんなつまらないもの早くやめればいいのにと思ったものだった。あまりにもつまらなかったから、そんなの見たのも忘れていた。あいつだったのか。それが自分の番組に主演するようになると、独自のオフ・ビート感覚を撒き散らして、わりといいではないか。うーん、あんなヘンで、面白くもないキャラクターを起用してそれなりの番組にして見せた今回のFOXの判断は、英断と言えるんだろう。
