3日目終了時点で首位は14アンダーのジェフ・スルマンだが、1打差でそのすぐ後ろに丸山茂樹の名もあり、期待してしまう。83年のハワイアン・オープン (現ソニー・オープン) で優勝した青木功以来、18年ぶりにPGAツアーで優勝する日本人ゴルファーとなるか。そしたら日曜日、TVをつけたらいきなり8番パー4で第2打を直接カップ・インさせてイーグルを奪い、10番パー4でもバーディをとって18アンダーとなり、15アンダーで既にプレイを終えている2位のJ. P. ヘイズに3打差をつけて首位に立った丸山の姿を見せられる。8番のイーグル・ショットはピンに当たって直接入らなかったら、グリーンをオーヴァーしたかも知れないショットだった。ツキも丸山に味方しているようだ。これはひょっとしたらひょっとして本当にやってくれるかも。


しかしそうは簡単に問屋が卸すはずもなく、11番パー3、丸山のあわや池ぽちゃというティ・ショットがバンカーにつかまり、難しい角度からの第2打はバンカーを出ず、結局ボギー。その後徐々に差を詰めてきたのは、まだ若いチャールズ・ハウエル3世。ハウエルは最終日、11アンダーとスルマンに3打差、丸山には2打差でスタートしたのだが、バック9に入って連続してバーディをもぎ取り、いつの間にやら丸山の後ろにぴたりと着けている。スルマンや、丸山と同じ13アンダーで最終日を迎えたハリソン・フレイザーやケニー・ペリーは調子が今一つでスコアを伸ばせなかったため、勝負はバック9のそのまた最後の数ホールに入り、完全に丸山とハウエルの二人に絞られる。丸山頑張れ。


TVのアナウンサーがマルヤマ、マルヤマと繰り返し言うのを聞きつけて、普段ならゴルフなんて歯牙にもかけないうちの女房も、なんだなんだといつの間にやら私の側に陣取って、食い入るようにTVを見ている。女房はほとんどゴルフに興味は示さないのだが、私がいつも見ているのでどうしても主要なゴルファーの名は覚えてしまうようで、私がTVを見ていると、たまに今日はラヴちゃんの調子はどう? フィジー (シングのことだ) はどうしてる? なんて訊いてくる。門前の小僧というのは、やっぱりあるよなあ。


その女房が、手の平に汗までかいて緊張する、緊張すると言いながらTVを見ているので、私も釣られて段々緊張してきてしまった。あんた、これはオリンピックじゃないんだぞ。いきなり国粋主義者にならんでくれ。とは思いつつも、私もやはり丸山に頑張って欲しいので、応援にも身が入る。しかし丸山はバック9に入って奪ったバーディは、10番の後は15番パー5だけで、18アンダーからはスコアは伸びない。一方、順調にバーディを重ねるハウエルは、最終18番パー5で、あわやイーグルと思えたフリンジからのパットでバーディをとり、これで15、16、17、18番と連続バーディで、ついに18アンダーで丸山に並ぶ。


一方、18アンダーのまま18番を迎えた丸山は、第2打の3ウッドでのショットが、なんとグリーン右の観客席に飛び込む完全なミス・ショットとなってしまう。おいおい、ここまで来て大ポカかよ、まさかこれで逆転負けなんてことにならないだろうな? ああ、でもいくら日本で何勝もしていようとも、PGAでの優勝とは重みが違う。ツアー未勝利のゴルファーがリードして最後まで来て、最後の最後で崩れて沈んでいったのをこれまでいったい何度見てきたことか。丸山もやはりそのままずるずると行ってしまうのか。


ボールをドロップした後の丸山の第3打は無事グリーンに乗るが、難しい下りの15フィートを残す。そして丸山はこのパットを2フィートもショートさせてしまう。これまでショートなんてパットは一度もなかったのに、流石にここへ来て手が縮こまったか。しかも次のパー・パットは外しごろの下りの2フィート。ひえーっ、本当にやばいじゃん。これ外したらハウエルの優勝が決まってしまう。これまで結構にこにこしていた丸山の顔が超シリアスに。もしかしたら、これ、本当に外すんじゃないだろうな。


しかし丸山は慎重にこれを沈め、勝負は丸山とハウエルのプレイ・オフに。ふう、緊張するぜ。またまた18番で行われたプレイ・オフは、ハウエルがティ・ショットを左ラフに入れてしまったために、刻んで3オン狙い。丸山は2オンを狙うが、今度はグリーンをオーヴァーして深いラフの中に入ってしまう。もしかしたら120ヤードの第3打をフェアウェイから打てるハウエルの方が有利かも知れない。しかしハウエルはその第3打をロブ・ウェッジで打ってショートさせ、グリーン手前のラフに入れてしまう。一方、丸山は難しいラフからの下りのチップ・ショットをきっちりとピン左5フィートに寄せ、今度こそ完全に丸山有利。ハウエルのラフからの第4打は、エッジをラフに食われてホールまで7フィートも残し、次のパットも外してボギーとなった時点で、5フィートから2パットで優勝の丸山の勝ちは確実になった。しかし丸山はそのパットをきっちりと沈め、バーディで有終の美を飾った。日本人がPGAツアーで優勝するのは青木以来だが、それはハワイでの話で、アメリカ本土で日本人ゴルファーが優勝するのは、後にも先にもこれがが初めてのことである。今年はイチローといい、丸山といい、日本人アスリートがアメリカでも活躍している。頼もしいなあ。







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グレイター・ミルウォーキー・オープン

2001年7月12-15日   ★★★

ウィスコンシン州ミルウォーキー、ブラウン・ディア・パーク・ゴルフ・コース

 
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