放送局: カートゥーン

プレミア放送日: 8/13/2004 (Fri) 19:30-21:00

製作: カートゥーン・ネットワーク・ステュディオス

クリエイター/製作総指揮/監督: クレイグ・マクラッケン

声の出演: ショーン・マークエット (マック)、キース・ファーガソン (ブルー)、トム・ケイン (ミスター・ヘリマン)、グレイ・デリスル (フランキー/ダッチス)、トム・ケニー (エデュアルド)、フィル・ラマー (ウィルト)、カンディ・マイロ (ココ/マダム・フォスター)


物語: 8歳のマックは13歳の兄テレンスにいつもいじめられてばかりいる。マックは想像上の友達ブルーを創造して現実逃避をしているのだが、ママは逃げているばかりではダメで、そろそろブルーとはお別れする時だとマックに言うのだった。その夜、ブルーはTVを見ていて、そういうふうにして自分を創造した主人から別れを告げられた想像上の友達が暮らす「フォスターズ・ホーム」の宣伝を目にする。翌日マックと共にフォスターズ・ホームを訪れたブルーは、ウサギの執事のミスター・ヘリマンや世話約のフランキー、そして想像上の友人たち、エデュアルドやウィルトらと出会うのだった‥‥


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現在、アメリカのアニメーションで勢力を二分しているのは、特に子供向けのアニメーションの分野で強いニコロデオンと、大人にも人気のある番組を多く揃えるカートゥーン・ネットワークが双璧だ。もちろんネットワークも早朝や日中、特に土曜の朝はアニメーションを編成しており、アニメーション・ファンが見るものには事欠かない。


その中で日本のいわゆるアニメのアメリカへの浸透は目を見張るものがあり、現在、20代未満でアニメの洗礼を受けていない人間はほとんどいないと思われる。津波のような「ポケモン」フィーヴァーは去ったが、すぐに「Yu-Gi-Oh! (遊戯王)」が現れ、その後もかなりの数の和製アニメが紹介されている。アニメ専門のアニメ・ネットワークなるヴィデオ・オン・デマンド (VOD) のチャンネルまで現れた。


ためしに覗いてみたら、なるほど、本当にアニメ番組ばかりがずらずらと並んでおり、あるわあるわ、「こみっくパーティー (Comic Party)」、「ナースウィッチ小麦ちゃん (Nurse Witch Komugi)」、「Angelic Layer」、「エヴァンゲリオン (Evangelion)」、「ピースメーカー クロカネ (Peace Maker)」、「魔術師オーフェン (Orphen)」等の番組が、「コメディ」、「ドラマ」、「アクション」、「SF」、「ガール・パワー」「ジャイアント・ロボット」「マーシャル・アーツ」等にジャンル分けされてずらりと並んでいる。


VOD番組だから、リモートのスタート・ボタンを押したらその瞬間から番組が始まる。これだけの番組のほとんどのエピソードが、部屋にいながらにして全部見れてしまうのだ。エア・チェックする必要すらない。便利っちゃあ便利だが、VODでアニメばかり見てたら、時間がどれだけあっても足りないだろうなあと思うのであった。今は試験的な試みだから無料で提供されているが、これもやがて有料になるんだろう。それにしても、ここに挙げた何倍もの番組が提供されているというのに、私が知っていたのは「エヴァンゲリオン」ただ1本のみだった。アニメ・ファンはこれらを本当に全部見ているのだろうか。


一方、もちろんおめめパッチリでマンガ的なキャラクターが何よりも大きな特徴の和製アニメとは異なり、何よりもデフォルメの仕方で差別化を図るキャラクターが特徴のアメリカ的アニメーションは、アニメに押されがちとはいえ、やはり根強い人気がある。FOXの「ザ・シンプソンズ」、ニコロデオンの「スポンジボブ、スクエアパンツ」、カートゥーンの「パワーパフ・ガールズ」等はその代表だろう。TLCの「ピープ」なんてのもある。また、そういう人気番組の中でも、ディズニーの「キム・ポッシブル」やMTVの「スパイダーマン」等のように、明らかにアニメの影響を受けている番組も現れてくるなど、アニメーションという分野は、さらに今後多様化が予想される。


今回放送の始まった「フォスターズ・ホーム・フォー・イマジナリー・フレンズ」は、「パワーパフ・ガールズ」の生みの親、クレイグ・マクラッケンが世に送る最新のアニメーションだ。絵柄を見てもわかる通り、「フォスターズ」は「パワーパフ」と印象が大きく異なる。デフォルメの効いた「パワーパフ」に較べ、「フォスターズ」の主人公とも言えるマックや相棒のブルーは、ごく標準的なマンガという感じの絵柄だ。そのため、私は最初この絵を見た時、「フォスターズ」は子供向けを揃えるニコロデオンの番組だとばかり思っていた。


しかも「フォスターズ」が、どちらかというと癖のあるアニメーションの方が多いカートゥーン・ネットワークの番組だと知った後も、今度は想像上の怪物的友だちの印象が「サムライ・ジャック」に似ていたため、もしかしたらカートゥーン・ネットワークで重宝されているゲンディ・タータコフスキーの新作かなと思っていた。ところがそれも違っていたわけだが、考えたらタータコフスキーだって、「サムライ・ジャック」と、彼の名を広めるきっかけとなった「デクスターズ・ラボラトリ」では、かなり絵柄が違う。アメリカのアニメーション製作の現場では、必ずしも番組クリエイターが絵柄を決めるわけではないため、実際の絵はクリエイターよりもアニメーション・ディレクターの影響の方が強かったりする。だから同じクリエイターが作る番組でも、番組によって絵の印象が変わってくるわけだが、この辺り、絵を見ればクリエイター/原作者がわかる日本のアニメ製作のシステムとは事情が大きく異なる。


「フォスターズ」は、兄にいじめられてばかりいるために、頭の中に友だちのブルーを空想して現実から逃避しているマックが主人公だ。ところが、ママはそんなマックに、もういつまでも小さな坊やじゃないんだから、もうブルーのような空想の中だけでの友だちとはおさらばしなさいと言う。マックとブルーはそのため、そういう、創造主の元を離れなければならなくなった想像上の友だちの面倒見を一手に引き受けている、いわば孤児院のようなフォスターズ・ホームを訪れる。


なんといっても、この、空想の中にしか住んでいないへんてこな友だちが創造主から見捨てられたために、そういう者たちを一堂に集めたというホームの設定がうまい。元々想像の中の住民なんだから、どんなへんてこなやつがいたって別に不思議はない。そいつは想像なんだから。そして子供というものにとっては、現実と想像の境界なんてあってないようなものだ。空想の友だちたちが住むシェルター。たまにここへ来て新しい空想上の友だちを引き取っていく子供たちもいる。こういう舞台設定を考えつくことができたなら、ほとんど番組の成功は約束されたも同然だろう。


そして実際、子供たちの想像上の世界に住んでいたという怪物/友だちの造型が、「フォスターズ」の印象を決定している。執事のミスター・ヘリマンはウサギから、ココはニワトリから連想して生まれてきたのだろうというのはすぐにわかるが、元バスケットボールの選手に見えるウィルトは、どうして片腕しかないのかよくわからず、マダム・フォスターなんてダリの絵からそのまま抜け出してきたようにしか見えない。やたらと目がでかいハムタローみたいなキャラクターは、和製アニメのパロディか。そういう有象無象の中でも特に、獅子舞いのような顔して実は繊細なエデュアルドのキャラクターが、印象としては抜きん出ている。こういうキャラクターって、この手の番組には不可欠だよなと思うのであった。


「フォスターズ・ホーム」では、現実と空想の境目がない。マックの空想上の友だちブルーは、空想の産物だからして本人以外には見えないはずなのだが、テレンスもママも当然のようにブルーのことを口にする。自分以外の他の人間から見えてしまっては、それはもはや空想上の逃避世界の友だちとは言えないんじゃないだろうか。しかし、子供にとっては頭の中の出来事は現実の世界と同じくらいのリアリティがあるということはわかるし、なんとなくこの設定を受け入れてしまう。そして、確かにこういう内容こそ、アニメーションというジャンルが描くのに最も適している題材に違いないと思わせてくれる。マクラッケンって、やっぱりうまい。






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フォスターズ・ホーム・フォー・イマジナリー・フレンズ   ★★★

 
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