放送局: ABC

プレミア放送日: 5/7/2000 (Sun) 19:00-21:00

製作: ジェイムス・ペンテコスト・プロダクションズ、カーズ・エンタテインメント

製作総指揮: ドリュー・キャリー、マイク・カーズ、ジェイムス・ペンテコスト

製作: テッド・ザカリー

監督: トム・ムーア

脚本: デイヴィッド・スターン

撮影: スティーヴン・カッツ

音楽(詞/曲): スティーヴン・シュワルツ

編集: ヴァージニア・カッツ

美術: チャールズ・ウッド

出演: ドリュー・キャリー(ゼペット)、ジュリア・ルイス-ドレイファス(青の妖精(ブルー・フェアリー))、ブレント・スピナー(ストロンボリ)、レネ・オベージョノワ(ブオンラガッツオ博士)、セス・アトキンス(ピノキオ)、アッシャー・レイモンド(リング・マスター)、アナ・ギャステヤー(ジョヴァンニ嬢)、ウェイン・ブレイディ(魔術師ラザード)


物語: 町中の子供から慕われている玩具作りの職人ゼペットの心残りは、自分に子供がないということ。自分のために木彫りの人形を組み立て、それをピノキオと名付けて心を慰めていた。ある日、夜中に青の妖精が現れ、日頃のよい行いの褒美としてピノキオにかりそめの命を与える。ゼペットの喜びも束の間、人間界の常識などまるで知らないピノキオは学校への登校初日から派手な喧嘩をして問題を起こし、家に帰れば嘘をつき、結果として鼻がぐんぐん伸びてしまう。思わずピノキオを叱りつけ、こんなはずじゃなかったと散歩に出たゼペットは、帰ってきてピノキオが家出したことを発見する。ピノキオが欲しい人形遣いの腹話術師ストロンボリにそそのかされたのだ。


しかし慌ててストロンボリの元に赴いたゼペットは、ピノキオは既にそこも逃げ出していて、巡業遊園地の振りをして子供をかどわかし、ロバに変えてしまう「プレジャー・アイランド」のあとをついていってしまったことを知る。ゼペットのピノキオ探しの旅が始まる。途中森の中に住む魔術師ラザード、完全な子供を造り出す機械を発明したブオンラガッツォ博士等と巡り合いながら、ついにプレジャー・アイランドを探し出し、ピノキオを見つけ出したゼペットだったが、タッチの差でピノキオはロバに姿を変えられてしまう‥‥


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ディズニー傘下のネットワーク、ABCは日曜夜7時から2時間、「ワンダフル・ワールド・オブ・ディズニー」という主としてディズニー・ブランドの番組を放送する枠を持っていて、だいたい半年に一回、定期的にミュージカルを編成する。ホイットニー・ヒューストン、ブランディ主演の「シンデレラ」、ブロードウェイ・ミュージカルを移植した「アニー」もこの枠で放送された。今回編成された最新のミュージカルが、この「ゼペット」である。ゼペットとはもちろん、「ピノキオ」に出てくるゼペットおじさんのこと。基本的にピノキオの成長物語であるこの作品を、逆に育ての親、ゼペットの視点から物語ろうという新しい試みが、この「ゼペット」である。


主演のゼペットに扮するのは、やはりABCのシットコム、「ドリュー・キャリー・ショウ」で人気のあるドリュー・キャリー。そちらでは黒髪短髪、太黒縁眼鏡でお馴染みのどちらかというとやや肥満型のキャリーが、こちらではブロンドのかつらを被ってゼペットに扮している。元々キャリーのミュージカル好きはよく知られているところで、「ドリュー・キャリー・ショウ」でもミュージカル仕立てで30分の番組を構成したりしている。それが高じての今回のミュージカル製作である。キャリーは製作総指揮にも名を連ね、意気込みを見せている。


で、「ゼペット」がどうだったかというと、最大のポイントである音楽は悪くないし、いかにもディズニー然としたセット、原色が飛び交うカラー、エネルギーに満ち溢れた子供たちが入り乱れる歌とダンスのシーン等、見どころは多いのだが、最大にして最悪の欠点が、キャリーが歌が歌えず踊れないということにある。「ドリュー・キャリー・ショウ」でのミュージカルは、元々シットコムでもあり、最初から視聴者の期待度も高くなく、そんなに歌が上手くもないキャリーを笑い飛ばすことに主眼が置かれている。それなのに歌が下手なことなどつい忘れて、自分の番組でもミュージカルをやるくらいだから大丈夫だろうと、キャリーにすべてを任せたのが運のつきである。


例えば、番組の中で私が最も気に入ったナンバーでは、キャリーと青の妖精役のジュリア・ルイス-ドレイファスとのデュエット/ダンスがある。 ♪Because it's just a magic... doesn't mean it's easy...と歌うこの曲は、アップテンポのくせに哀調があり、覚えやすいメロディ・ラインとも相俟って、思わずこの曲だけ3回繰り返して見たくらい気に入ったのだが、繰り返して見るということは細部まで気がつくということでもあり、キャリーの小さなミスが際立つということでもある。この時点で既にキャリーの歌はどうも‥‥と気づいているのだが、さらによく見ると、キャリーの動きは軽快とは言い難く、こうやってペアで踊られると、ダンスが下手なことまで暴露してしまっている。まずい。ここは見せ場なのに。


何度も練習し、編集で結構ごまかしているはずなのに、一瞬棒立ちになったり、ルイス-ドレイファスとの息が合わなかったりする。ルイス-ドレイファスは一応スムースに踊っているのだから、これは完全にキャリーの方に非がある。ペアのダンスの男役というのは、相手をうまくサポートしながらリードしないといけないはずなのだが、キャリーは決められた振り付けを踊るので精一杯。もちろん相方の手が飛び込んでくるところに最初から自分の手を伸ばしておいて、滑り込んできた手をキャッチするというのは大事なことなんだろうが、完全に一拍前から手を伸ばして待ってたりすると、違う、早すぎる、もうちょっと待って、リズムが合わないよ、と思ってしまう。ルイス-ドレイファスを持ち上げるシーンでも動きは華麗とは言い難く、違う違う違う、ここはもっと優雅に、心持ちスロウに、見せ場でタメをとらないでどうするの、と、気持ちは演出家さながらにはやるのであった。


しかし、キャリー以外のキャストはだいたい皆いいんだよねえ。一番意外なキャスティングは、やはり「となりのサインフェルド」以来ほとんど姿を見たことがなかったルイス-ドレイファスの起用だろう。ニューヨーク・ヤンキースのオーナー、スタインブレナーに「ぺちゃんこ顔」と評されたルイス-ドレイファスが妖精役ですか。しかも彼女、歌って踊れんの? と思っていたら、結構頑張っている。キャリーとの相対評価のせいでそう見えたのかも知れないが、しかし及第点はとっているだろう。わざとらしいセリフ回しのアクセントは鼻についたけど。


あと、これももうちょっとだったな、と思ったのが、ラップ界のスーパースター、アッシャー演じるプレジャー・アイランドのリング・マスター。元々ダンスはお手の物であり、その点では見事だったが、今度は逆に、彼は演技がまったくできない。いつも人に見られ慣れているはずなのに、歌うことと演じることは勝手が違うようで、その表情が変わらない能面づらで抑揚のないセリフを喋るな!と思ってしまった。


それ以外は、ほとんど完璧なキャスティングである。ピノキオに扮するのは9歳になるセス・アトキンス。97年のTV映画「誤診」で、病弱の少年役でメリル・ストリープと共演、既に芸達者なところを見せた。ここではうってかわって一時もじっとしていないお茶目な少年振りを見せる。しかも歌もうまい。惜しむらくは今回はピノキオが主役でないため、出番が少ないということだろう。人形遣いの腹話術師ストロンボリを演じるのは、「スタートレック: ネクスト・ジェネレイション」のブレント・スピナー。「フック」でダスティン・ホフマンが演じた悪漢船長にそっくりで、しかも似たような性格づけ。でも、こういうはちゃめちゃ振りはディズニー作品にはよく似合う。


学校のジョヴァンニ先生に扮するのは、なんと「サタデイ・ナイト・ライヴ (SNL)」のアナ・ギャステヤー。彼女が歌が上手いことは、以前「SNL」でサラ・マクラクランと共にギターを弾いて綺麗にハモったスキットを見て知っていた。彼女が出てきたので、驚きながらも当然何か歌うんだろうと思っていたら、歌はなしだった。そんなのあり?これでは何のために彼女をキャスティングしたのかまったく訳がわからない。もしかしたら歌うシーンもあったのだが、時間の関係上カットされたのではないかという気がする。


この番組の本当の主役とも言うべき音楽(作詞作曲)を担当しているのは、「ポカホンタス」、「ノートルダムの鐘」、「プリンス・オブ・エジプト」と、近年のアニメーション/ミュージカル界には欠かせない存在となったスティーヴン・シュワルツ。実は私はこの番組が大人版「ピノキオ」だと聞いた時、ディズニーのクラシック映画「ピノキオ」からの音楽を使うものだと思っていた。そしたら実は全編新曲だった。おかげで期待していた、もしかしたらディズニー映画最大のヒット曲「星に願いを」の新ヴァージョンが聴けるかと思っていたのがはぐらかされたが、でもシュワルツの仕事は一流であり、私の期待を補ってあまりあると言える。


監督はTV演出専門のトム・ムーア。80年代の「サーティサムシング」、「L.A. ロー」から始まり、90年代の「ER」、「アリーmyラブ」、「サドンリー・スーザン」、「フェリシティの青春」まで、シットコム、ドラマを含め、多くのヒット番組を演出している。ただし、今回は歌えない踊れないのキャリーの指導までは手が回らなかったようだ。撮影は「ゴッドandモンスター」のスティーヴン・カッツ。編集もやはり「ゴッドandモンスター」のヴァージニア・カッツ。もしかしたらこの二人は兄妹で、一緒に仕事をしているのではなかろうか。


周囲がこんなに頑張っているのに、やっぱり主役がぶち壊したんじゃあ話にならないよな。キャリーは今回製作総指揮も兼ねているわけだし、自分以外誰も責めるわけにはいくまい。はあ、彼にこんな下らないエゴがなかったらなあ。「シンデレラ」、「アニー」に続く新たなTVミュージカルの傑作ができていたことは間違いないのに。 







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Geppetto

ピノキオとゼペット   ★★★

 
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