Graceland   グレイスランド

放送局: USA 

プレミア放送日: 6/6/2013 (Thu) 22:00-23:00

製作: FOXTVステュディオス

製作総指揮: ジェフ・イースティン 

出演: アーロン・トヴェイト (マイク) 、マニー・モンタナ (ジョニー)、セリンダ・スワン (ペイジ)、ブランドン・マクラーレン (DJ)、 ヴァネッサ・ファリート (チャーリー)、ダニエル・サンジャタ (ブリッグス)  

  

物語: カリフォルニアの海沿いの一等地にグレイスランドと呼ばれる国の施設があった。元々はドラッグ・ディーラーの家だったのを押収し、政府がFBIやDEA等でアンダーカヴァーとして動くエージェントのための住居/教育施設/セイフ・ハウスとして利用していた。そこへ新しくFBIの養成機関を卒業してきたばかりのマイク (アーロン・トヴェイト) が配属される。やる気満々でLAに着いたマイクだったが、空港で何時間も待たされた挙げ句現れたのは、エージェントというよりもお調子者のジョニー (マニー・モンタナ) だった。グレイスランドでマイクに与えられた部屋は、ドラッグ・ディーリングの現場を押さえるための囮調査の最中にオーヴァードースで倒れたエージェントの部屋で、同居するガールフレンドのペイジ (セリンダ・スワン) は、部屋のものには一切触れるなと釘を刺す。他にもICEのDJ (ブランドン・マクラーレン)、FBIのチャーリー (ヴァネッサ・ファリート) ら、住んでいるのは曲者ばかり。グレイスランドを束ねているのはFBIの伝説的存在のブリッグス (ダニエル・サンジャタ) だったが、過去のことはあまり喋りたがらなかった‥‥


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Graceland


グレイスランド   ★★1/2

USAのドラマ群は、だいたいが軽めのアクション・ドラマと決まっている。「救命医ハンク (Royal Pains)」のようなアクションというよりもドラマ重視の番組もあるが、「バーン・ノーティス (Burn Notice)」を筆頭に、「コヴァート・アフェアーズ (Covert Affairs)」、「スーツ (Suits)」、「サイク (Psych)」、「ホワイト・カラー (White Collar)」、「ダニーのサクセス・セラピー(Necessary Roughness)」と並ぶUSAの基本は、やはりライト・アクションだ。 

 

しかし「ハンク」と並んでチャンネルを代表していた「バーン・ノーティス」も今季限りと、USAはそれに代わる新たな新番組の構築を迫られていた。その期待を大きく背負っているのが、「グレイスランド」だ。 

 

グレイスランドとは、ポール・サイモンのクラシック・アルバム‥‥のことではなく、アメリカ人なら誰でも知っている、エルヴィス・プレスリーのホームを指す愛称だ。カリフォルニアのあるドラッグ・ディーラーがプレスリーの大ファンで、そのため海沿いの自宅をそう呼ぶようになり、その後政府がその家を押収して後もその別称だけは残ったまま、主としてアンダーカヴァーで捜査活動を行うエージェントの居住施設として利用されるようになった。 

 

最初、なんか現実味のない設定だとばかり思っていたのだが、この話、実話を元にしているそうだ。既に施設自体は存在しないそうだから公けにしてもいいのだろうが、しかし、思わず本当かと思ってしまう。だいたい、かなり縄張り意識が強いはずの政府の取り締まり機関のエージェントを一つ屋根の下で生活させるという発想自体、ほとんど眉唾に聞こえる。 

 

FBI、DEA (Drug Enforcement Administration: 麻薬取締局) くらいなら聞いたことがあるが、ICE (Immigration and Customs Enforcement: 入国税関管理局) ってのは、今回初めて聞いた。ま、入出国の水際である税関にその種の機関があってもおかしくはないが、しかし実際に耳にするのは初めてだ。そんなマイナーな機関のエージェントがいるくらいなら、ATF (Bureau of Alcohol, Tobacco, Firearms and Explosive: アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局) のエージェントもいてもいいんじゃないか、それとも管轄違いか、と茶々を入れたくなってしまう。 

 

それで、その共同生活しているエージェントたちが何をしているかというと、結構思い思いに内政不干渉で暮らしている。だいたい大学の寮生活そのままだ。昼間っから酒飲んでいることもあれば、特に仕事もない時は、当然の如く海に繰り出してサーフィンなんかしている。いい身分だ。あんたらがそう自堕落に暮らしている金は我々の税金から出ているんだろう、と誰だって思うと思う。


グレイスランドは、一見すると海沿いに建ち並ぶ家々の一軒に過ぎない。カリフォルニアのマンハッタン・ビーチという場所柄、民家とはいえ高級別荘のような趣きはあるが、それでも両隣りは民家が軒を連ねている。隣りの家の壁まで3m離れているかどうかの間隔で、延々と波打ち際に家が建っている。


そういうところで、基本的に隠密行動をとらなければならないはずのアンダーカヴァーの諜報活動やその他諸々の仕事が行えるものなのだろうか。今時、誰も隣りのことなんか気にしてないということはあるかもしれないが、それでも、あの家、なにやら胡散くさそうな若い男女が日中深夜の区別なく始終出入りしている、くらいは感づかれるだろうし、時には外で隣りの住人とばったり鉢合わせすることだってあるに違いない。挨拶くらいはするだろう。それで少しくらい立ち話とかしないか? 怪しく思われないか?という、やはりこれが現実にあったことという認識がなければ、俄かには信じ難い設定なのであった。こういう施設が、2000年代に10年くらい続いたらしい。


グレイスランドに住むエージェントたちの中で、リーダー格と言える立場にいるブリッグスに扮するのがダニエル・サンジャタ。FXの「レスキュー・ミー ((Rescue Me)」の時はまだまだ彼も新米で、デニス・リアリーにおちょくられる立場だったのが、成長した。グレイスランドに新しく配属される、アカデミーを卒業したばかりの新エージェント、マイクに扮するのが、「レ・ミゼラブル (Les Miserables)」のアーロン・トヴェイト。この二人が主人公格で、むろん話はその他のグレイスランドに住む面々も交じえての群像アクション・ドラマとして機能する。


いかにもUSAらしいライト・アクションで、そこそこヒットしそうな気がする。しかし、どうも真面目に仕事しているというよりは、飲み会とサーフィンの合間に手すきの時に片手間で仕事しているように見えるのは、もちろんカリフォルニアの海沿いの一等地に住めない者の僻みなのだった。










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