GMA Day (GMA デイ) 

放送局: ABC 

プレミア放送日: 9/10/2018 (Mon) 13:00-14:00 

製作: ABC 

製作総指揮: ケヴィン・ワイルダーズ  

ホスト: マイケル・ストレイハン、サラ・ヘインズ 

 

内容: 「グッド・モーニング・アメリカ」のスピンオフ日中ヴァージョン。


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GMA Day


GMA デイ  ★★1/2

ABCの朝のニューズ/ヴァラエティ「グッド・モーニング・アメリカ (Good Morning America: GMA)」は、アメリカの朝を代表する番組の一つだ。4大ネットワークおよび多くのケーブル・チャンネルは毎朝同様のニューズ/トーク/ヴァラエティ系の番組を編成しているが、やはりGMAとNBCの「トゥデイ (Today)」が、その中でも頭一つ抜き出た双璧と言える。 

 

ただしGMAは、実は長い間視聴率という点では「トゥデイ」に一歩及ばなかった。近年GMAが「トゥデイ」に肉薄してきたのは、それまでの堅実なニューズ路線から、どちらかと言うと軽めなエンタテインメント路線に徐々に移行してきてからだ。 

 

そのことを決定的に知らしめたのが、昨年のマイケル・ストレイハンの新共同ホスト就任だ。元NFLプレイヤーのストレイハンは、一見こわもて、しかし笑うと顔が崩れて人好きのする愛嬌のあるパーソナリティが受け、ABCでGMAが終わった後に編成されている「ライヴ! ウィズ・ケリー&マイケル (Live! with Kelly & Michael)」で、ケリー・リパと共に共同ホストを担当していた。 

 

しかし昨年、ストレイハンがその「ケリー&マイケル」を辞め、GMAの共同ホストに就任するという発表があった。この時は共同ホストのリパに相談なし根回しなしの電撃発表で、関係者にかなり衝撃を与え、ごたごたが後を引いた。まだ、その時の余韻も冷めやらずという時に、渦中の人ストレイハンが、今度はそのGMAの日中スピンオフの新番組「GMAデイ」のホストに就任するという。 

 

GMAは、エンタテインメント色が強くなり始めていたとはいえ、まだ中心ホストは元大統領補佐官のジョージ・ステファノポロスとロビン・ロバーツであり、伝統的に政治関係にも強かった。それが元NFLプレイヤーのストレイハンが共同ホストになったことで、明らかにエンタテインメント色が強くなり、しかも近年のエンタテインメント志向と成績の好調さを鑑みるに、GMAはこの路線を推し進めるものと思われた。 

 

それなのに、そのGMAの新ホストに就任して1年も経たないストレイハンを、新しく編成する日中のGMAスピンオフに起用するという。そうか、ストレイハン、まだまだ新たなキャリアの道を模索していたかと思ったら、実はストレイハン、GMAを辞めて「GMAデイ」に移動するのではなく、GMAの共同ホストも勤めながら、「GMAデイ」を兼任するのだという。どうやらABCは、ネットワークではあまり見られない、白人にもアピールする黒人パーソナリティをもっとうまく使いたいと考えたようだ。 

 

いずれにしてもストレイハン、および同様にやはりABCの朝のトーク・ショウ「ヴュウ (View)」で共同ホストを担当していたサラ・ヘインズの二人を起用し、日中の、GMAより肩の凝らないもっとエンタテインメント化したトーク/ヴァラエティの「GMAデイ」を編成することが発表になった。 

 

実はGMAが日中にスピンオフを編成するのは、これが初めてではない。なんとなれば2012年に、当時のGMAホストだったジョシュ・エリオットとララ・スペンサーを起用して、午後2時から「グッド・アフタヌーン・アメリカ (Good Afternoon America: GAA)」を編成している。今回の「GMAデイ」は、これを下敷きにしていると言っていいだろう。 

 

一方、GAAは1シーズン限りの様子見的な番組編成という印象が強かったが、「GMAデイ」は明らかに今後も長らく続いていくことを意識して番組を製作している。さもなければわざわざGMAに移動して1年にもならないストレイハンや、「ヴュウ」で定着しているヘインズを持ってくることはなかったろう。 

 

実は「GMAデイ」が編成された午後1時台は、これまで7シーズンにわたって放送され、固定ファンがついていた食関係の話題中心のクッキング・リアリティ「ザ・

チュウ (The Chew)」が編成されていた。その共同ホストの一人で人気のあったイタリアン・シェフ、マリオ・バタリが昨年、MeeTooムーヴメントの波の中でハラスメント行為を糾弾され、番組を降ろされた。このことが「チュウ」キャンセルに一役買ったのは間違いないと思う。さもなければ、「チュウ」か、長寿ソープ・オペラの「ジェネラル・ホスピタル (General Hospital)」の、どちらかがキャンセルされる可能性が大きかった。どちらも生き残る確率は五分五分といったところだったと思うが。バタリのスキャンダルのおかげで「チュウ」がキャンセルされ、「ジェネラル・ホスピタル」が生き残った。 

 

さて、「GMAデイ」第1回は、冒頭、アメリカでは知らぬ者のないコメディ界の重鎮、ジェリー・サインフェルドの運転する水色のポルシェにストレイハンとヘインズが乗って、収録ステュディオのあるマンハッタンのタイムズ・スクエアに到着する。サインフェルドは現在、Netflixで彼のドライヴするクルマにセレブを乗せてコーヒーを飲みながらおしゃべりするという番組「ヴィンテージカーでコーヒーを (Comedians in Cars Getting Coffee)」を持っており、その延長線上にある演出だ。それにしても水色のポルシェか。 

 

ステュディオに着いて腰を落ち着けたストレイハンとヘインズがひとあたり番組第1回の謝辞と挨拶を述べた後の最初のコーナーは、産まれてこの方ずっと先天性の疾患のため病院暮らしだった赤ん坊が晴れて退院するのを、家族と共に祝福するというもの。栄えある第1回ゲストはファレル・ウィリアムズ。日中トークでは定番のクッキング・コーナーを担当しているのは、「チュウ」のカーラ・ホールだ。ホールもストレイハン同様黒人で、癖と人気のあるキャラクターなので、彼女を起用しない手はないと思われたのだろう。 

 

最後の音楽のコーナーで歌ったのは、NBCの「ザ・ヴォイス (The Voice)」第9シーズン優勝のジョーダン・スミス。てっきりファレルが歌も歌うものだと思っていたが、彼のやっているチャリティ事業を称えるためだけに喚ばれたようだ。スミスは元々小デブ体型だったが、さらに胴が膨らんで足元がすぼみ、顔がつやつやして、こういっちゃなんだがますます「怪盗グルー (Despicable Me)」シリーズのグルーそっくりになってきた。あれが天使の歌声というのがまたミソで、実はうちの女房は「ヴォイス」以来スミスのファンで、ちゃんとCDもダウンロードしてiTunesに入っている。 

 

番組第1回を見ての感想は、GAAの時より見れるというものだ。GAAはほとんど単なるエンタテインメント・ニューズとおしゃべり以上のものには見えず、私は一度見ただけで辟易してこんなものかと思ったが、「GMAデイ」は、うまくヴァラエティ化しており、言ってみればストレイハンがGMA以前にホストを務めた「ケリー&マイケル」に感じが近い。そのストレイハンが実際に「GMAデイ」ホストでもあるということも関係あるかと思うが、いずれにしても肩の凝らない軽いエンタテインメントとして、ほぼ仕上がっているという印象を受けた。ストレイハンとヘインズの掛け合いも「ケリー&マイケル」を思い出させ、悪くない。「GMAデイ」は今後も続いていけると見た。 

 









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