Gone


ファインド・アウト (ゴーン)  (2012年3月)

ジル (アマンダ・サイフリッド) はかつて連続殺人犯の毒牙にかかりかけたが、すんでのところで脱出に成功して難を逃れたという過去を持っていた。しかし森の中から命からがら脱出しても、彼女を閉じ込めていた古井戸の様な場所がどこかを警察に説明することができず、彼女が捕えられていたというのは狂言じゃないかと思う者もいた。ジルは自分の証言が狂言でないことを証明するために、開いている時間を使って、地道に広い森の中をしらみ潰しに踏破して、自分が監禁されていた場所を特定しようとしていた。事件以来引っ越してセキュリティには気を使っていたジルだったが、そのジルの周りにかつて彼女を誘拐監禁した男が出没する徴しが認められる。しかし殺人犯は、ジルと間違えて妹のモリー (エミリー・ウィッカーシャム) を誘拐していく。そして今度もジルの懇願も虚しく警察は調査に及び腰だった。ジルは単独でモリーを助け出すことを決意する‥‥


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アマンダ・サイフリッドが旬だ。昨年から今までの間に主演作が「赤ずきん (Red Riding Hood)」「Time/タイム (In Time)」、そして「ゴーン」と、ハリウッド映画の主演作が3本もある。昨春はHBOドラマの「ビッグ・ラヴ (Big Love)」の最終回にもちらを顔を出していたのを覚えているから、かなりの頻度で目にしている。


しかもこれは私が彼女の最近の活躍に気づいてからのもので、実際には彼女は私がほとんどカヴァーしていないラヴ・ロマンスやラヴ・コメにも以前から多く出演しており、要するに近年、彼女はかなり売れっ子だ。あの一度見たら忘れられない印象的な眼のことを考えれば、それも当然かもしれない。大きな目でうるうるされたら、ラヴ・コメだろうがホラーだろうがかなり訴求力は強い。一時ジェニファー・ラヴ・ヒューイットが、ラヴ・コメにもホラーにも両方で重宝されていたのと同じだ。


「ゴーン」でサイフリッドが扮するのは、かつて連続殺人鬼に誘拐されたが、運よく命からがら逃げだすことができ、しかし、いまだにその時の経験がトラウマになって残っているという女性ジルだ。ただしジルはがむしゃらにその場から逃げ出すことで精一杯だったので、後になっても自分が監禁されていた場所を特定することができず、そのため警察は、もしかしたら彼女が誘拐監禁されていたというのは狂言だったのではないかと疑っていた。


ジルは自分が正しいことを証明するため、暇な時間を見つけてはその辺と思しき森の中を歩き回ってその場所を探していた。ジルはウエイトレスをして生計を立てており、学生の妹モーリーと同居していた。ある時、モーリーと連絡がとれなくなる。再度ジルをつけ狙っていた犯人が、家にいるのがジルだと思い込んで誤ってモーリーの方を誘拐したのだ。警察に訴えるジルだったが、またかとほとんどまともに話を聞いてもらえず、ジルは単独で犯人を捜し出してモーリーを助け出す決心をする‥‥


とにかく前半から中半部にかけての雰囲気作りは非常にいい。冒頭、何の説明もなく森の中を歩き回るジルをとらえるシークエンスは、なぜ、なんのためにという見る者の好奇心をくすぐるし、湿った森の雰囲気もばっちりだ。舞台となっているポートランドはカリフォルニアの北に位置しており、カリフォルニアほど常に太陽が燦々と輝いている町ではなかろうが、それでもここまでいつも湿っていそうな町でもあるまい。


近年この辺を描いた作品というと、「ブラックサイト (Untraceable)」「ア・ヒストリー・オブ・バイオレンス (A History of Violence)」等、やはり湿ったイメージの作品が多いが、最も印象的だったのは、近場のシアトルが舞台の、昨年のAMCの「ザ・キリング (The Killing)」だ。「キリング」の場合は徹底して雨ばかりの町であるように舞台設定していたが、「ゴーン」もかなりそれに近い。逃げ回るジルが何度も顔を隠すようにフードを被るのだが、常にフードつきのコートを着ているという設定が違和感なくはまる。考えたらサイフリッドは「赤ずきん」でも当然赤ずきんを被って顔を隠していた。フードを被ることであの印象的な目を隠すというよりも、より効果的に目を見せる逆の演出効果がある。


雰囲気醸成が見事な「ゴーン」なのだが、後半失速するのが惜しまれる。致命的なのがここまでジルを引きずり回した犯人が、クライマックスで今一つ冴えないというか怖くないというか結構バカみたいで盛り上げきれないところで、ここまで引っ張って、もったいないと思ってしまった。こんな簡単に女の子から逆襲を食らうやつが、警察の目をかいくぐって連続殺人なんてできるか。


警察も、特にウェス・ベントリー扮するフードがいかにも活躍しそうなお膳立てでありながら、まったく肩すかしの期待外れ。一方のダニエル・サンジャタ扮するパワーズが、こちらは一見役立たずの捨てキャラ、そして最後まで役立たずのままという、なんとも冴えない役どころ。その相棒役のロンスデイルに扮するのはキャサリン・モーニグ。印象的なのが、ほとんど脇ですらない1シーンのみの怪しげな人々で、特に鍵屋の胡散くさい父子に扮するテッド・ルーニーとジョエル・デイヴィッド・ムーアは、かなり印象に残る。


要するに配役のチョイスにそつがなく雰囲気作りもうまいとなれば、結構演出力もあることを証明している。監督はブラジル出身のエイトール・ダリア。ついでに脚本家も調べてみたら、アリソン・バーネットは「ブラックサイト」の脚本も書いていた。IMDBでは現在の居住地は書いてなかったが、この辺に住んでいたことがあるのは間違いないと思われる。









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