Food Party   フード・パーティ

放送局: IFC

プレミア放送日: 6/9/2009 (Tue) 23:15-23:30

製作: ア・グリーンカード・プロダクション

製作総指揮: デビー・デモントルー、クリスティン・ルブラノ、ジェニファー・カサータ、ニック・カドナー、トゥー・トラン、エミリー・ワイドマン

製作: メロディ・ロシャー

監督: ザカリア・ダール

クリエイター: トゥー・トラン

出演: トゥー・トラン (ホスト)、ピーター・ヴァン・ハイニング、デイヴィッド・クロフタ、テイラー・デル、チャーリー・トゥー、ヴィナルド・フランシス、ダニエル・バクスター、マシュウ・フィッツパトリック


物語: トゥーはこれまでに何人もの相手とデートしてきたけれども、どれも成就しない。ある時トゥーは鏡を見て自分自身を最も知っているのは自分自身であることに気づき、自分と結婚することにする。無事式も挙げ、腕によりをかけて作ったご馳走の山の披露パーティが始まるが‥‥


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映画好き、それもマイナーなインディペンデント映画好きにとって、サンダンス・チャンネルとインディペンデント・フィルム・チャンネル (IFC) という二つのインディ映画専門チャンネルは、砂漠の慈雨のような存在だ。二つともせめてもう少し再放送の頻度が少なければ、ほんとに一日中チャンネルを合わせっぱなしにしておきたいところだ。


両方ともインディ映画をよく編成するという当然の共通点以外では、両者とも英国から輸入したシリーズものをよく放送しているという点が挙げられる。自分たちで製作するより安く上がるんだろう。最近ではサンダンスの特色はエコにあり、地球環境を考えるドキュメンタリー/リアリティ・ショウ関係をよく編成している。「グリーン・ポルノ (Green Porno)」なんてのもあった。オリジナル番組だけを見ると、サンダンスはどちらかというとディスカバリー・チャンネル系のプラネット・グリーンによほど近い。


一方のIFCは「Zロック (Z Rock)」や元FUSE (フューズ) で放送されていた「ザ・ホワイテスト・キッズ・ユー・ノウ (The Whitest Kids You Know)」、輸入ものの「ロング・ドア (Wrong Door)」、「モダーン・トス (Modern Toss)」等の、コメディ路線が多い。この中で最も人気のあるのは「Zロック」だろう。昼は子供向けパーティ・バンド、夜はドラッグとセックス漬けのハード・ロッカーを描くこのコメディは、ライト・ポルノ並みに裸が出てくる。今、アメリカで放送されている番組で裸の出てくる頻度が最も高い番組というと、ショウタイムの「カリフォルニケーション (Californication)」だろうが、それと結構タメを張るんじゃないかと思えるくらい一時期裸がよく出た。むろん異議はない。


この種のコメディ以外では、なんといってもアニメだ。現在IFCで放送されているアニメには、「ガンスリンガー・ガール (Gunslinger Girl)」、「ウィッチブレイド (Witchblade)」、「地獄少女 (Hell Girl)」、「バジリスク (Basilisk)」、「スピードグラファー (Speed Grapher)」がある。アニメーション番組専門のカートゥーン・ネットワークが放送しているアニメよりも、こちらの方がよほど数が多く、それらしい。いまやアメリカのアニメはIFCと、Sci-Fi改めSyFyチャンネルが月曜深夜に編成するアニメ枠「アニ-マンデイ (Ani-Monday)」(「ガンダム (Gundam)」や「ブラック・ジャック (Black Jack)」等を放送) なくしては語れない。


インディ専門のIFCは、こういうマイナー、カルト、キッチュという形容詞がつきやすいアニメと共通項が深いと言える。SF専門のSyFyでもアニメが珍重されているのは、同じ理由からだろう。それにしてもTNTで放送され、それなりにいけるかもと思ったが、主演のナンシー・バトラーのアル中リハブ入りで製作が打ち切られた「ウィッチブレイド」が、遠く日本でアニメ化されていたとは。ほとんど内容はオリジナルになっているらしいが。


話が逸れたが、そういうマイナー指向のIFCが編成するオリジナル番組が、通り一遍のものであるわけがない。そして「フード・パーティ」は、実際にちょっと内容を説明するのがほとんど不可能なくらい人を食っている。まずこの番組、いったいドラマかコメディかヴァラエティかパペット・ショウか、なんともはやカテゴライズするのに迷う。


番組はトゥーというアジア系アメリカ人の女の子がホスト役を務める、というか主人公で、彼女の日常生活を追う、みたいな内容だ。彼女以外は数人のレギュラーがかけもちで何役も務めていたり、あるいはパペットだったりする。一応それらしきストーリーはあるからドラマもしくはコメディなのだろうが、そう断言するのもためらわれる。


タイトル通り、毎回必ずパーティ、もしくはピクニックといった食に関するエピソードが挿入されるが、だからといって食関係番組では決してない。第一、それらの食材はすべて工作されたつくりものであって実物ではない。しかもまったくできはよくなく、全然うまそうには見えない。ついでに言うと番組セットはすべて素人の手作りみたいな印象を受ける。製作費との兼ね合いもあるだろうし、キッチュな味も狙っているだろうからそれは構わないが、しかし、そうやって作られた食べ物がおいしそうにはまったく見えないのは言うまでもない。


それにやはり、なんといっても一番強烈なのは、番組クリエイター兼主人公のトゥーのキャラクターだ。マレーシア生まれでアメリカ育ちのトゥーは、ただでさえアメリカでは幼く見られやすいアジア系というのみならず、実際にかなりの童顔で、背も小さい。完全にガキの体型なのだ。現在27歳だそうだが、同じアジア系の私が見てすら小学6年生といっても通用するんじゃないかと思うくらいだから、普通のアメリカ人が見たら本当に小学生にしか見えないだろう。


ついでに言うと、そういう童顔の子にありがちだが、可愛いのか可愛くないのかもよくわからない。顔がまだ固まってないからどうとでもとれる、みたいな印象を受けるのだ。可愛いと思えば可愛いし、ブスと思えばブスだ。そんな極めて童顔の女の子が、番組の中でかなり危ない話題に触れギャグを飛ばす。それをなんとも舌っ足らずなしゃべり方で言うもんだから、正直言ってかなり危なく感じる。ロリータ好きなら強烈に引き寄せられるんじゃないだろうか。


実際、番組第2回では海に来たトゥーは、裸になって海に潜るのだが、ここで彼女は本当に服を脱ぐわけではない。いや、服を脱ぐのだが、そうすると下から現れたのは、裸に見せるベージュの生地に胸のぽっくんのところに赤い模様、下腹部に陰毛を模したネコ面ワッペンを縫いつけた、これまた異様なセンスのヌード姿で、お前は本当にあそこに毛が生えているのかと疑惑を持たざるを得ないトゥーがこういう格好をすると、まったく危ないという印象を強く受ける。成人女子ポルノを見るよりよほどやばいという気がする。これを見てどこかで誰かが性犯罪に走りかねない。


昔、日本で「ウゴウゴルーガ」という子供向け番組の体裁を模したような、実はまったく子供向けではない番組があったが、CG主体と実写番組という違いこそあれ、「フード・パーティ」は印象としてはこれに近いかもしれない。しかしキッチュさでは「ウゴウゴルーガ」と「フード・パーティ」はタメを張るかもしれないが、毒という点では「フード・パーティ」の方が圧倒している。「フード・パーティ」も一見すると子供向け教育番組に見えないこともないが、こんなのを見て育った子供が情緒不安定に陥るのは、まず避けられまいと思う。成人でも実はかなりの確率で悪夢を見そうだ。


結局番組を見て受ける印象は、トゥーの頭の中にあるイメージを、未分化未消化未発達のまま、そのままTV番組というキャンパスにぶちまけてみましたというものだ。もしかしたらアーティストというものは、自分の頭の中にあるものを内からの衝動に従って外に現すだけで、ものを製作してみるまでは自分が何を言いたいのかもわかってないのかもしれない。それに、でき上がったオブジェやTV番組それ自体には、無方向性のある種の猥雑な魅力があるのは確かだ。しかし、一方で混沌のままなら、3歳児にクレヨンを持たせるのと何が違うのかとも言える。しかし、なんか、トゥーはこれでいったい何が悪いのかと本気で思っているだろうなあ。








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フード・パーティ   ★★1/2

 
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