フィット・トゥ・ファット・トゥ・フィット    Fit to Fat to Fit

放送局: A&E

プレミア放送日: 1/19/2016 (Tue) 22:00-23:00

製作: レネゲイド83、ギャスピン・メディア

製作総指揮: ダン・パートランド、ジェフ・ギャスピン


内容: 減量しようとしている者を指導する専属トレイナーも同様に太らせ、両者一緒に減量プログラムに取り組む。


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Fit to Fat to Fit


フィット・トゥ・ファット・トゥ・フィット  ★★1/2

こないだも「スキン・タイト (Skin Tight)」で減量関係の番組について書いたばかりなのだが、またまた減量リアリティだ。とはいえ外科手術によって不要な皮膚や脂肪を切除して痩せた「スキン・タイト」とは異なり、「フィット・トゥ・ファット・トゥ・フィット」は、そのような近道の手段に頼らず、正攻法の食餌療法とエクササイズで痩せる。


というと今度は十把一からげのどこにでもある減量リアリティかと短絡しそうだが、それも違う。今さらそんな芸のない単純な減量リアリティを作っても、誰も見ないだろう。もうほとんど飽和状態にあるジャンルだ、新しいギミックや面白さ、可能性を示唆できないことには、誰も見てくれない。


というわけで「フィット・トゥ・ファット・トゥ・フィット」だ。もちろん毎回痩せるべきその回の主人公が登場、彼もしくは彼女にマン・トゥ・マンの専属トレイナーがつき、食餌療法とエクササイズで痩せさせるのだが、そこで番組がとる独自の方法とは、痩せさせるその回の登場人物と同じようにトレイナーも太らせ、一緒に減量させるというものだ。


もちろんトレイナーは、最初はどこからどう見ても文句のない体型をしている。ほとんど皆、体脂肪分一桁という感じで、女性でもシックス・パックだ。たぶん生まれてから一度も体重過多になったことなどないだろうという外見をしている。それを、減量させる相手に合わせて増量させ、一緒に食餌療法やエクササイズさせることで、信頼関係を構築すると共に減量効果を高めようというものだ。


つまりこの番組、減量する本人だけでなく、トレイナーにも焦点が当たる。というか、ポイントはトレイナーの方にこそある。生まれてこのかた一度も太ったことのないトレイナーに、まるでフォアグラを肥えさせるガチョウのように、もう食べたくないというのを無理に食べさせて太らせる。見てる感じじゃ減量リアリティどころか、大食いコンペティションによほど近い。


そして‥‥太るのだ、実際。意外なくらい。カロリーや脂肪分を気にせずに食えるだけ食って運動しなければ、太る。誰だろうと太るのだ。もちろんそれはエクササイズのプロであるトレイナーであろうとも例外はない。


もちろん実際に減量させようとする人間ほど太るわけではない。それまでに達するためには、どんなに飲み食いして不摂生しようとも、少なくとも半年から1年はかかるだろう。さすがにそれだけの時間はかけられない。それでも4か月間みっちりとただただ食い続けると、誰でも30パウンド (13kg) から60パウンド (27kg) くらいは太る。


面白いのはその期間における本人および環境の変化だ。たぶんトレイナーが何よりも個人的に忌み嫌っているはずの不健康体型に変化していった結果、一番堪えるのは本人だ。顔にも腹にも脂肪がついて精悍さが消える。それと共に自信や自尊心も消える。そうでなくても、体重が増えた結果、実際に体調が悪化する。いきなり足腰や膝、内臓に負担が増すのだ。


消化器系だって、大量に胃腸に送り込まれる食料を消化できずに音を上げる。短期間にまったく別人のようになりつつあるトレイナーに違和感を感じ、家族も次第に距離を置くようになる。それがまた堪える。エナジー・レヴェルが低下し、段々すべてのことに対して興味がなくなってやることなすこと億劫になり、意気消沈する。鬱までもう一歩だ。肥満ってやはり病気、しかも心の病気なんだなと思う。


それでエクササイズ解禁になって健康的な食事に戻れる日が来ると、やっとこの日が来たかとばかりに、かつてのようにエクササイズに取り組むことができる‥‥わけがない。既にたぷたぷになってしまった身体は、かつてのように自分が思うように自在に動いてくれるわけではないのだ。それでも、彼らは、本質的に身体を動かすことが好きなんだろう。増量時とは目の輝きが違う。


かつての精悍な時のトレイナーの姿を見ている参加者もまた、それに釣られてエクササイズにも身が入る。今ではトレイナーというよりも、仲間だ。親密感が違う。同じようにエクササイズをやれば、自分もかつてのトレイナーのようになれるかもしれないという確固たる目標がある。やることなすことが、ダイレクトに自分にも返ってくる。


おかげで番組に登場する参加者は、全員見事に痩せる。マン・トゥ・マンでトレイナーが付きっ切りで指導すれば、痩せないわけがないという意見ももっともであるが、しかし、そのスピード、達成感、満足感は、やはり通常の減量リアリティとは較べものにならないだろうという感じがする。


例えばNBCの「ザ・ビギスト・ルーザー (The Biggest Loser)」の場合、たとえ減量に成功してコンペティションで優勝しても、その何割かはリバウンドしてまた太るそうだ。しかし「フィット・トゥ・ファット・トゥ・フィット」に登場した者たちは、今後二度と肥満に戻ることはないのではないかという気がする。やはり減量は外科手術に頼るのではなく、エクササイズと食餌療法、それに周囲の理解、これしかない。










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