ゴースト・マイン   Ghost Mine 

放送局: Syfy 

プレミア放送日: 1/16/2013 (Wed) 22:00-23:00 

製作: 51マインズ 

製作総指揮: マーク・クローニン、デイヴィッド・キャプラン、ジェイ・ブルーンク 

出演: クリスティン・ルーマン、パトリック・ドイル 

 

内容: オレゴンの廃鉱でゴールドを発掘すると共に心霊現象を調査する。


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Ghost Mine


ゴースト・マイン   ★★1/2

近年アメリカTV界のリアリティ・ショウで流行しているサブ・ジャンルに、過酷な労働環境下で賃金を得たり、一攫千金を狙う男たち (稀に女もいないこともない) に密着して、その一部始終を記録するというものがある。 

 

この嚆矢が、ディスカバリー・チャンネルの「ベーリング海の一攫千金 (DeadlIest Catch)」だ。極寒のベーリング海で、ほとんど命と引き換えにカニ漁に従事する者たちに密着し、ディスカバリーを代表する人気番組の一つとなった。 

 

その後このジャンルには、やはり極寒の北の地でトラック輸送に従事する者たちに密着するヒストリー・チャンネルの「アイス・ロード・トラッカーズ (Ice Road Truckers)」や、石油を掘り当てようとする者たちに密着するトゥルーTVの「ブラック・ゴールド (Black Gold)」、石炭発掘のスパイクの「コール (Coal)」、山奥での木材伐採をとらえたヒストリーの「アックス・メン (Ax Men)」等、様々な3K仕事に焦点を当てた番組が次々に現れた。 

 

近年、このサブ・ジャンルとして定着しているのが、金、ゴールドの発掘に取り組んでいる者たちに密着する番組で、ディスカバリーがアラスカでゴールド発掘に余念がない者たちをとらえた「ゴールド・ラッシュ (Gold Rush)」を成功させて以降、数多くの類似リアリティ・ショウが編成されている (番組が編成された当初は「ゴールド・ラッシュ・アラスカ (Gold Rush Alaska)」という番組名だったが、現在では「アラスカ」は削除されている。)  また、ゴールドだけではなく、ダイヤモンドやその他の貴金属の発掘、さらには沈没した船の中から宝の山を引き揚げるなんて番組もある。 

 

「ベーリング・シー・ゴールド (Bering Sea Gold)」ディスカバリー 

「ゴールドファーザーズ (Goldfathers)」ナショナル・ジオグラフィック 

「ジャングル・ゴールド (Jungle Gold)」ディスカバリー 

「バマゾン (Bamazon)」ヒストリー 

「ロスト・トレジャー・ハンターズ (Lost Treasure Hunters)」アニマル・プラネット 

「ダイアモンド・ダイヴァーズ (Diamond Divers)」スパイクTV 

「シルヴァー・ラッシュ (Silver Rush)」ディスカバリー 

 

たぶんに「ゴールド・ラッシュ」成功の最も大きな理由は、番組のテイストが、独立独歩、あるいは一攫千金といった、山師的なアメリカの伝統的なフロンティア・スピリットに合致していることにあると思われる。また、ヒストリーの「ポーン・スターズ (Pawn Stars)」に代表される、お宝発掘リアリティ・ショウのブームも、このジャンルの躍進の一助になっている。現在、少なくともアメリカのTV界においては、19世紀以来と言えるゴールド・ラッシュが起きているのだ。 

 

他方、ゴールドものとは無縁だが、以前から根強いファンを持つリアリティのジャンルに、ゴーストものがある。ゴースト、つまり幽霊との遭遇を求めて心霊スポットを訪ね歩いたり、ゴーストの存在を科学的に実証しようとしたりする番組で、ディスカバリーの「ゴースト・ラボ (Ghost Lab)」とSyfyの「ゴースト・ハンターズ(Ghost Hunters)は、このジャンルを代表する2強と言える。TLCの「ロング・アイランド・ミディアム (Long Island Medium)」みたいな、よくパロディ・ネタに利用されるキワモノ番組もある。 

 

「ザ・ホーンティング・オブ‥‥ (The Haunting of...)」バイオグラフィ 

「ゴースト・インターヴェンション (Ghost Intervention)」TLC 

「ザ・デッド・ファイルズ (The Dead Files)」トラヴェル 

 

さて、ここからが面白くなるのだが、そこである者が、では、このゴールドものとゴーストものを融合させて一つの番組を作ってみたらどうなるかと考えた。思わず、番組概要を読みながらうぐっと咽喉を詰まらせてしまったのだが、ちょっとこの発想はすごい。 

 

考えたら、鉱山や荒れた海、深海で働く者たちは迷信深く、験を担いだり、吉凶を気にし、山の神、海の神を拝むはよくあることだ。そういう場所ではちょっとし たことが命取りになるから当然だろう。夜になると周りは都会の明かりとは無縁の大自然の辺境で、当然、そういう心霊現象の一つや二つは皆経験している。3K職場は、同時に心霊スポットになり得る。廃鉱なんて、実はいかにも心霊実験にもってこいの場所だ。 

 

そこで今回Syfyが編成したのが、事故が相次いだために呪われているとして80年前に廃鉱となった、オレゴン州の山奥のクレセント・マイン (Crescent Mine) に、いまだに一攫千金を狙う山の男、そして心霊現象の研究者を集め、ゴールドを発掘すると共にあわよくばゴーストも発見してしまおうという、非常に虫のいい目論見を抱いた番組、その名も「ゴースト・マイン」なのであった。 

 

チームは6人のヴェテランと2人の新人炭鉱夫、そして2人の心霊現象研究家の10人から構成される。あるヴェテラン鉱夫なんて、ヴェテランというよりも一線を退いてかなり月日の経っている者を強引に口説いて連れてきたという感じで、メンツにヴァラエティを与えたかったというよりも、単純に人集めに苦労したんだなという印象の方が強い。そりゃ、さすがにこういう番組に率先して出たがる者はあまりいないだろうと思う。 

 

また、心霊研究家のクリスティンとパトリックの二人は、当然のことながらチームから浮いている。この二人がいることで場の空気を乱し、山の神の怒りを買いそうな気配がぷんぷんしている。他のメンツの二人を見る目も胡散くさげだ。その上クリスティンは女性だ。だいたい洋の東西を問わず、こういう危険な場所は女人禁制と昔から相場が決まっている。結局二人は、鉱夫たちが仕事をしてしない時にのみ山に入ることを条件に、調査を許される。 

 

クリスティンとパトリックは、最初の調査のために鉱山の中に降りていく。山には水晶が多く埋まっており、死んだ者のエネルギーを蓄える性質があるため、なんらかのきっかけによってそれが放出されるようなことがあると、霊として現れるという。クリスティンは漆黒の空間に向かって、私が女だから怒っているの? 赤毛だし、と訊いている。既にかなり胡散くさい雰囲気になってきた。それにしてもなんだかよくわからないセンサや測定機がごまんとある。 

 

翌日、新人鉱夫のジェイと共に坑道に降りていたヴェテランのダックは、山の神の起こす威嚇音 -- トミーノッカー -- を耳にする。迷信深いダックは引き返し、その後、坑道で小規模な落盤があった。ダックは即座に山を下りることを決意して荷物をまとめる。あれは本当にトミーノッカーの警告だったのか。 

 

クリスティンとパトリックは、坑道で彼らが録画録音した者を鉱夫たちに見せる。クリスティンが闇に向かって私が女だから怒っているのと訊いた後、微かな音声のざわつきがあり、どうやらそれはNoと言っているようだ。さらに録音を聞いていると、I’m hereという囁きが聞こえる。いずれにしても山の神は本気で怒っているようではなさそうで、男たちはもうしばらくゴールドを発掘するために汗を流すことを選択するのだった。 

 

とにかく最近始まったリアリティ・ショウの中では、「ゴースト・マイン」は胡散くささにおいては断トツだ。「ゴースト・ラボ」や「ゴースト・ハンターズ」も元々胡散くさい話であり、「インシディアス (Insidious)」でそのようなものが登場すると途端に話が嘘くさくなったように、パロディの対象になりやすい。「ロング・アイランド・ミディアム」なんて最初から自分をパロディだと思っているようなところがある。 

 

しかし「ゴースト・マイン」はこれまでのところ、結構マジだ。今後パロディ化していくか、それともこの路線を真面目に突き進んでいくかは不明だが、しかし、新たなリアリティ・ショウ製作の可能性は示唆したとは言える。この分だと来年あたり、ゴーストによる勝ち抜きダンス・リアリティ・ショウが製作されるかもしれない。 










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