Flipped Off   フリップト・オフ

放送局: A&E

プレミア放送日: 4/28/2012 (Sat) 22:00-23:00

製作: デパーチャー・フィルムズ

製作総指揮: マックス・ワイズマン、マット・レヴィン、ティム・ロビンス

出演: ラッセル・ハンツ、ショーン・ハンツ、クリスティン・ブレデホフト


内容: 家を即金で安くで仕入れ、短期間で改装して売りに出すことを商売にしているハンツ兄弟に密着するリアリティ・ショウ。


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Flipped Off


フリップト・オフ   ★★1/2

アメリカで放送されている数多あるリアリティ・ショウには様々なサブ・ジャンルがあるが、私はその中でも特に家ものとタレント発掘もの、食関係の番組を愛好して贔屓にしている。ただし、一時TLCの「トレイディング・スペイスズ (Trading Spaces)」が代表して人気のあった家もののジャンルは、金融危機と共に廃れていった。家の改装に手が回らなくなった家庭が増えてしまったから、それもしょうがない。


ただし私個人にとっては、「トレイディング・スペイスズ」よりも面白いと思って今でもよく見ているのが、日本製の家もの番組だ。私は日本製のTV番組は、手が回らないので朝のフジ系のニューズ番組「FCIモーニングEYE」中の「めざましテレビ」以外ほとんど見てないのだが、たまに日系スーパーのミツワに買い出しに行くと、並びのモールにある三省堂内のDVDショップで、日本製の家もの番組のDVDをほとんど必ず買って帰る。


なかでも朝日放送の「劇的ビフォーアフター」を最も気に入っているが、東京テレビの「完成ドリームハウス」もよく見ている。これらの番組は、家のリフォームや新築の一部始終を記録するという点では、アメリカにおける家ものリアリティと根本的な違いはない。しかし、アメリカ製のこの種の番組と比較すると、その肌触り、印象において天地の開きがある。


日本製のこれらの番組の場合、それまでそこに住んでいた家族の歴史、これから住む家族の嗜好にも目配せしながら話が進む。印象は結構ウエットで、いかにも日本らしい情に訴えかける番組になる場合が多い。アメリカ製番組においては、「トレイディング・スペイスズ」はほとんど中味はゲーム感覚だ。


「トレイディング・スペイスズ」後、ネットワークのABCで一時代わって人気のあった「エキストリーム・メイクオーヴァー: ホーム・エディション (Extreme Makeover: Home Edition)」の場合は、今度は金にほとんど糸目はつけないという大掛かりな人海戦術リフォームで、ほとんど毎回一軒家をディズニーランド化していた。


ただしこの番組、かなり大がかりに、リフォームというよりはほとんど家をいったん壊して更地にして、新築の豪勢な一軒家を一か月で建てるみたいな番組だった。財政的に困っている問題のある家庭を助けるという趣旨で製作していたのだが、金がないという家庭にそういう家を建ててあげても、当然それに見合ってかかってくる税金を払えない。結局、せっかく建ててあげた家を売り払って転居せざるを得なくなるという家庭が続出し、さらに、なんであそこの家だけが、という近隣の嫉妬を買うなどして問題が出てきたため、先頃最終回を迎えた。


「トレイディング・スペイスズ」と「エキストリーム・メイクオーヴァー: ホーム・エディション」は、一時期の家ものを代表する番組だが、もちろん何百ものチャンネルがあるアメリカにおいては、それだけでなく、他にも様々な番組がある。家のリフォーム・リニューアル・収納がチャンネル・テーマのHGTVにおいてその種の番組が豊富なのはもちろんだが、ここにカルト的人気のある一ジャンルがある。それがいわゆる「フリップ」ものと呼ばれるジャンルだ。


事情があって買い手のつかないままほっておかれた家や、抵当にとられてしまって誰も住んでいない家等を安くで買い叩き、短期間にリフォームして転売して利ざやを稼ぐ、すなわち、フリップすることで生計を立てている者は、アメリカにはかなりの数がいる。そういう商売だから、まともな者もいるが、かなりやくざ的な性格の者も多い。こういう者たちに密着するリアリティ・ショウがいくつもあり、カルト的な人気がある。


その中で現在、最も息が長く人気のあるヴェテラン番組として挙げられるのが、A&Eの「フリップ・ディス・ハウス (Flip This House)」だ。元々週末日中番組の「フリップ・ディス・ハウス」が注目を集めたために、他のチャンネルもこのジャンルに乗り出し、今ではブラヴォーの「フリッピング・アウト (Flipping Out)」、スパイクTVの「フリップ・メン (Flip Men)」等が放送されている。


「フリッピング・アウト」主人公のジェフ・ルイスは、人気が出たためにスピンオフ新番組の「インテリア・セラピー・ウィズ・ジェフ・ルイス (Interior Therapy with Jeff Lewis)」なる番組も始まっている。ほとんど強迫神経症的なルイスと、彼を取り巻くスタッフをとらえる。「フリップ・メン」の場合は、フリップする家が元ドラッグ・ディーラーの家だったりなんらかの事件に関係した家だったりするというのが特徴で、当然フリップする者たちもかなりの強面だ。フリップする家が、非合法ドラッグ製造で摘発された家だったりするし、殺人事件が起きた家だと紹介されても驚かないようなヤバそうな雰囲気の家だったりする。これが男性番組専門チャンネルのスパイクで放送されているのも納得できる。


今回A&Eが「フリップ・ディス・ハウス」に次いで投入する新フリップもの「フリップト・オフ」の主人公ラッセル・ハンツは、実はTVの素人ではない。CBSの「サヴァイヴァー (Survivor)」に3度も出場している。一度目は2009年の「サヴァイヴァー」第19シーズンの「サモア (Samoa)」に登場、最後の最後で敗れはしたものの、2位になっている。続く第20シーズンの「ヒーローズ vs ヴィランズ (Heroes vs Villains)」でもファイナルに残り、さらに第22シーズンの「レデンプション・アイランド (Redemption Island)」にも出ている。口達者な悪役としての評価が定着している。そのラッセルと、兄のショーン・ハンツ、それにブローカーのクリスティンの仕事ぶりに密着するのが、「フリップト・オフ」だ。


なんせ口だけでなく手も早いラッセルは、なにかつけ問題を引き起こす。手に入れた家のトイレにドブネズミが浮いていたために、これは下水管に穴が開いてそこから入ってきたものと見当をつけ、家の地下のどの辺と確認したまではいいが、ドリルを使って地下を掘り起こして、そばでショーンが、ゆっくりと、気をつけろよと、あんなに注意しているのに、やっぱり上水管に穴開けてそこらへん水浸しにしてしまう。


ある時は自分たちの資材を盗まれて激昂したラッセルは、撮影クルーに向かって撮るんじゃないと当たり散らし、事情を聴きに来た警官に向かってまであんたらがちゃんと見回ってくれないからと指で小突き、逆に手錠をはめられてパトカーに押し込まれてしまう。


またある時は、バイヤーからキッチンのカウンターを大理石でと指定されていたのに、経費を浮かそうと考えたショーンが勝手に似たような風合いの御影石に替えてしまう。一目でそれに気づいたバイヤーがディールから降りると宣言したため、これまた激昂したラッセルは、スレッジ・ハンマーでカウンターを粉々に打ち砕いてしまう。しかしこの切れっぷり、ちょっと近寄るとヤバそうだ。逆にショーンが何やかや言いつつも忍耐強いのは、こういう者がいつもすぐそばにいるからだろう。先に相手に切れられると、こちらはなだめ役に回るしかない。


この時のエピソードではバイヤーが自分から興味を示してきたために、ラッセルはブローカーのクリスティンはこの件には関係ないとして、ディールが決まってもクリティンにブローカー・フィーを払おうとしなかった。しかし上記の事件が起きてバイヤーが降りたために、いきなり物件が売れる見込みがなくなったため、ラッセルは今度は竜巻警報が出て土砂降りの雨の中をクリスティンの自宅まで押しかけて、まだむかっ腹を立てているクリスティン相手に下手に出てなだめすかし、仕事を頼むのだった。なんというか、本当に面の皮が厚い。


これらのリフォームをだいたい一か月程度でこなし、数万ドルの利益を出すというのが、一般的なフリップだ。都市部でさえなければアメリカの一軒家はだいたい20万ドルから30万ドルくらいが相場だから、だいたい15万ドルから20万ドルくらいで物件を手に入れ、5万ドルくらいかけてリフォームする。いまだに不況から完全に脱してはいないとはいえ、手頃な価格でそれなりの程度の家を売りに出せば、やはり売れる。しかし、時にかなりやっつけ仕事的な働き方をするラッセルから物件を買うのは、ちょっと勘弁かなと思うのだった。










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